セクハラ――相談しよう、そうしよう

会社でセクハラを相談したところ、「そのような事実があったことは認識しておりません」とまったく認めてもらえなかっただけでなく、事実上リストラ宣告まで受けてしまいました。

――セクハラやいじめなんてよくあること。我慢していれば大丈夫。そのうちほとぼりも冷めるでしょう……

窮地に追い込まれてもがんばって、最後には成功するというサクセスストーリーに見習おうとしました。しかし、仕事はますますなくなるばかりか、仕事場で孤立することも多くなり、精神的にも追い込まれていくことが多くなってしまった事実を考えると、“がんばればなんとかなる!”などという気休めではもう限界でした。不眠、食欲不振、頭痛などの身体症状まで出てきたからです。そこで私は外部の団体に相談することにしました。

まず、セクハラに関する書籍やインターネットの記事から、どんな相談窓口があるかを調べました。政府系から民間までさまざまな相談窓口がありました。

まず、政府系の労働相談窓口です。やはり無料で受けてもらえるのが魅力ですが、本格的に相談するとなると窓口へ出向くことになります。開所時間はたいてい平日なのだそうで、相談には会社を休む必要があり、会社にばれてしまうのではないかと心配になってしまいました。これに加えて窓口が遠いこともあり、仕事以外の外出もままならない私にとってはさらに遠い存在になってしまいました。

次は、女性のためだけに用意された相談窓口です。運営は政府の省庁だったり、地方自治体だったりします。電話をかけたところは、地方自治体の運営で開かれている女性専用相談窓口です。さっそくセクハラの詳細や、現在リストラの危機であることを伝えました。相談員はもちろん女性です。男性が信用ならないと思っている私にとってはとても安心できるものでした。しかし、結果は散々たるもでした。

「ずいぶん苦労されたと思いますが、ここは職場に対して何らかのアクションが取れるという場所ではありません。ですから、労働相談を専門に扱っている窓口を紹介しますから。」

ネットにはセクハラも相談可能と掲載されていたはずですが、おかしな話です。結局は母体のちがう女性団体の窓口を教えてもらい、電話を切りました。

私はすぐに紹介を受けた窓口に電話してみました。すると、なんともいえない回答が返ってきました。

「セクハラというよりも、ストーカーなどに近いので、警察に相談されてはいかがでしょうか。警察の窓口でもご紹介しますか?ここは仕事のスキルアップを手助けしたり、再就職を応援したりすることはできるのですが……」

すでに相談は3件目です。これ以上新しい相談窓口で同じことを説明するのは精神的につらいくなってきました。解決方法を教えて欲しかっただけなのです。しかし、“ここでは手に負えない”という意味も含めて先方は話してきますので、ごり押ししても仕方がありません。

惨敗続きの私はもう外部に相談することはないとあきらめました。問題が複雑だから、だれも相談を受けてくれなかったのでしょうか?会社内だけで行われたセクハラならば対応してもらえたのかもしれません。そんな中、3件電話相談して気がついたことがひとつだけありました。どの窓口でも言われたことがあったのです。それは、“証拠が残っているか”というものでした。具体的には、いつ、どこで、だれに、どのようなことを言われたか、または、されたかの記録です。正直、これでは泣き寝入りしかないなと思いました。だって、セクハラに遭ってもセクハラとすぐに認識できなかったし、それを後々のために記録しておこうなんて考えてもみませんでしたから。記録しておくことが後に有利になるとしても、被害者が事実を記録しながら“後で訴えることもあるかもしれない”と用意周到に立ち回ることができるでしょうか?

結局相談をあきらめ、次第に“退職”の二文字が現実のものとなってきました。最初から転職しようと考えているならば、次の会社や仕事を見据えて行動ができるものですが、セクハラはワケが違います。厄介者として追い出される自分。扱いにくく、素直じゃなく、仕事もさせてもらえず、家に帰れば泣いてばかり。そんな自分はもうだめだと。いっそのこと、いなくなってしまいたい……そんなことばかり考えるようになってしまいました。

ある日、図書館で女性問題に関する書籍を見つけました。そこには女性のための相談窓口の紹介があり、今まではまったく考えていなかったのもが目に飛び込んできました。それは、個人でも入れる労働組合です。中小企業で働いていた私にとって、労働組合は大企業だけに存在するものであり、まさか自分も加入できる労働組合があるなんて考えてもみませんでした。

さっそく電話してみました。セクハラで仕事がうまくいかないこと、体調を崩し気味なこと、リストラ宣告を受けていて退職することになりそうなことを説明しました。また、以前にも他の団体に相談したが引き受けてもらえなかったことも話しました。すると相談員の女性は、

「一度こちらにきて、お話をしてください。お待ちしています。」

と言ってくれたのでした。私はすぐに相談に行きました。セクハラに遭うと、労働基準局などの相談窓口へ出向いて相談し、会社にお達しを出してもらうことが多いかもしれません。しかし、個人で加入できる労働組合があり、一緒に会社へ交渉してくれる方法(団体交渉といいます)があったのです。“一緒に”というのは文字通り自分も一緒に参加するということです。本当なら家にこもっていたい気持ちでしたが、やっと味方になってくれる人が見つかったのですから後には引けません。私は団体交渉をすることを決ました。また、そのつどのセクハラ行為を記録したわけではないけど、留守電の内容は容易に準備できたし、会社のメールはすべて保存していたので、メールを使って会社に相談した事実などを証拠として使うことにしました。

団体交渉の申し入れを会社に送ったときから戦いは始まりました。やはり会社はこのような行動に出ることを予想していなかったようで、会社は動揺し、ただでさえ味方が少ない私の周囲からはまったく人がいなくなっていきました……でも、一人ではありません。理解し、協力してくれる人が現れたのですから。

(次週につづく)


INDEX
[2009/01/06]
年齢を重ねるということ
[2008/09/26]
内緒の理由
[2008/09/18]
ため息
[2008/05/01]
関わり方
[2008/04/17]
めざせよき母
[2008/03/27]
サービスと再就職
[2008/03/06]
とあるニュースが差別に思えて……
[2008/01/25]
女の腹
[2008/01/05]
坂戸恵美から江川綾子さんへ
[2007/12/20]
男子学生のご意見ですYO!
これより前のコラムを見る
▼コラム一覧へ戻る  ▲topへ