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でも、ただ・・・「もしも」ばかりが出てしまいます
17.02.17 by 具ゆり



 昨年12月に、女子刑務所(女子受刑者を収容する刑事施設)での施設見学会があるということを知りました。一般に見学する機会があるというのも、少し驚きでしたが、いろいろと考えるところがあり、参加してきました。


 私には、服役中に自らの命を絶った、と聞いている友人がいます。そのことを知ったのは、2年ほど前、ある新聞の連載コラムでした。
 もう何年前になるのかな、彼女の事件を知ったのもある日の朝刊でした。彼女に、いつ、なにがあったのか、当時のわずかな事件報道とそのコラムに書かれていたこと以外、詳しいことはわかりません。


 それは、本当に衝撃でした。
 何気なく、「また子どもの事件だ」そう思いながら読んだ記事。でも、えっ、これ・・・誰のこと? うそでしょ、まさかでしょ・・・ M子って、彼女のこと?
 社会面の片隅の小さな囲み記事にあったのは、確かに私の知っているM子の名前でした。間違いない、ちょっと待って、なんで? M子が子どもの命を奪った。しかもとても凄惨な形です(ここにも書きたくない)・・・まさかではない、どうやら事実だ・・・なんということを・・・自分の命も絶とうとしたけれど、夫に発見されたらしい。
 その後のことは、わからないままでしたが、今、彼ら家族3人はこの世にいません。


 虐待や暴力の相談にかかわっているとはいえ、この時は胸が締め付けられるような辛い思いがなかなかぬぐえませんでした。ずいぶん会っていなかったけど、人づてに子どもが生まれたことも聞いていた。どんなにか、待ちわびた子どもだっただろうに・・・どうしてこんなことに・・・これからM子はどうなるのだろう・・・生きていけるだろうか・・・でも、生きるしかないよ・・・しばらく彼ら夫婦のことが頭から離れない日が続きました。


 今、彼らのことを知った新聞の連載コラムは私の手元には残っていません。なので、私のおぼろげな記憶だけで書いていて、勝手な想像ばかりです。
 そのタイトルも忘れましたが、M子の夫Aさんを取り上げたものでした。その時、すでにAさんも病気で亡くなっていました。この記事で彼らのことを知った人は多かっただろうし、私のように再び思い出した人もいると思います。


 彼ら夫婦とは、皮肉にも、子どもの権利や子どもへの暴力を考える市民活動の場で出会っています。家が近くだったこともあり、行き来をしていた時期もありました。もう20年も前で、ほとんど女ばかりの場で、M子は若く溌溂としていて、まだ子どもがいなくて、しかも夫婦で勉強会や市民活動に参加するなんて珍しかった。夫は社会的地位があり、権威的なところも少々あり、早々にその活動から離れていったけれど、M子はしばらく私とも行動を共にしていました。夫は研究者で、仕事とライフワークを兼ねていたのかもしれません。
 ただ、彼ら夫婦はとても仲睦まじく見えたけど、どこか、夫は保護者のようで、父親のようで、M子は彼に甘える子どものように感じられて。女たちそれぞれが独自に参加してる場ではそれは目についたものです。


 M子とAさんはその後、どんな関係だったのだろうと考えてみました。
 事件でわかったことですが、M子が精神疾患による不安定症状を抱えていたことは事実のようです。夫はそんな妻を誠心誠意支えていたといいます。でも、なぜそんな症状を抱えるようになったか、そこが気になる。
 何が彼女を追い詰めていったのかを考えてしまう・・・
 もしも、仮に、夫なのに、妻を子どものように扱い、彼女は常に彼に従い「守られる妻」であったとしたら・・・。当初彼らに感じた気になる印象があたっていて、M子が「彼、守る人、私、守られる人」としか考えられなくなっていたなら・・・そんな愛のカタチが不自然だと2人とも気づかないでいたら・・・
 Aさんは「マモルくん」そのものです。支配という名の「マモルくん」・・・。
 それ、共依存です。2人がそんな関係だったとしたら。


 その後、Aさんは病気が見つかり、かなり深刻な症状が出始めたといいます。
 M子は、守ってくれるはずの夫が病魔に侵されて、日々憔悴していく姿を目の当たりにすることに。もしかしたら自分と子どもを守ってくれる人がいなくなるかも・・・それは恐怖の事態です。M子の安心体制がひっくり返ってしまいます。
 「マモルくん」がいなくなるなんて、考えたこともないとしたら・・・
 夫はなくてはならない人なのに・・・不安と恐怖に押しつぶされて狂いそうになったとしたら・・・。


 M子の症状の悪化もきっとあったと思われます・・・不安状態が亢進して、恐怖にさらされていくと、絶望感にさいなまれます。
 Aさんの庇護があるから生きている、そう考えていたら、もしその保護者がいなくなったら・・・最愛の息子を自分の手だけで守れるの?・・・私は生きていけない・・・私がいなかったら・・・この子も生きていけない、そう考えると・・・子どもを置いていくわけにはいかない・・・そんなふうに追い詰められていったのだろうか。


 Aさんは、生前「M子がいい母親だったことは間違いない。息子に精一杯のことをしていた」という話をされていた、記事にそうあったように記憶しています。
 妻がわが子の命を奪い、そして獄中で自ら命を絶った現実に彼自身も向き合っていたんだとわかりました。病気と闘いながら、あの気位の高そうな彼が、彼自身もカウンセリングを受けて、自らに向き合ったそうです。自分の問題に少しは気づいたんですよね、Aさん。そう信じたい。そして最後まで研究も続けたそうです。親子3人ともに、壮絶で残酷な人生だったと思います。
 Aさんの研究テーマが「子ども」に関することであったことを思うと、残された彼が何を思い、何をしようとしたのか、余計に考えずにはいられませんでした。


 でも、ただ・・・「もしも」ばかりが出てしまいます。
 M子がなんとか夫の病気や死を受け入れて、見届けて、見送っていたら・・・夫の亡き後を、息子との2人で生きる時間が生まれていたら・・・と。
 失うものを受け入れることは、新しく手に入れるものもあると考えてほしかった。守られなくても、彼女には自分で生きる、決めるという自由と時間に出会えたのに。子どもの命も守れたんだよ、と。
 M子には、回復することも、その力もあっただろう、彼女は生きていけただろうと思えるのです。彼女には、そんな力が備わっていたと思えるから残念です。身についた依存症も無力感も、そう簡単には抜けないだろうけど、でもやっぱり、私たちは、自分で生きるしかないんですもの。


 女子刑務所の見学は思ったより発見の多い機会になりました。受刑者に対して「より良質かつ低廉な公共サービスの提供を実現することを目的として」運営されている場所だったんですね。もちろん規律も厳しく、時間管理と監視の下での生活で、毎日が統制されて自由はありません。過酷なことです。でも、施設側の説明で、人として当たり前に扱われる体験こそが、罪を悔い再犯を防ぐのに最も効果があると聞き、そう考えていることに安堵しました。食事も試食してみて美味しかったし、社会復帰に向けて資格取得への支援もしています。
 ただ、この場所で、生きることを諦めてしまったM子が、その監視の目を潜り抜け、自らの命を絶ったことを思うと、さすがにやるせない思いが再び募りました。

著者| 具ゆり深井恵打越さく良牧野雅子
プロフィール
具ゆり
具ゆり(ぐ・ゆり)
フェミニストカウンセラー
フェミニストカウンセリングによる女性の相談支援に携わっている。
カウンセリング、自己尊重・自己主張のグループトレーニングのほか、ハラスメント、デートDVやDV防止教育活動など、女性の人権、子どもの人権に取り組んで20年あまり。
映画やミュージカルが大好き。
マイブームは、ソウルに出かけてK-ミュージカルや舞台を観ること。