●「四角い恋愛関係」

ふと、そのジャケットが目にとまりました。肩に、腰に手を廻す男性にエスコートされながら、背後で手を握り合う二人の女性。しかも一人はウエディングドレス姿。婿らしきとキスの真っ最中。あたしは思わず、DVDケースを手に取り紹介文に目を通しました。結婚式の当日に花嫁が同性に一目ぼれしたことから始まるラブコメディものらしい。「なんだか楽しそー!」あたしはるんるん気分で、足取りも軽くレジカウンターへ。

で、結果。今のあたしの気分はどんなん?例えて言えばどんな音がする?カラカラー?ぽっかりー?それともシーン?

観始めてから5分もすると、弾んでいたはずの気分ボールから空気がもれて、手ごたえが鈍くなり、30分後には完全に動きを止めてしまい、映画を観ている自分の時間を前に進めるためには「つまんねー、つまんねー」と画面に掛け声を向けることで意識を覚醒させる必要さえ生じ。しかし、なんで、何がつまんないのでしょうか。

だいいち映画のタイトルが間違っている。この恋愛関係は四角くないです。「四角い」とされている根拠はたぶん、二組のカップルが入れ替わるという発想だけれど、それはあまりにも無理やり。二人目の男性、新郎の親友役のこの男、ストーリーの中核にはまったく無関係。ただ「女はみんなオレに惚れるはずだぜ」という自意識の高さが売り物で、ある種の男らしさを笑い飛ばすネタとして設定されている。だからそこにいてもいいけど、主人公チームからは外してください。まあ、日本語タイトルが失敗しているというのはままある話で、ここでことさら取り上げる必要はないかもしれませんが、そこが実は、かえってこの映画の本質を突いているのじゃないかという気もしてくるのが不思議。

「男女共同参画」って言葉ありますよね。いろんな立場の意見を取り入れている間に、始めの目的がどこかへいってしまい、かえって始めの目的を阻害することにさえなりかねない、という意味ですよね。この映画を観ているとなぜだかそんな言葉を思い出します。レズビアン、女性どうしの恋愛関係。それは決して「男女共同参画」的な発想では描けないのじゃないでしょうか。今までの社会通念の変化なしに、同性愛をこぞって賛歌する社会なんて有り得ないのじゃないでしょうか?では、この映画はハッピーエンドのファンタジーとして楽しめるのか?あたしの感想は上述の通り「つまんねー」です。だいたい賛歌する必要なんてないじゃん、人の恋愛なんて放っておけ、みんなで跡ついてくるな。

何がつまんないのかなー。あたしは考えつづけました。一つ思い出したことがありました。4年前にやはりDVDで観た映画ですけど、観終わってから釈然としない感じにつきまとわれた同性愛ものがありましたっけ。

「Kissing ジェシカ」主人公のジェシカはいい男を捜していた。けれどアプローチしてきたのは、知的でセクシーでススンダ恋愛観念を持つ、とってもステキな同性だった。しばらく付き合ってみたけれど、あまりにステキで追いつけない感じ。結局ジェシカは自分の凡庸さに見合う男友達との愛に目覚めて一件落着。ぷはぁ?あたしの感想を音で表すとこんな感じでした。

ある昼下がりのラブピ・オフイス。オカマとレズビアンと熊女(クマジョと読みます。あたしです)が遊びに来ていました。忙しく立ち働くスタッフの動線の真中で三人はお茶をしていました。
レズ「はぁ、今とっても落ち込んでる。ふられそうなの」
オカマ「聞いてあげるわ」
レズ「彼女、口説いたときはノンケだったんだけどさ」
オカマ「ノンケ口説きが趣味なの?」
レズ「そうじゃないけど、好きだったから。それで最近『kissingジェシカ』って映画観て、すごく共感したって言うんだよね」
熊女「ええ!つまんない映画だよ!」
レズ「二人の関係を少し考えさせてってことで」
熊女「ええ!映画で別れるっていうの!そんなバカな!」
オカマ「所詮、それだけのオンナだったのよ。早く忘れなさい」
レズ「とりあえず、映画観てみる」
そう言い残して、彼女は帰っていきました。その後、手の空いたスタッフもお茶に参加。
ラブピ・スタッフ「どうしたの?」
熊女「相手が映画を真に受けて、ふられそうなんだって。酷い話だね!」
ラブピ・スタッフ「へえー、どんな映画なの?」
熊女「あのね、つまりへテロセクシズムに都合のいいストーリーでね、、、、」
オカマ「バカね。もう男とつき合ってるに決まってるでしょ。映画は関係無いわよ、ただの口実。そこを見抜けないあの子が哀れね」
ぎゃっふーん。熊女(あたし)はそこでテーブルに崩れ落ちました。人間高等恋愛言語!この高級ラビリンスにおいて、あたしは所詮、ックマ、ックマ、クマー、クルマじゃないよレベル、であることを深く自覚いたしたのでありました。

さて、何がつまんないのかなーの結論です。理屈をこねれば、恋愛に退屈した人々が、「正しい男女の恋愛」社会にあって、新しい刺激的な体験として同性愛を、不倫と同じように、カンフル剤として位置付けている、と評することもできます。しかしもっと単純に、明快に発するなら、「振り向けばそこに愛」みたいな顔をして、ニコニコしながらつきまとう男たちが、ただただ鬱陶しい、そういうことかもしれません。クマジョとしては。

「四角い恋愛関係」2005年 
20世紀FOX社 製作
オル・パーカー 監督


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