とあるニュースが差別に思えて……

 今、テレビのニュースを見ると、必ずといってよいほど自転車の話題が出ています。特に女性にとって深刻なのは、子供2人を乗せての、いわゆる3人乗り運転の禁止ではないでしょうか。保育園や幼稚園の送り迎えのために利用している母親から反発が起きているということで、警察庁も条件付きで認めようとしているというのですが……。

 そこである日、4歳の子供を補助つきの子供用自転車を運転させ、出かけることにしました。それがうまくいくとすれば、私の3人乗りは止めることができるわけですから。

 しかし、予想に反して補助つき自転車というものは街乗りには向いていないことが明らかになりました。まず、狭い歩道を運転すれば歩道脇の鉄柱に補助輪が引っかかることがわかりました。そして、歩道が車道より高くなっている場合は、車が通るための傾斜に差し掛かると、うまくバランスをとることができず、車道に飛び出してしまうことも発見しました。しかし、一番怖かったのは、3人乗りママチャリ以上に補助つき自転車が邪魔者扱いされることでした。何度後続の自転車にベルを鳴らされたことか……。

 気を取り直して、よく買い物するスーパーまで走らせると、いつも何も考えずに自転車を駐輪していた場所が、子供にとってはかなり難しい代物であることが分かりました。まず、駐輪場の発券機の高さです。入場時は券を難なく取れるのですが、退場時はなかなか券を指定のところに入れることができません。券の挿入箇所が子供の頭より高いので、うまくいかないのです。そして次の問題は、入場・退場時の回転扉です。自転車をおしながら扉を押すのですが、子供の力ではなかなか回転してくれません。しかも、なんとか回転させて通過できたとしても、急いで前に進まないと背後から回転扉が迫ってきて自転車を押すかたちになり、子供と自転車は簡単に車道に飛び出していってしまいました。

 さらに補助つき自転車には困難が降りかかってきます。それは、狭い通路で起こりました。たとえば、駐輪場が地下や上階にあったり、自転車も通れる陸橋によくある、半分が平らで半分が階段になっている通路では、補助輪が平らな部分から階段状の部分にはみ出すことがあり、簡単に倒れてしまいます。自転車をおして歩くにしても、それだけの力を子供は持っていません。

 ここまでの実験で、街は大人のためにできているのだなと再確認しました。歩道の構造も駐輪場の構造も。大人にとってはそれほど気にならない住宅街の曲がり角での見通しの点においても、目線の低い子供にとってはほとんど全てが見通しの悪い曲がり角でしかありません。

 また、子供用自転車が日常的な移動手段として使うことが前提となっていないことに気が付きました。子供用自転車を買うとわかるのですが、鍵とライトがついていません。自転車屋の店主も、「幼児用の自転車は移動手段ではないですよ!」と。

 でも、やはり現状の3人乗りはできなくなると思ったほうが良いのでしょう。その現状を受け、幼稚園や保育園に親同伴なら自転車通園を認め、駐輪場を設置してくれるなんてこともないでしょうから、3人乗りで子供を通わせている母親にとっては頭の痛い問題であることは今後も変わらないようです。

 ところで、3人乗りに関しては批判的な意見が圧倒的に多い上、固定的なイメージが定着しています。10年のペーパードライバーをやめようと、ペーパードライバー教習を受けていたときの話です。同乗した教官に受講の理由を聞かれ、子供が二人になったからだと言ったとたん、彼は「本当に3人乗りの自転車は危ないですよ。ふらついているのに、スピード出して、人の迷惑も考えずに乗ってる人ばっかりですよ。子供がかわいそうですよね。車乗っていると、そういう自転車が邪魔なんですよね、とても!」と言いました。このような意見は、実はテレビでも今盛んに放送されています。そこで、車と3人乗りを両方利用している自分にとっては、彼らの意見がなんだかトンチンカンかご意見に感じられてきました。車も自転車も、女が乗れば「危ない、無茶をする」など、技量が男より劣っているんだという思い込みがあり、「勝手だ、無責任だ、配慮がない」と女は自分勝手な生き物なのだという、これまた思い込みがあり、「子供のことを考えるべきだ、子供の安全は母親にかかっている」という、育児は女の責任という固定観念があるように思います。3人乗りをしているとき、全ての人がふらつきながら暴走しているのだろうか? むしろ、3人乗りはスピードを出せばふらつくのでゆっくり走るしかないのですが、それを声に出す人はいない。だから、3人乗りに関しては無法者というイメージです(正しくは、法律においては違反なのですが)。とにかく、3人乗りを批判する言葉の数々が、どうしても根底に女性に対する差別的な考えがあるように思えてならないのです。そのせいか、自転車をめぐる一連のニュースで飲酒での運伝が違反だとあまり紹介されません。それは夕方という放送時間だからという意見も出そうですが、その多くが女性や子供や高齢者である視聴者にたいして、こんな非常識な女性が沢山いるんですよと紹介し続けるニュース番組の、どこに女性を擁護する姿勢があるというのか? 利用者たちの声が変えられ顔にモザイクがかけられる一方で、3人乗りを批判する意見を述べる一般人が顔出しなんて、これが差別でなくてナンなの? と思います。

 しかしながら、危険は伴う乗り方であるのは確かです。まずはヘルメットの義務化をするとか、高額な負担にならない安全対策から始めてはどうでしょうか。停車時や乗車・降車時の転倒の問題もあるけれど、たいていの利用者は細心の注意を払っているのではないかと思います。この点に関しては、子供一人を乗せる2人乗りでも同じことです。子供乗せ自転車を新しく考えたり、いきなり規制する前に、まず、利用者批判をやめ、子供用自転車や子供を乗せて自転車で牽引するカートや検討されている三輪車などが、今の道路や駐輪場、そして利用者以外の人々は容認しないだろうということをまずは言うべきだろうと思っています。


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