金沢市  

第08回 お客様相談室と緊急避妊

かれこれ10数年も前のことだが、コンドームが破損したことがある。当時の緊張と心細い気持ちを思い出しながら、コンドームメーカーのお客様相談室に電話してみた 。

まずはA社。
わたし「昨晩、コンドームが破けてしまいまして」
担当者「コンドームは、絶対に破けないものではないんです。コンドーム神話ってありますよね、破けないみたいな。でも、品質の基準をきちんとクリアしていたとしても、破けることがあります」

のっけから、破けないものと信じていたお前がアホだと言わんばかりの抗弁が展開される。かなり威圧的な口調。
担当者「わたしども、年間×億×千万本売り上げておりますが、お客様のようなお電話は年間30件くらいですかね」
ごく低い確率ながら、しかし確実に、コンドームは破損するということが強調される。

担当者「破けたコンドームは、まだお手元にありますか。ティッシュかラップにくるんで、着払いでお送りください。こちらに責任があるのかどうか調べます。お手数ですが。どーもー」
わたしはやっかいなクレーマーということか(ま、その通りなんだけど)。かなり一方的に電話を切られてしまった。こんな電話をする人間が年間30件いるというのは、愉快な発見だった。

次にB社。
わたし「昨晩コンドームを使って、終わってみたら、膣のなかに残っていたんです。いつも使っていて、こんなことはなかったんですが」
昨年のクリスマスパーティのとき、ウレタンコンドームが抜けた、破けたという話題でひとしきり盛り上がったことを思い出す。

担当者「ウレタンコンドームは、ラテックスのものに比べて、薄くて丈夫な反面、わずかではありますが、伸びにくい素材になっております。ですから、ご使用の状況、体調によって、まれにヌケオチが起こることもあるかもしれません」
わたしが勝手に補足するなら、チンコが小さければ抜けやすく、チンコが大きければ破損しやすいという意味だろう。体調が悪いときなどは、ご注意を。

わたし「事故の可能性について、今ご説明いただいたようなこと、取り扱い説明書に書かれてありましたっけ」
担当者「素材の特徴がそのようなものであっても、事故が起こりやすいというわけではありません」
担当者の声は一貫して誠実で、落ち着いたものだった。最後に「他になにかご不明な点などありますか」と聞いてくださり、たったそれだけのことなのに、信頼のおける人だという印象が残りました。

そして、コンドーム業界大手のC社。
そもそも、今回こんな迷惑な電話調査を思いついたのも、かつてC社に取材にうかがったとき、緊急避妊の話題に及んだことがあったからだ。
きっかけは、家族計画協会クリニックの北村氏が、コンドームによる避妊の失敗率の高さを指摘していたことだという。詳しい内容までは尋ねなかったが、おそらく以下のような報告だろうと思う。

同学会(日本性科学学会)のシンポジウムで、産婦人科医の北村邦夫所長は、コンドームによる避妊の失敗率が少なくないことを指摘。(中略)北村所長はさらに、FDA(米食品医薬品局)が行った調査で避妊の失敗率はピル0.1%に対し、コンドーム12%という数値を示し、「日本のコンドームは安全性の面から疑問が残る」と指摘した。その一端として、日本のコンドームが約0.02〜0.05ミリの薄さで、欧米製の平均0.06ミリと比べるとかなり薄いことを挙げた。
(北海道新聞 96年10月16日付)


この当時、北村氏は低用量ピル解禁に向けて突っ走っていた時期だから、日本における「コンドーム教批判」を強めていたのだろう。こうした批判は(さして影響力があるとは思えない)学会にとどまらず、一般メディアでも展開されていった。 危機感を強めたコンドームメーカー各社は、北村氏との面談の席を設け、コンドームの安全性について訴えたという。その際に、北村氏から指導を受けたのが、緊急避妊法だった。 とまあ、こんな話を小耳にはさんだのだ。

果たして、C社に電話してみると。
「お身体が心配ですよね。失礼ですが、妊娠の可能性などは、いかがですか」
という質問に続き、緊急避妊法について、懇切丁寧に、解説してくださった。内容はパーフェクトといっていいと思う。と、なんだかとてもエラそうだけれど、ホントに、拍手を送りたいようなご説明でした。

破損した商品を着払いで送ってほしい、検査を行った結果をお知らせします、などの応対も、大変ご立派。さすが、世界のC社。迷惑なクレーマーに丁寧に対応してくださって、本当にありがとうございました。

INDEX
調査内容詳細はこちら
第29回 [2003/07/30]
緊急避妊のお値段

●調査地域 [大学病院付属病院(私立)]
第28回 [2003/07/23]
目指せ、ヤミ堕胎

●調査地域 [大学病院付属病院(国公立)]
第27回 [2003/07/15]
中絶をめぐるわたしの空想

●調査地域 [大阪市]
第26回 [2003/07/08]
イイオサン

●調査地域 [京都市]
第25回 [2003/07/01]
村上節子さん

●調査地域 [長崎市]
第24回 [2003/06/03]
ピルは飲むのか入れるのか

●調査地域 [鹿児島市]
第23回 [2003/06/03]
パイプカットのお値段2

●調査地域 [宮崎市]
第22回 [2003/06/03]
パイプカットのお値段1

●調査地域 [大分市]
第21回 [2003/05/27]
男性用ピルかパイプカットか

●調査地域 [広島市]
第20回 [2003/05/20]
「排卵法」と「粘液法」

●調査地域 [岡山市]
第19回 [2003/05/13]
合掌

●調査地域 [和歌山市]
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