●言葉を交わせるからこそ・・・

動物が、普通。
普通に可愛い、と思う。ただ世の多くの皆さんのように、犬が大好きっ。とか猫のいない生活なんてっ。て程は特別な動物に対してのめり込まない。

母・節子はそんな人でもあった。
ここだけは私も節子に似ているんだ。後は殆ど似てない親子だったけれど。特定の動物に思い入れはなくて、犬派も猫派もありゃしない。だからといって、犬好き、猫好きを否定する気持ちはさらさらないのですよ。犬も猫も可愛いと思う。犬や猫が可愛いのとほぼ同じように牛や豚も可愛い、と思う。外で牛や豚や馬を見つけると、キャーキャー騒ぐような奴だ。で、食料としても、牛も豚も(あれば馬だって)食べるし、肉はわりと好きな方。因みに私が一番好きなのは鶏肉ですが!
だから、犬肉を食す国があると聞いても、そりゃあ自分は日本生まれの日本育ちだから違和感は多いに持ちますけど、ま、そんなこともあろうかと、ちょいとは納得出来ちゃう。
そういえば何度か節子と二人でこんな会話をした事があります。
「別に嫌いな訳じゃないんだけど、犬や猫、それほどじゃないよねえ」
「可愛い、とは思っているんだけどね」
「そんな事言ったら牛とか豚だって結構可愛い顔してるもんね」
「なんでこんなに動物によって扱いが違うんだろうね。身体の大きさかな」
「友達とか他の家族たちとか、世の中の人大概が犬猫をすごく好きだよね」
「犬(猫でも)好きの人と道を歩いていて、前から可愛い犬(或いは猫)がやってきたりしたときのあの犬(または猫)好きの天にも上りそうな幸せそうなリアクション!同じノリになれなくて悪いような気がするときがあるよ」
「でも、ヒトのほうがいい…と思っちゃうんだなあ!」
「話ができるもんね」
どっちがどっちという事もなく、こんなやりとりを何回かしました。
そう。やはり節子も私も動物に与えうる慈愛は適量しか持たないらしい。その分、人が好きなようなのです。人と話す事が。?(いやー、ひょっとしたらただ冷たいだけかもしれませんが…)?勿論、言葉というものを介さなくても、動物とだってコミュニケーションがとれることも分かってます。?それでも人と話をしてて分かり合えた(分かり合えなかったとしても)時のあの快感に勝るとは思えないんですものさ。でも、赤ちゃんとコミュニケーションするのなら、大人の人と話してるのと負けず劣らず好きなので、もしかしたら好きな動物が人間ってだけの事かもしれませんな。

節子以外でこういう人と出会った事がないので、節子がいない今の私は(とりあえず見える範疇では)この世でただ1人の変人でございます。
でも本当に、犬も猫も、普通に可愛いとは思っているんです!ただ他の皆ほど我を忘れる事が出来ないだけなんです!

話は変わって昔々。母がテレビ局のアナウンサー。父・総一朗がドキュメンタリーを作っていた頃。父がドキュメンタリーを作りながら(また父のドキュメンタリーの作り方が、対象の人とそれは密接に係わり合い、心の内側へ、内側へ、まだ奥まで行っちゃうの? ってくらい入って行くやり方をするそうだから)関わって、いわば父が惚れられた女性が何人もいたそうなのだが、彼女たちに父は「僕には村上節子さんという好きな人がいますから」とか言ったそうで。

それで節子の職場まで訪ねて会いに来た女性たちとも一人一人と節子は話したという。仕事の話や女の生き方の話。殆どの人は別に父の話を持ち出す訳でもなく、ある人はただじっと節子を睨みつけて。ひとしきり話すと相手の女性たちは納得したように(なにを?)帰って行ったそうな(こいつは敵に回せない、とか思わせたんだろうか?)。

これは父から母への一種の口説きというかアプローチだったとも言われているのだが、何と言うか、複雑な(いや、単純か?)ことをいたしますなあ。

節子は、初めて会った人でも十年来の親友のようになれる、とどこかに書いてたっけ。実際そうだったし。そして初めて会う人であっても、相手の話をとても丁寧に聞いて短い時間でもしっかりと噛み締めて、確固たる意思のもと、自分の考えを相手になるべくそのまま伝わるよう(人はとかく誤解しやすいものなので)優しく優しく話していたように思う。(母の癌がかなり進行して特に歩行が困難になってからは、私は母の付き人のようになり、どなたかと1対1の話をしてるときも同席させてもらう機会が幾度かあったもので、そんな様子を見る事が出来た)また相手の言葉もなるべく正確に把握できるように、じっくりと聞いていた。どなたに対しても。とても誠実に話す。自分に対しても相手に対しても。だから節子はいろんな方たちと心から寄り添える「特別な関係」になれた。私は節子をひそかに「平成の光源氏」と呼んでいる。父の同意も得た(だから何?)。いろんな女性としっかりと深く話をして、それぞれと絆を深めて。?節子は多くの方と「特別」を紡ぐ事が出来たのだと思う。豊かな人生ですね。(余談だが私は本当は光源氏は嫌い。登場する女性達は好きだが)

どの人も節子にとって大切な方々。これってやはり光源氏ではないですかね?


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