「ハッピーフライト」
2009年1月 9日新年です。皆さまいかがお過ごしでしょうか。なんとなくいつもの年に比べ「新しい」気がしません。なぜでしょう?未だにブッシュが米国の大統領だからでしょうか?それとも日本の政権に新しい展望を感じないからでしょうか?不況のせいでしょうか?それとも大掃除をしなかったからでしょうか?なんとなく、今ではなく、これから何か新しいものがやってくるような予感がいたします。(大掃除をする予定はありませんが)いったいそれはどんなものなのでしょう。しかしながら、とにかく出発しないことにはその予感も役に立ちません。というわけで、今年の映画始めは何にしようかと迷いましたが、飛行機に乗って空に飛び立つことにしました。
この映画、飛び立ったものの目的地にたどり着くことなく、飛行機はまたもとの地点に引き返してきます。その間の数時間がストーリーの全容です。映画が始まってから気付いたのですが、映画館と飛行機の座席は似ています。それだけでずいぶん臨場感が醸し出されていました。飛行機に乗ってホノルルに行くところだったのだが、トラブル発生、クルーのおかげで無事にもどれてよかったよかった。いろいろ楽しめたし、今度は本当に大空に旅立つべし。そんな気分で家路に着きました。けっこう好きです「ハッピーフライト」。
物語は実にあっさり。人生ドラマや感情の波風はそれほど劇的に描かれていませんし、主人公の印象も特別なものではありません。描かれているのは、旅客機を運航するためのさまざまな部署に配属された仕事人たちの日常とその成長です。普通は物語の背景として語られるようなものがメイン。言うなれば主人公はフライトそのものというところでしょうか。感情移入するべき登場人物も特に誰ということもなく、観ているものが気分次第であちらこちらと気軽く飛び回れる感じです。それでも人様の安全をあずかる職務のためか、映画の始めから仕舞いまでほどよい緊張感が持続し、メリハリがあり、見応えのある一本に仕上がっています。機内のシーンなどには本物の旅客機が使われたそうです。そのためのスケジュール管理もまた、ひと苦労だったとか。或いはCGではなく、あえて模型を使った特撮にこだわったのだとか。いろいろな立場の映画クルーが恊働して製作したのだということをも充分に感じさせてくれます。娯楽映画なんぞ観てないで、今すぐにでも働きたい!って気持ちになるような映画でした。
それぞれ能力を発揮してみんなで仕事を積み上げていくのって、すごく幸せなことなんですね。あんなふうな仕事人間の性格の悪い上司に怒鳴られてみたい。あんなふうな右も左も解らない新人になって、心中まったく推し量れないようなポーカーフェイスのベテランに、けちょんけちょんに言われてみたい。「あなたは今日はもうキャビンに出なくていい。裏方でもしてなさい」なんてぐさりと突き刺さる全否定のお叱りに身震いし、悔し涙を流してみたい。そのスポ根じみた高揚感が欲しい。もうお客の手に渡った荷物なんだから、本来は関係ないわけだけれども、なんだか成り行きで走り出し、走り出したからには責任をまっとうさせてもらいます、とばかりに全力疾走、満身発声、それはほとんど正義の味方の域にまで達している。そんなふうに走ってみたい、転んでみたい。
気が付けば最近とんとそんなこともない。一人親方、一人社長、一人事務員のわたし。何でも自分流にするのが好きで、指図を受けることが嫌いな結果こうなっているわけですが、一人で何でもするのって、メリハリ効かせるのが難しいんだよねー、たまには誰かに怒られてみたいわん。ないものねだり、隣の芝生は青いものです。
さて、ちょうど20年ほど前のこと。貧乏バックパッカー旅行に選んだのは、ヨーロッパまで最短最安値を誇る、ソビエト連邦崩壊前夜のアエロフロート。ナリタで初めて見た国際線旅客機イリューシン、「こんなエンピツみたいなものが本当にヨーロッパまで飛んでいくのか?」と、思わず声に出たものです。たまたま非常扉の横であった指定座席、すきま風が冷たかった(本当です)。そして一番の思い出、トイレはどこかとうろつくわたしの目にしたもの、それは、物陰でタバコを吸うキャビン・アテンダント(本当です)。当時はスチュワーデスさんと呼ばれていましたお方です。「うえあいずといれっと?」と恐る恐る話しかけると、思い切り不機嫌に物憂げにタバコを持つ手をひらひらさせて、トイレの方向をお示しになりましたっけ。まだ旅慣れていなかったわたしは軽く傷つきました。そして、それから間もなくその国は滅んだのです。やはり人が気持ちよく働けないような国は駄目なのです。
「ハッピーフライト」はつまり、ハッピーワーキングと言い換えてもよいのでしょう。やりがいのある仕事、頼れる仕事仲間、無事に役割を果たした達成感。日々そういったものに支えられる生活を積み重ねていけたなら、それが何より幸せなのかも。そんな国に住みたいな。よく働きよく遊び、よく飛ぶ一年にしたいものです。ということで、今年もどうぞよろしくお願いいたします。
「ハッピーフライト」
2008年 日本映画
監督 矢口史靖
出演 パイロット:田辺誠一 時任三郎 小日向文世
キャビンアテンダント:綾瀬はるか 吹石一恵 寺島しのぶ
グランドスタッフ:田畑智子 平岩紙 田山涼成
オペレーションコントロールセンター:岸部一徳 肘井美佳 中村靖日
エンジニア:森岡龍 田中哲司
管制官:宮田早苗 長谷川朝晴 いとうあいこ 江口のりこ
バードパトロール:ベンガル
乗客:笹野高史 菅原大吉 正名僕蔵 藤本静 竹中直人
愛鳥連盟:森下能幸
悦子(綾瀬はるか)の母:木野花 父:柄本明
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高橋フミコのプロフィール
高橋フミコ
あたくしの大移動歴
1960年横浜市生まれ☆太陽はしし座月は乙女座☆どっしりとした猿☆A型
中学・高校時代☆筋肉少女、浪人4年☆はは呑気だね美大卒業後フリーター生活20年☆はは呑気だね☆近頃は職人の親方パフォーマンス・アーティスト
☆テーマは転・映・反(隠し文字クイズよ!)
2003年から3年間ラブピコラム「半社会的おっぱい」担当させていただきました!
趣味:買い物&店員さんとのおしゃべり
特技:忘却、目標:長生き
著書「ぽっかり穴のあいた胸で考えた」2006年バジリコ
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