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今月のマモルくん
守らない宣言をする「まもるくん」
17.02.23 by 牧野雅子



 あなたが電車の中や帰り道で痴漢被害に遭ったとする。警察に駆け込み、今後こんな事が起こらないように付近の警戒をお願いしますと言ったら、返ってきた答えが「痴漢は決してなくなりません」「痴漢や犯罪から身を守るのは自分自身です」だった……ら、どうします? 


 兵庫県警の公式サイトにある「女性の安全〜痴漢にあわないために」というページは、「痴漢は決してなくなりません」と始まっている。
 とうとう警察は開き直ったってことなんだろうか? 思えば、警察官による痴漢事件の報道を目にしても、もう驚くことはなくなった。取り締る立場の自分たちが痴漢をすることを防げないくらいなのだから、他の人たちが痴漢をすることを止めることなんてできない、自分たちにはそういう能力はありません、加害者対策はお手上げです、とでも言っているのか。いまだに、性暴力は男性の生物としての本能(=性欲!)によって起こるという前提で、性犯罪捜査が行われているところだ。男がいる限り痴漢はなくならない、自然なことだと言いたいのだろうか。
 劇画風のイラストが話題になった、関東の鉄道会社と警察が連携して毎年行っているのはその名もズバリ、「痴漢撲滅キャンペーン」。表向きは、痴漢被害をなくすべく努力している姿をアピールしつつ、裏では、「痴漢なんてなくならねーよ」とせせら笑っていたのだろうか。
 警察が、痴漢被害を防ぐ手っ取り早い現実的な対処として、個々人が被害に遭わないように注意喚起しようと考えているのだろうとは想像できる。しかし、被害が起こっていることを前提に被害に遭わないためのノウハウを伝えることと、痴漢は決してなくならないと公的機関、それも、犯罪抑止を担う機関が断言することは全く違う。後者は、性暴力(加害)の容認と同義だ。


 痴漢被害にあわないために、と言いながら、その「痴漢」に対する認識があまりにも低いのにも驚く。留守宅に侵入した犯罪者を「先客」、性暴力加害者を「狼」という。こうした表現に、性暴力被害者の訴えを真摯に受け止めようという意識や姿勢は感じられない。あからさまな言い方をすれば女性が敬遠してしまうかもしれないから直截な表現を避けたのだとしても、こんな表現をする必要がどこにあるだろう。それともこれは、関西人お得意のボケとツッコミが期待されてのことなんだろうか。「カギを開ける前に右、左…狼はいないかな?」って、一体どこに住んでんねん、動物園かーっ! ……まさか!!
 「痴漢」と一口に言っても、物陰に潜んで窺っているのも痴漢なら、後ろをつけてくるのも痴漢、電車の中で触ってくるのも痴漢と呼ばれ、その言葉が表すものは一様ではない。問題のサイトでも、家に侵入するものから、盗撮、下着盗、街頭犯罪、電車内痴漢と推察されるものまで、極めて広い範囲を痴漢と称して、女性に注意を促している。その一方で、「痴漢や犯罪」というように、痴漢は犯罪とは区別されていて、どうやら痴漢は犯罪とはみなされていないらしい。「痴漢は犯罪です」というコピーの載った警察作成のポスターがあったが、それって、矛盾してないか? それとも兵庫県警の認識は特別なのか? とりあえず、警察の痴漢認識がグダグダだってことはよく分かった。


 被害にあったときの対処として、声をあげろ、助けを求めろ、抵抗しろと指導されるが、その先が全く示されていないのも不思議だ。誰だって、そのくらい、分かっている。でも、声をあげたらどうなる? 誰も聞いていなかったら? もっとひどいことになったら? 警察は何をしてくれる? そういった「情報」は何も書かれていないのだ。そこのところが分からなくて不安にかられ、結局声をあげられないという女性が沢山いるというのに。こういう女性たちの声が反映されていないのはなぜなのか。あれをしろ、これをしろ、という「指導」は書き連ねられている。被害者の都合など関係ない、自分たちの言う事を聞け、ということなのだろう。警察が信頼に価しないと思われているから、被害の相談も届出もしないのに、自分たちのことは棚に上げて、被害者の責任に帰せて、命令する、この筋違い。
 性暴力について少しでも考えたことのある人ならすぐ分かるはず。こうした「指導」が加害者メンタリティそのものだってことが。性暴力を自然災害か何かのようにみなす、加害者不在のこの感じ。加害を矮小化し、被害を茶化す表現の多用。被害者の服装が原因であるかのような、誤った認識(強姦神話!)。暴力の責任を被害者に押しつける自衛の強要。それは、被害者非難に繋がり、被害の潜在化を招くが、それも更なる加害を生むとして、非難の対象になる。
 なるほど、「痴漢はなくならない」と言うはずだ。犯罪に対処する機関が、加害者と同じメンタリティで動いているのだから。むしろ、共犯者と言うべきだろう。誤った知見を公的に承認してまき散らして加害行為を免罪し、被害者に責任を負わせ、既に被害に遭った人を非難し、助けを求めるべき人を黙らせる。結果、加害者は放置され、加害が繰り返される。もちろん、被害者非難自体も二次加害という性暴力だ。


 内容もさることながら、文章がまた酷い。「痴漢情報」の小見出しに続くのが、「痴漢は決してなくなりません。最近ではストーカーが問題となっていますが、貴方や家族も狙われています。また、痴漢によっては、もっと大きな犯罪にエスカレートしていくおそれもあります。日頃の行動に注意して、痴漢にあわないよう、ご注意ください」。これのどこが「痴漢情報」なんだろう?
 こんなレベルでいいと思っている、これで伝わると思っている段階で、女性を(性暴力被害者は女性に限らないが、このページのタイトルは「女性の安全」だからね)バカにしまくってる。この程度の文章や論理レベルで「取調べ」なんかやっているのなら、そりゃあ、痴漢冤罪事件も起こるわけだと思ってしまうよ。


 「痴漢や犯罪から身を守るのは自分自身です」。これって、つまり、「警察はあなたを守りません」宣言ってことだよね。
 警察のキャラクターには、まもるくんと名付けられたものがいくつかある。その名前、返上したらどうだろうか。守らない宣言をする「まもるくん」なんていらないのだから。

著者| 具ゆり深井恵打越さく良阿部悠牧野雅子
プロフィール
牧野雅子
牧野雅子(まきの・まさこ)
大阪府立大学客員研究員
『刑事司法とジェンダー』の著者。若い頃に警察官だったという消せない過去もある。
週に1度は粉もんデー、醤油は薄口、うどんをおかずにご飯食べるって普通やん、という食に関していえば絵に描いたような関西人。でも、エスカレーターは左に立ちます。