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今月のマモルくん
一番訊かれたくない質問
17.09.28 by 牧野雅子



 取材を受ける機会がちょくちょくある(といっても、実際に掲載されたのは1割に満たない…)。その内容は、性暴力被害者/加害者についてや、性暴力と司法についてが多いのだけれど、答えに窮する質問がされることがある。「なぜ、警察官になったのですか」「なぜ、警察を辞めたのですか」という質問だ。正直に言えば、一番訊かれたくない質問だ。
 研究者としての知見を求められているはずなのに、個人史を根掘り葉掘り聞かれるいわれはないと思うのだけれど、やんわり断っても、食い下がってこられる方もあり、かなり困る。中には、その質問こそが本題で、当初聞いていた、わたしの研究内容についての質問は前振りに過ぎなかったということもあった。最初からそれを聞いていれば、インタビュー自体を断れたのに。
 そもそも質問という行為は、決してニュートラルで無害なものではない。触れて欲しくないテーマのことだってあるし、質問される事自体が暴力のように作用することだってある。性暴力被害者に対する「どうして逃げなかったのか」という問いが、「逃げるべきだったのにそれをしなかったあなたに問題がある」という非難として届いてしまうことは、質問が単なる問い以上の意味を持つということを示している。たかが質問、されど質問。
 以前、研究仲間が、動機を聞かれて困るというわたしの話を聞いて、「フィールドワークだったと答えるといい」と助言をくれた。
 「どうして警察官になったんですか」「フィールドワークのためです」
 実はこの返答、かなり気に入っている。もちろん、それは事実ではないし、フィールドワークのために警察官になるなんて非現実的でもある。それでも、研究者同士なら、フィールドワークという研究の言語で話すことの意味(お互い研究者として話をしよう、大事な研究テーマとして尊重せよ、等々)をある程度は察知してくれ、興味本位で踏み込まれることはない。

 わたしが警察官になったのは、採用試験に合格したからだ。いくらなりたいと思っても、採用基準に合致しなかったり、採用者にその気がなければ叶わない。もちろん、インタビューで訊かれているのはそんなことではなく、なぜ志望したのかということなのだけど、これこそが事実だと思うのだ。わたしに動機があり、希望があり、志があったとしても、だからといってなれるわけではない。組織が求める人材としてわたしが見込まれたということ。女の姿をした「マモルくん」にふさわしいと、組織が判断したということ。そういう「何か」が、わたしの中にあったということ。
 女性の視点で組織を変えたい、女性被害者の支援に当たりたい、性暴力で悲しむ人をなくしたい。その時の気持ちを、今の自分が「動機」としてそれっぽく語ることはできる。実際、たとえ微力でも女性当事者の力になれたらと、鑑識係員になりたいと思っていたのだから。当時、被疑者であれ被害者であれ、亡くなった方であれ、女性の鑑識を男性係員が行うのは普通のことだった。鑑識ですらそうなのだから、事情聴取など論外だった。インタビューでそういう話をすると、多くの人は目を輝かせる。とてもウケそうなキレイな理由だ。でも、一方で、権力や暴力との親和性があったはずなのだ。「マモルくん」を「マモルくん」たらしめる、力への希求が。わたしは女の姿をした「マモルくん」だったのだから。それをなかったことにして、キレイにまとめられるのは違うのだ。
 わたしもかつては「マモルくん」だった。時々、辞めていなかったらどうなっていただろうと考える。たぶん、それなりの階級になっているだろう。分野は生活安全関係で、性暴力を防ぐためにと、率先して若い女性の自衛教育を展開しているかもしれない…。

 なった理由も辞めた理由も一つじゃない。いろんなことがあった。お世話になった人も沢山いたし、迷惑もいっぱいかけた。時代背景だってあった。仕事はできなかったわけじゃない、と思う。ある時、「牧野が男だったらよかったのにって、課長が言ってたよ」と教えてくれる人がいた。並の男以上に仕事ができる、夜間の張り込みにも使いたいのに女だから躊躇する、という意味らしかった。その頃はまだ、女性の当直も一般的ではなかった。その人は、褒め言葉のつもりだったのだろう。「評価されてるね、よかったね」と付け加えられていたのを、苦々しく思い出す。
 いろいろあったにせよ、それでも、自分が警察官として経験したこと、そこで獲得した視点や考え方は、今のわたしに大きな影響を与えている。たとえば、ここに、性暴力被害者の支援活動をしている若い女性がいる。彼女は性暴力を憎み、加害者には厳しい制裁をすべきだと主張している。彼女は父親ととても仲がいい。けれど彼は若い頃、彼女が最も忌み嫌うことをしていた。父親のしたことを彼女は知らない。彼は、娘のしていることをどう思っているのだろう。彼女は、父親の過去を知ったらならどう思うだろう。現実とは「そういうこと」だと思う。「そういうこと」を見ないで性暴力をなくすことなんてできないと思う。そして、そのことは、動機をキレイにまとめられることを拒否したい気持ちと繋がっているとも思うのだ。

著者| 具ゆり深井恵打越さく良阿部悠牧野雅子
プロフィール
牧野雅子
牧野雅子(まきの・まさこ)
大阪府立大学客員研究員
『刑事司法とジェンダー』の著者。若い頃に警察官だったという消せない過去もある。
週に1度は粉もんデー、醤油は薄口、うどんをおかずにご飯食べるって普通やん、という食に関していえば絵に描いたような関西人。でも、エスカレーターは左に立ちます。