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さよならジャンヌ・モロー。私はいつも「で、あなたは?」と問いかけてもらっていました
17.08.03 by 高山真



チュマディジュテム
ジュテディアトン
ジャレディフプフモア
チュマディヴァトン

「愛してる」とあなたは言った
「待って」と私は言った
「抱きしめて」と言おうとした私
「行っちまえ」とあなたが言った

 この文章は、私が生まれて初めて言葉に出したフランス語と、その日本語訳です。フランス語のほうは耳だけで覚えたものでしたから、それがどんな綴りなのか、どの音がどの意味になっているのか、それ以前にカタカナで認識したこの音は発音として正しいのか、何もかもわかりませんでした(実際、あとで調べたら微妙に間違っていました)。1984年、私が14歳のときのことです。

 この4つの文章は、『突然炎のごとく』という映画の、最初のモノローグです。何かの手違いで偶然録画した、テレビの深夜映画。田舎の漁師町の中学生だった私は、雷に打たれたようなショックを受けました。こんな世界が、こんな考え方があったなんて、と。

 当時はまだビデオテープの時代です。あまりにも繰り返し見たために、17歳のときにはテープが擦り切れてしまいました。レンタルビデオ店もなかった時代、実家から電車で1時間弱かかる街のレコード屋で売られていた正規のビデオは1万5千円くらいしたのです。手など出るはずがありません。そしてその分、私はますます作品が描く世界に思いを募らせることになりました。私は、東京より先に、パリに憧れを抱いた人間なのです。

 『突然炎のごとく』は、1960年代のフランス映画で、ものすごく俗な言い方をしてしまうと、三角関係(時々、男が3人に増える四角関係)を題材にしています。この作品で、私が何よりも惹かれたのは、ジャンヌ・モロー演じるカトリーヌが、男たちの間を『不誠実』ゆえに行ったり来たりしていたようには断じて見えなかったことでした。

 「1対1の関係をずっと続けることが誠実である」というテーゼは、あの映画が公開された60年代初頭は、いまよりもさらに強力なものだったでしょう。カトリーヌは、ほとんど映画全編にわたって、「演技」というよりは、ある種の「反抗」や「問いかけ」をしているように私には見えたのです。それは、こういったことでした。

 「自分の気持ちにとことん誠実に向き合ったゆえに生まれた行動が、はからずも、『1対1の関係性』とか『結婚制度』みたいなもの……、要するに『現在の常識』への『裏切り』になってしまったとき、『自分自身に対する誠実さ』のほうを通せるか。しかも、パワフルに、かつエレガントに」

 素晴らしい映画が投げかけてくるものは、観る人それぞれが抱えている「何か」にダイレクトに響きます。ですから、上に挙げた問いかけ以外の「強い何か」を受け取った人も、それこそ人の数だけあるでしょう。ただ、少なくとも私は、ずっとジャンヌ・モローに「あなたは、どう?」と問いかけられているような気がしたものです。

 この映画の中で、ジャンヌ・モローは風のように軽やかでした。口ひげを描いて男装し、男ふたりを従えるようにして鉄橋を駆け抜ける。海岸沿いの道を自転車で駆け抜ける(ウディ・アレン監督の『それでも恋するバルセロナ』で、このシーンのオマージュがありました)。ギターのシンプルな伴奏に乗せて歌う、映画のテーマそのもののような内容の『つむじ風』……。

 また、この映画の中で、ジャンヌ・モローは火のように激しくもありました。観劇のあと、男ふたりが、女に対する偏見丸出しの議論を交わしている横で、セーヌ河に飛び込んでしまう。映画のセリフを借りれば「プロテスト」の、もっとも強力な表現。偏見丸出しで持論をぶっていた男は、青い顔をして口をつぐみます。ジャンヌ・モロー演じるカトリーヌが「君臨」した瞬間でした。

 14歳のときに、ジャンヌ・モローから「あなたは、どう?」と問いかけられたとき、私の人生は、なんとなく決まったのだと、今にして思います。

 高山真の名前でいままでに出した本は、振り返ってみたらすべてが「アタシはいま、これこれこんな理由と決断で、こんな感じなの。で、あなたは、どう?」というトーンで書いていたような気がします。いちばん新しい『恋愛がらみ。』という本は、「お悩みにこたえるQ&A方式の本なのに、回答というより、自分の考えを述べたあとで読者に決断を投げるような文章だ」と言われたことがありますが、私はそう言われたときに「そりゃそうだわ」と、非常に嬉しく感じたものでした。私は、やっぱり、ジャンヌ・モローの娘だわ、と(もちろん、ジャンヌ・モローが創ってきたものと私が創ったものに雲泥の差があることは深々と自覚していますが)。

 2002年、ジャンヌ・モローが来日したときに1対1でインタビューができたことは、死ぬまで私の宝です。その宝から、やりとりをひとつ、推定4人の読者の皆様に……。
高山「あなたのように、長期間充実した人生をおくるために必要なものはなんでしょう」
ジャンヌ・モロー「好奇心。そして、その好奇心を分け合える人の存在ね」

 即答でした。

 ジャンヌ・モロー、安らかに。日本の片隅の小娘ゲイに、「あなたは、どう?」と言い続けてくれて、ありがとう。

プロフィール
高山真
高山真(たかやままこと)
編集者・ライター
02年、ラブピースクラブで連載を始めるやいなや、あっという間に大きな話題となり一冊の本にまとまった伝説の「モテ本」「こんなオトコの子の落としかた、アナタ知らなかったでしょ」の作者。最新のメディア情報を高山目線でお届け!
本人似顔絵イラスト by わた