ため息

 5月に病気の精密検査をし、腫瘍が見つかった。6月に手術をし、3ヶ月経った今は再発もないようで、やっと社会復帰。長いお休み、お詫び申し上げます。

 ところで、いわゆる「園ママ」であるわけだが、この間までの長い夏休みではいろいろな発見があった。休みともなると子供の友人たちと会うために母親たちが連絡を取り合うのだが、普段は通園方法が違うために顔を知らない母親たちと会うことになる。そうすれば、お互いがどんな人なのかと、住んでいる場所やら、家族構成の話やら、出身地の話などをするのだが、その日の話は自分たちが過去にどんな仕事をしていたのか、であった。

 皆に共通するのは、出産や子育てのために専業主婦となり、家事と育児を中心とした生活を送っている。それがどんな生活かといえば、私立幼稚園の授業料を支払うために、自分の洋服代やら趣味にかけるお金を極力減らすというものだ。そういった前提のもとで話す、過去の職業というのは、ちょっと刺激的だ。

 この日のグループの中に、外資系企業の出身者がいた。しかも、帰国子女、英語堪能、海外出張も沢山経験したキャリアウーマンだ。どこへ出張に行ったのかとか、仕事は大変だったかとか、周囲は質問し、その答えが発せられるごとに皆からため息が漏れる。すばらしい、うらやましい……そんな経験を“してみたかった”と。

 もうすでにキャリアを断念し、子育てに追われている女性が社会復帰をできたとしても、そこまでのキャリアを築ける可能性はかなり低いだろう。どんなにがんばっても全部の力を仕事に注ぎ込むわけにもいかないことは分かっている。せめて子供の学費のために、そして少しは自分の自由裁量のお金を得るために働きたいけれど、幼稚園児を抱えての仕事は祖父母や二重保育のあてがなければ無理である。

 それでもいつかは仕事を得たいと思っている。一番下の子が小学校に入学したらとか、それぞれが基準を設定し、それまで後何年という計算をする。そして、仕事は……
 件の女性にある人が質問した。
「今までのキャリアを生かせる仕事を、またしようと思う?」
すると女性は答えたのだ。
「別に。近くで見つけられたらそれでいい。」
そしてまた皆でため息をついたのだ。

 そうだ。ここは都心へは小一時間かかる場所だ。東京の最新スポットにあるビジネスタワーにある会社へ就職することはなかなか難しい。よって、限られた範囲で仕事を探すことになる。そうなれば外資系企業やだれもが知っている日本の大企業に就職することも可能性としては低い。
 この女性に対するため息の意味は何だったのだろう。
“あ〜、羨ましい!”
当然あっただろう。
“あ〜、もったいない!”
確かにもったいない。しかし、最後のため息だけは意味が違うように感じた。ブランクがあってもバリバリ働きましょう、子育てと仕事は両立できますと盛んに言われている世の中であっても、実は結婚前や出産前のような働き方や当時の年収をもう一度得ることは無理だと感じている人は多い。そんな中で彼女の答えは、少し意地悪かもしれないけれど、キャリアを積んできた女性が自分たちの生活を認めてくれたことへのうれしさだったのかもしれない。もしくは、私たちの子育てや今後の仕事に対する考え方がそれほど間違ってはいないのだ、という安心感だったかもしれない。

 突然だが、今、台湾ドラマに凝っている。登場人物には必ずといっていいほどF4(男性グループ)のだれかが出ていて、その恋人というのが、超美形、アメリカやヨーロッパへ留学経験ありの出版社社員(編集者)という、いくつかのドラマで同じ設定なのだ。台湾でも留学経験やら編集者といのは女性の憧れのキャリア像といったところなのだろうか。展開が美しすぎて、少々赤面しながら見ている。仕事も恋もうまくいっている女優にため息……。でも結婚して子供ができたら仕事を続けられるのかしらと考えて、またため息。でも、心配ご無用。相手は女優さん。日本では子供を産んでも数ヶ月で復帰しているではないか。さっきのため息は不要! でも、一般人の私と出産経験のある女優さんとの違いって何かしら? 努力の差? それとも他にある? そう考えてまたため息。


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めざせよき母
[2008/03/27]
サービスと再就職
[2008/03/06]
とあるニュースが差別に思えて……
[2008/01/25]
女の腹
[2008/01/05]
坂戸恵美から江川綾子さんへ
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