フェミ時事通信 政治を読み解こう!
大義なき衆議院総選挙、しかし不断の努力で民意は示せる〜前編〜
2017.11.07
by 打越さく良
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奢れるものは久しからず

 第42回は、小池都知事が朝鮮人犠牲者追悼式への追悼文の送付を取りやめたこと、第43回は、安倍首相による大義なき解散後、小池都知事が代表を務める「希望の党」に民進党前原誠司代表が「名を捨てて実を取る」と事実上合流を提案し党内で了承され、民進党の議員のうち希望の党の公認を得て衆議院選挙に出た候補たちは、「外国人に対する地方参政権の付与に反対」という項目をも含む政策協定書を承諾したこと、しかし、小池代表が「排除」発言をし、前原代表が「想定内」と述べたことなどを取り上げた。

 実に政治の動きはめまぐるしい。衆議院総選挙が終わった現在、都議選のような小池ポピュリズム旋風は吹かなかった。2017年7月2日に投開票された都議選では、小池都知事が代表を務めた(しかし7月3日には辞任)都民ファーストの会が都議会127議席のうち49議席を獲得して大躍進。たいして選挙前57議席で都議会第1党だった自民党は、過去最低の23議席に終わった。衆議院総選挙後、生ゴミを整理しようと取り上げた古紙は、たまたま7月3日付けの朝刊で「自民党 歴史的大敗」「都民ファースト圧勝」との見出しと満面の笑みの小池の写真を掲げた記事が一面トップ…。ほんの、3ヶ月ちょっと前のこととは思えない。奢れるものは久しからず。

 野党再編劇の劇場化で一気に注目が集まり、当初は、「安倍総理か、小池総理かという政権選択選挙だ」という声もあったが、「排除」発言後、希望の党支持率は急落。9月26日、27日に毎日新聞が実施した世論調査では、比例代表の投票先に希望を選ぶと答えた人は自民党29%に次ぐ18%だったが、選挙戦序盤には9%まで下がった。小池人気にすがった候補たちは小池人気の急激な沈下にどんなに慌てたことだろう。SNSを眺めていても、その困惑ぶりは明らかだった。

 民進党から希望に移った候補たちは初めは高揚感に満ちていたが、選挙終盤には懸命に「私は私だ。変わらない。以前と同様福祉政策がライフワーク」等と個人の活動を前面に打ち出し、党の看板をむしろ隠そうとするかのような人もいた。民進党から移った人ではないが、私の住む東京2区の希望公認候補は当初小池代表とのツーショット写真を選挙用ポスターとしていたが、選挙期間終盤で小池代表の写真が著しく小さいポスターに貼り替えた。東京の小選挙区でただ一人希望の党として当選した長島昭久元防衛副大臣は、ポスターの小池代表と並んだ写真の部分をシールで隠しさえした(!)(「希望の党、小池百合子代表のお膝元・東京で1勝22敗の惨敗」サンスポドットコム 2017年10月23日13時41分 )。

 ここまで書いていて思い出したが、小池代表が10月1日に候補者と写真撮影に応じた際、3万円徴収したことが読売新聞に報じられるや(「小池氏とツーショット3万円…公認予定者に請求」2017年10月2日読売新聞 )、党の代表が候補者から写真撮影にあたりお金を徴収することなどなく、SNS上、「アイドルかよww」などと、呆れ疑問視する声が瞬く間に広まった。まあ、この連載に何度も書いたように、安倍首相から「熟読して」と覚えめでたき読売新聞によるこの手の希望の党へ悪意ある記事にのるのもどうかとは思いつつ、私もやはり呆れてかえった。

「排除」発言で化けの皮がはがれた

 「小池代表は「排除」発言で「女ヒトラー」(日刊ゲンダイ命名)のような悪玉イメージに一気に墜ちたようだ(横田一「「排除」発言を引き出した記者が見た「小池百合子の400日」 なぜジャンヌ・ダルクは墜ちたのか」 )。しかし、第42回・第43回で書いたように、朝鮮学校への補助金支給停止を継続する方針をとったり、朝鮮人犠牲者追悼式への追悼文の送付を取りやめたりした小池都知事が、「寛容な保守」を掲げジャンヌ・ダルクと目されるなんて悪い冗談のようだと思っていた私にとっては、「排除」発言は「もともとそういう人」と特に驚くことでもなかったから、何が「風」を変えるかわからないものだ。朝鮮学校への補助金不支給や、朝鮮人犠牲者追悼式への追悼文の送付を取りやめたこと、政策協定書に外国人地方参政権反対を盛り込んだことに、有権者はもっと厳しい目を向けてほしいと思わないではいられないが、ともかく化けの皮が早々にはがれたことはほっとする。

 希望の党の失速の原因となった小池代表の「排除」発言を引き出したのは、小池都知事に記者会見で「排除」されてきたフリー・ジャーナリストの横田一氏であることは、示唆に富む。小池都知事は、横田氏にはほとんど質問の機会を与えないが、お気に入りの記者を繰り返し指名してきた。横田氏がリテラに「都知事会見指名回数順位表(お気に入り記者ランキング)」を掲載した1週間後に、半年ぶりに指名されたという。衆議院総選挙惨敗後、横田氏が質問しても、途中で「はい、次の質問をどうぞ」とさえぎる小池都都知事には、「排除」発言をした際には笑みを浮かべていたときの余裕はないし、「寛容な保守」イメージの回復のための方法論もない(「因縁フリー記者「排除」した小池さん、あの質問、やっぱり恨んでる?」2017年10月26日16時32分J-CASTニュース )。

 希望の党の失速は当然だ、と思う反面、横田氏とともに、自民党が再び大勝したことに複雑な気持ちになる(横田一「「排除」発言を引き出した記者が見た「小池百合子の400日」 なぜジャンヌ・ダルクは墜ちたのか」 )。

究極の自己都合解散・立憲主義議会制民主主義が危うい

 そもそも、今回の衆議院総選挙は、野党の準備不足を狙った「究極の自己都合」解散であり、野党が憲法53条に基づき森友加計学園問題の追及等のため臨時国会召集を要求したにもかかわらず、放置し、ようやく開いたらそのとたんに解散。「丁寧な説明」をすると言ったはずではなかったか。立憲主義、議会制民主主義の本旨を損なう、憲法上疑義がある等数多くの批判の声があったが(たとえば、「特集ワイド「大義なき衆院解散」で失われるもの 議会制民主主義本旨どこへ」毎日新聞2017年9月25日夕刊、朝日新聞2017年10月6日社説 ほか)、勝てば官軍。野党が準備できないタイミングを見計らってしっかり準備した与党が「よーいドン」と号砲を鳴らした卑劣なレースであり、勝つのは当たり前だった。

 しかし、ルールを守らないでいいという首相は、自分の権力の城を非常に危険なものとして、暴走を始めているのが森友加計問題以降明らかになっている(山下祐介「安倍総理、あなたの読みは正しい…だからこそ警告したいことがある」2017年11月2日 )。選挙が終わった後の11月2日文部科学省の審議会の専門委員会が開かれ、10日の答申で加計学園獣医学部が認可される見通しという(NHKオンライン11月2日23時49分 )。「総理のご意向」「官邸の最高」と書かれた文書が存在し、首相の「腹心の友」が理事長である加計学園ありきで「行政が歪められた」のではないか、そのような権力の私物化の産物に多額の税金が投じられるのか、という疑問を野党が追及する機会を臨時国会先送り、衆議院解散で封じ、そしてしれっと認可(一連の経過は、たとえば、籏智広太「【加計学園】 「総理のご意向」文書の存在ではない 問題の本質は別にある」バズフィード2017年6月10日7時1分 参照)。

 このような経過に、納得できるわけがない。たとえば、9月23日24日の共同通信社の世論調査では、森友・加計学園をめぐる政府の説明に「納得できない」は78.8%、「できる」はわずか13.8%だった。
それでも勝ったのは、麻生太郎氏がいうように、「明らかに北朝鮮のおかげも」あるのだ(毎日新聞2017年10月26日20時55分 )。長妻昭立憲民主党代表代行が「危機を利用したと撮られかねない」と批判したが(「野党が批判 衆院選大勝「北朝鮮のおかげ」」毎日新聞2017年10月27日21時17分)、実際そのとおりなのだ。私が住む東京2区で当選した自民党議員は、北朝鮮北朝鮮と連呼していた。北朝鮮への対応が大変なら選挙するか?首相も官房長官も全国を余裕で遊説しているではないかとドヤしたかったが、その作戦が功を奏したのだ。さらに投票当日は台風が到来し、避難勧告まで出る状態で、組織票頼みの与党には有利であったことだろう。

 これ以上卑劣な政治がありえようかと思っていたらさらにとんでもないことを考えついたようだ。なんと、首相が萩生田光一幹事長に、野党の質疑時間を与党よりも大幅に多くする慣例を見直すよう指示したと報じられた(日経新聞2017年10月27日21時00分 )。加計問題で関与が取りざたされてきた首相と萩生田氏は丁寧な説明をする気があるどころか、どうにかして説明から逃げたいようだ。

 一見、議席配分と時間を対応させるのは相当と思われるかもしれないが、さにあらず。立憲民主党の枝野幸男代表が指摘するように、「議院内閣制の日本では政府の予算案や法案は国会に提出される前に与党が事前審査する仕組みになっていると指摘。「与党は細かく政府から説明を受け、自分たちの主張をもぐり込ませる。(問題点をチェックする)質疑も野党と同じようにさせろというのは論外だ。議院内閣制の基本が分かっていない」ということなのだ(東京新聞2017年10月30日夕刊)。立憲民主党の国体委員長となった辻元清美氏が指摘するように、「政府与党自ら、国民の信頼を得る機会を放棄することにつながりかねません」(「野党の質問時間縮小を、審議時間確保の交換条件にしてはならない」)。

 このような暴挙も、数の力で強行してしまうのか…と諦めなくていい。官邸の思惑通りには進まず、結論は2日以降に先送りになった。報道によれば、与党からは世論の反発を心配する声が漏れているとのこと。ある自民党幹部の事務所には「こんな政党じゃなかったはずだ」「自民候補に投票したが、がっかりだ」と抗議の電話が続いたという(「(時時刻刻)首相、問われる「謙虚」 官邸、与党に大幅譲歩 特別国会、来月9日まで」2017年11月2日5時00分 )。民意を示す機会は選挙だけではない。諦めずに意思を伝えれば、暴挙を押しとどめることができる。

後編「立憲民主党の結成」の話しは明日更新します。

プロフィール
打越さく良
打越さく良(うちこしさくら)
弁護士・第二東京弁護士会所属・日弁連両性の平等委員会委員日弁連家事法制委員会委員・日弁連子どもの権利委員会委員・日本司法支援センター調査室嘱託


得意分野は離婚、DV、親子など家族の問題、セクシュアルハラスメント、少年事件、子どもの虐待など、女性、子どもの人権にかかわる分野。DV等の被害を受け苦しんできた方たちの痛みに共感しつつ、前向きな一歩を踏み出せるようにお役に立ちたいと思います。
趣味は、読書、ヨガ、食べ歩き。嵐では櫻井君担当と言いながら、にのと大野くんもいいと悩み……今はにの担当とカミングアウト(笑)。


著書 「Q&A DV事件の実務 相談から保護命令・離婚事件まで」日本加除出版、「司法におけるジェンダーバイアス[改訂版]」共著 明石書店、「よくわかる民法改正―選択的夫婦別姓&婚外子差別撤廃を求めて」共著 朝陽会、「今こそ変えよう!家族法〜婚外子差別・選択的夫婦別姓を考える」共著 日本加除出版

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