福岡市  

第04回 ネットでお取り寄せ

「モーニングアフターピル」で検索してみると、やたら目につく個人輸入代行業者のサイト。ほとんどがアメリカで製造・販売されている緊急避妊キット「PREVENプリヴェン」で、相場は1万円前後。妊娠検査テスト(服用する時点ですでに妊娠していないかを調べる)とピル4錠がセットになっていて、これなら高くはないよなあ、なんて思ってしまう。
ネットでの販売は、緊急避妊ピルが普及しつつある過渡期ゆえの現象なんだろう。まだまだ入手が困難な地域も多いし、小さな町では産婦人科にかかりにくいとも聞く(出産なら許されるんだろうけどさ)。

わたしも、いくらかマシなサイトを見つけて、「プリヴェン」を購入してみた。どうマシなのかというと、スマートドラッグやバイアグラ、「抜群感度アップクリーム」等と一緒に怪しいエログッズにカテゴライズされていなかったという程度(しかしこっちの方が主流です)。わたしが選んだのは、主にサプリメントを扱っていて、銀行・郵便振込が可能、自分の口座を連絡しなくて済む業者だった。

価格は1セット7,700円、3セット17,500円で商品代、輸入代行手数料、送料込み。入金確認後、7〜10日間で手元に届くという。つまり避妊に失敗してから注文したのでは間に合わない。常備薬向けということ。

振込からちょうど1週間後。海の向こうから届いたキットは微妙に箱がつぶれ、口が開いていた。
錠剤のシートは無事だし、妊娠検査テストは密封されていて(小分けになっているポッキーみたいなかんじ)、問題ないはずなのだけど、これを飲むのはちょっと怖いなあと思う。この商品がニセモノではないということを、誰が保障してくれるんだろう。いざというときの命綱としては、どう考えても、心もとない。
後日、この会社に「プリヴェン」の注文状況について取材をしたところ、やはりというかなんというか、「すぐに入手したい」という要望が非常に多いのだという。セックス後にあわてて検索している姿が目に浮かぶ。
その一方で不気味だったのは、3個セットを注文する人も全体の3割を占めるということ。万が一に備えるとはいえ、ねえ、なにゆえ3個も必要なの???

「え、なかで出しちゃったの? どうして? 赤ちゃんできちゃったらどうするの?」
ある業者のトップページはこんなキャッチコピーで始まり、「そんな女性の悩みを解決するために開発されたのが…」そして「万が一のために、絶対持っていたい!」と続く。
どうして?  はこっちのセリフだよねえ。中出しオトコへのペナルティは? なぜ彼女は遠慮がちなの? 彼女の「悩み」を解決してくれるのはピル? これ、本当にオンナ向けセールスなんだろうか。女装したチンコどうしで売買してるだけじゃんか。

緊急避妊ピルは、ここでは中出しするオトコのためのツールだ。「ほら、読んでみろよ。欧米では薬局で売ってるんだって。副作用も心配ないってさ。ちょっと気分が悪くなるくらいだよ」そのわずかな副作用さえ、自分は一生無縁なくせに。
こんな都合のいい薬が1万円そこそこで手に入る。中絶費用を要求されることを考えると、ずっと安上がりだね。

日本家族計画協会クリニックの北村邦夫氏は、イギリスの薬局で緊急避妊ピル「NorLevoノルルヴォ」を購入しようとしたら、売ってもらえなかったと言っていた。男性には販売しないことになっているからだそうで、自分の職業や目的を説明しても、「男性には売らない」の一点張りだったらしい(フランスでは入手できたそうな)。

同様に、「プリヴェン」も女性しか注文できないことになっている。しかし、今回わたしが申し込んだ名前は本名ではないし、配達のおじさんが確認しているとも思えない。女性名で申し込みさえすれば、男性でも難なく入手できるだろう。
男性が3個セットを注文しているとしたら。または男性主導で女性が注文しているとしたら。あ、どっちでも同じか。誰が注文したって、得体の知れない錠剤を飲まされるのは、どうせ女性なんだもん。

北村氏は、かつて緊急避妊ピルの事前の「お取り寄せ」について、愚かなことだと喝破していた。コンドームが万能ではないということを知っているなら、より確実な避妊法であるピルを日常的に服用すればいい、とピルを支持する人たちはいう。
だけど、わたしはピルをぎりぎりまで拒みたい。オンナだけが薬剤を服用させられるなんて、まっぴらごめんだからだ。コンドームでの避妊に失敗したときだけ、またはレイプ被害に遭遇したときだけ、やむをえず、しかし即座に、緊急避妊ピルを飲みたい。だから常備する。

3個セットの注文は確かに愚かしい、というか気味が悪い。しかし、「心配なら毎日ピル飲めばいいのに」と平然と言ってしまう人も、わたしにとっては同じくらい気味が悪い。それって、オマエはオンナなんだから観念しろってことでしょ?

もしも、緊急避妊ピルが薬局で購入できたら。わたしたちはそれを常備しておく必要はなくなるし、「翌朝」といわず直後に服用することも可能になって、避妊の成功率はぐっと上がるに違いない。あわててネットで検索し、怪しい業者に問い合わせる必要もない。なにより、輸入代行なんかで購入するよりもずっと安価だ。
その日まで、緊急避妊ピルはネットで流通するだろう。バイアグラ&ハーバルエクスタシーと一緒に梱包されて、中出し愛好家たちの部屋に宅配されていくんだろうね。

INDEX
調査内容詳細はこちら
第29回 [2003/07/30]
緊急避妊のお値段

●調査地域 [大学病院付属病院(私立)]
第28回 [2003/07/23]
目指せ、ヤミ堕胎

●調査地域 [大学病院付属病院(国公立)]
第27回 [2003/07/15]
中絶をめぐるわたしの空想

●調査地域 [大阪市]
第26回 [2003/07/08]
イイオサン

●調査地域 [京都市]
第25回 [2003/07/01]
村上節子さん

●調査地域 [長崎市]
第24回 [2003/06/03]
ピルは飲むのか入れるのか

●調査地域 [鹿児島市]
第23回 [2003/06/03]
パイプカットのお値段2

●調査地域 [宮崎市]
第22回 [2003/06/03]
パイプカットのお値段1

●調査地域 [大分市]
第21回 [2003/05/27]
男性用ピルかパイプカットか

●調査地域 [広島市]
第20回 [2003/05/20]
「排卵法」と「粘液法」

●調査地域 [岡山市]
第19回 [2003/05/13]
合掌

●調査地域 [和歌山市]
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