●「グーグーだって猫である」

のっけから話が飛びますが、「セックス・アンド・ザ・シティ」楽しかったですね。経験を積んで積んで立派な中年になった女たちの人生と友情をのびのびと描いてくれました。あれだけ長く波乱にとんだストーリーをテレビシリーズで展開した後でありながら、更にゴージャズに更にディープに、難関であるはずの映画化を見事に仕上げきっていて、「映画」の素晴らしささえ見せつけてくれました。しかもとっても簡単な方法で。出だし、主人公のキャリーが胸元に大輪のコサージュをあしらった白いミニドレスで登場。若い女子が「ステキ!」と呼びかけながら振り返る。たったこれだけのことで、女が年を経ていくことへのエールと、映画の視覚表現としてのインパクトを同時に物語っていました。どうです、一気にストーリーに引き込まれるじゃありませんか。ふーっ、ことほどさように、今回は「SATC」で盛り上がろうと思っていたんですけど、ちょっと舞い上がり過ぎてたんでしょうか?油断大敵でございます。数日後、別の映画館で見事に地雷を踏んでしまいました。ドッカーン!キーン!耳鳴りがしてしょうがないです。

改めまして「グーグーだって猫である」。これ、中年女の話ではなかったですか?マンガ家なんて職業のちょっと浮世離れした、仕事一途で生きて来た、男っけも女っけも、子供っけも、それにもっと言えば親っけもない、自立した一人暮らしの、一人でいることがごくごく自然な、自分の時間を大切にする、身の回りのちょっとしたことに幸せを見いだすことのできる、自分とのつき合い方をちゃんと知っている、つまり何にも増して自分自身が充足している人の一個の生活。頭がクルクルしてきた時はクルクル回ってどこかに行ってしまいそうな自分を、回るときは回りながらも、葛藤しながらも、自分の殻を破ったり、うまくコントロールしたりすることのできる、そんな年季の入った女の極私的エッセイ、大島弓子の原作ではそうだったはず。少なくとも中年女一人暮らしのわたしにはそう読めました(猫飼ってないけど)。

スクリーン上で予告編を見せられて数ヶ月、まだかまだかと期待に胸を膨らましつつロードショウを待っていました。小泉今日子主演、はて?わたしのイメージとは違うけれど、いったいどんな感じに仕上がっているのだろうかと、それはそれなりに期待に輪をかけたりもし。。。

と言うところで読み返してみると、あれあれ、始めからここまでずっと前置きですね。では、突然ですが結論です。さようなら犬童一心監督。「I LOVE映画監督リスト」から削除されました。『ジョゼと虎と魚たち』も『メゾン・ド・ヒミコ』もけっこう好きだったんですけども。

この映画、原作のキモを完全にスルーしてしまってます。単にスルーしてしまっただけならまだしも、例えば勘違いしているというのでもなく、原作とのつながりをまったく感じさせないエピソードの数々を無理無理つなぎ合わせているように思えます。はっきり言ってねつ造している。これはもうタイトル変えたほうがいい。なぜそんなことが起こったのでしょう?監督はハナから中年女の内心とか生活とか言うものを描こうとは思ってもみなかったのでしょう。でもそこを除いてしまって何が残る?「そんな地味で面白味のない世界観だけで客が呼べるか、女を描くことにかけては定評のあるこのオレ、まあ任せてくれよ」と監督は言った(ウソ)。それで若くて元気のいいアシスタントが4人も出て来てわーわー騒ぐわ、バンドやってる男子との恋愛騒動でぎゃーぎゃーわめくわ、劇団の出し物なのか女ヒーローと悪人男軍団との乱闘シーンの練習を長々つづけるわ。乱闘シーン、女子はヘタだからサマになっておらず、ヒーローなのに殴られちゃったりして可愛くておちゃめ、とでも言いたいのか。だったらまるで集団レイプシーンと一緒やねんねん。しかもお決まりの女子高生チアガール風味ポンポン踊りシーンも漏らさず挿入。いいかげんにして下さい。すべてが蛇足です。

もっともわたしの違和感が炸裂したのは、主人公麻子とのデートの帰りに、酔って部屋に転がり込んでくる男子の振る舞い。ソファに倒れ込みそのまま曝睡。手足をばたつかせたり、上半身裸になったり。仮にそこがあたしの部屋であれば、即刻、強制退場でしょう。お気に入りのクッションが酔いつぶれた男の唾液で汚れるのを許すなんて、金輪際あり得ません。監督はたぶん、猫であるグーグーの存在をこの男子に置き換えて、主人公の心の動きをより分かりやすく描き出そうとしたのでしょうが、その置き換えはどうなのか。可愛いつもりのシーンかもしれないけれど、節操のないジコチュー男にしか見えません。そんなつまらない自意識を支えてあげるほど暇じゃないです中年女。

恋人のいないシングルの中年女は悲しい寂しいつまらない、だけどそれなりに強く生きている(猫とかを心の支えに)、この映画からはそんなメッセージもらいました。もう一度最後に、I say good-bye.さようなら、犬童監督。


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[2008/08/01]
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