心浮き立つ春ですね!
ななななんと、この「批評は読んでからしろ!」に、「この本を読んでくれたまえ!」というリクエストをいただきました!!! ありがとうございます〜!!!……といっても、メールをいただいたのは、今年のはじめのことなんですが。毎度謝っていますが、対応が遅くてほんとにすみません〜。
リクエストメール、すんごくパワーをいただきました。あこがれのLPCでのコラム連載開始後、北原さんから笑顔で「長田さんのコラム、なんか反発のメールが多いんだよね〜」とサラッと言われたことがあり、実はややびびっていたんです。でも、私が書き散らすことをおもしろいと思って読んでくださる方がひとりでもいるのなら、私は私に書けることを書けばいいやと思った次第でございます。
んでもって、今回のお題です。リクエストをくださった方をもって「彼の本がある限り私は彼と戦わなくてはならないような宿命を感じるのです。」とまでいわしめる(勝手に引用してすみません)その本とは! 里中李生氏の『「かわいい女」練習帳』でございます。
もう、帯の惹句だけでひるみそうです。「―『本を読む女』に、男は一目置く!」ってアナタ……。リクエストもらって浮かれていた私がバカでした。今すぐにでも尻まくって逃げ出したい気分です。
この著者、サイトやオフィシャルファンクラブもあります。サイトを見ると、どうやら彼は「写真家」らしいです。サイトで写真も「無料で」見られます。本人が写っている写真もあります。文句を言いつつ、写真に見入る私。いや〜、こういう写真世界が、彼の言う「かわいい女」なわけですね。ふむふむふむ。
さてさて、それでは問題の本を開いてみましょう。
……(間)……。
……あのねえ、これ、ポエムです、たぶん。だってさ、マニュアル本ですらないよ、これ。
「女と男は、何度も何度も出会うようになっている。空はそのために繋がっていて、海に流したガラス瓶の手紙は対岸までたどり着き、地平線は水平ではなく、丸くなっている。」
んですって。……はい? 読者おいてけぼりっすよ。
すみからすみまで嬉しくなっちゃうくらいにツッコミどころ満載なんですけど、圧巻は『二人の男を同時に好きになってしまったら……』という節。二股をかけて、どっちをとるか迷ったら、
「『おまえは、俺以外の男とつき合ってるのか、ふざけるな』と怒って、あなたを捨てようとする男の方に、土下座して謝って、縒りを戻す。」
のが正しい道なんだそうでございます。
「(二股をかけてるときの)セックスは楽しくないはずだ、罪悪感があるから。ないなら、あなたは単なる淫乱。(中略)あるはずだ、罪悪感が。その罪悪感が、あなたの最後の女らしさなのだ。」
……ほら、ポエムでしょ? なぜに倒置法?
そのくせ、不倫(ここでは、妻帯者と独身女性の関係に限定)は肯定されている。そこには罪悪感はないんかい! とつっこまずにはおれません。いわく、不倫についての考え方を問われて「不倫はいけないと思う」というのはやたらと道徳的な白ける答えで、「好きになった人に、奥さんがいたら仕方ないと思う」と答えるのが正解だそう。たとえ不倫の恋でも恋愛は美しいから。うわ〜ん。ドリーム入りまくりだな、おい。
結局のところ、「俺はこういう女の子が好みなんだよ」と全編を通して言ってるだけなのである。だってさ〜。出てくるシチュエーション、全部「年上の男が好きな若い女の子」なんだぜ。年下好きの私なんぞ、「『年下が好き』という女の子は除いて」のヒトコトで、あっさり除外されちゃいました。
んで、年上の男が好きなら、「年上なら、何歳でもいい」と言って「“年の差”を口にしない方が、女の魅力が増す」のだそうだ。……失笑。「若い女の子と『大人の』男(要はおっさん)」ってさ〜、結局おっさんの妄想じゃん?
裁縫セットや彼の好きな飲み物を入れた水筒やハンカチティッシュバンドエイドで男の気を引けってさ……。ベタすぎやろ! そんな「練習帳」必要とする女はいませんってば。
「男はセックスの女と結婚の女を区別している。抱かれたら、結婚まで行くと思っていると火傷をする」「私は若い男を代表して言う。セックスが絶対にできない女とは年に数回しか会わない。それを男女の友達とは言わない。」(オマエ、若い男じゃないだろ)
「ズボンよりスカートをはけ」「スカートはミニかロングじゃなきゃいけない」
ってアナタ、おっさん度あげすぎですわよ。
この本、タイトル変えたほうがいいですよ。これじゃ『うっとうしいオヤジに愛されるための 「かわいい女」練習帳』である。ジャロに訴えちゃうよ。
きわめつけは、第5章のタイトル。これ、この本のすべてを表しているいいタイトルです。「どんな時も、男の幻想を裏切らないのが『いい女』 ―男友達がたくさんいる女に、近寄る女はいない」だって。
著者は、男友達の多い女は
「私の知っている限りでは、暴走族のお姉さんか、プロ野球やサッカーの応援団の女の子しかいない。」
のだそうで。そこまで女を知らないくせに、「かわいい女」だの「いい女」だのを偉そうに語るんじゃないよボクちゃん、と言いたくなってしまうのでありました。
こちとら、勘違い男の幻想を満足させて気を引くために労力を割いている暇なんてないのでございますよ。まあ、お仕事なら仕方なく演技もしますがね。
「俺の幻想の通りの女でいてくれ」「かわいい女になれ」とかいう前にさ、ほんのちょっとでいいから、「いい男」になることを目指してくれよ。その努力をしてくれよ。
私としては、いい男とは、女を自分と同じ人間として見られる男だと思うわけですよ。当たり前すぎるほど当たり前だと思うけど、意外と少ないんだなあ、そういういい男。
とっくにおじさんになっちゃった著者自身が基準であるせいなのか、「少年っぽい男が好き」というような、「大人になりきれていない男を『かわいい』と言って好む女は、自分も大人になりきれてないか、もしくは、男性恐怖症だ。大人の男の厳格な面持ちや怒り、知性が怖いのである。もちろんセックスも、自分がリードしないと怖い」って書いてあるんだけどさ、もうそっくりそのまま、ご本人のことだとしか思えない。
かわいい女が好きだとか、大人になりきれていない女を「かわいい」と言って好む男は、自分も大人になりきれていないんでしょ? もしくは(というか同時に?)女性恐怖症なんじゃないですか?
大人の女の厳格な面持ちや怒り、そして知性が怖いんでしょ。だから、もちろんセックスも、自分がリードしないと怖いんでしょ。ああ、めんどくさい。
さて、それでもなんとか最終ページにたどりつき、「おわりに」を読むと、本物の「いい男」が好きになる女性についてまとめてくださってます。
・男のために、笑顔を作る。
・男のために、料理を頑張る。
・男のために、言葉づかいに気をつける。
・男のために、行儀よくする。
・男のために、おしゃれをする。
のだそうです。
そして、衝撃の結論はこちら。
「もし、あなたが、男よりも仕事ができて、お金をたくさん稼ぎ、いい男に選ばれる必要がないのなら、別に『かわいい女』になる必要はない。私の恋愛論は、いい男に選ばれたいなら、女は、素直なかわいい女でいたほうがいいと言っているだけなのだ。『いい男に選ばれる』という前提がなければ、別に、どんな女でいてもかまわないのである。」
だって。
なあんだ、そしたらこんな本いらないじゃないですか。
著者のいう「いい男」の定義って、一般的なそれとは違って、「俺のような男」なんですもん。「俺に選ばれるかわいい女になる練習帳」なんて、コピー本を手で配れば十分なんじゃないでしょうか。
っていうかさ〜。自分を「いい男」だと思い込み、自分が優位に立てるような女を「かわいい女」と定義しちゃうその自信はいったいどっからくるわけですかね。「俺の魅力がわからないやつはダメな女だ」と自分に言い聞かせていれば、いつかそれを心から信じられるようになるのかしら。
それを心から信じられて、仕事のおかげで自分を男として立ててくれる女に会う機会もあって、こんなろくでもない本を出版できて、う〜ん、そういう人生も幸せなのかもしれませんねえ。傍から見てどんなにみっともなくても、本人が幸せなら、それがいちばんですよねえ。
ある意味羨ましいです。絶対そうはなりたくないけど。
『好きな人に愛される 「かわいい女」練習帳』里中李生・三笠書房 1,200円(税別)