「日本では、少なくとも20人に1人の女性が、性暴力被害に遭った経験があるといわれます」
かつて、ある原稿にこう書いたところ、担当者の女性からご指摘を受けました。
「この根拠を載せたいのです。でないと、あまりに乱暴な気がします。だって、ウチの編集部にもいることになる。これって、多いですもんね」
え、多い? たったの5%よ? 誰が見たって遠慮しすぎでしょう? そりゃあアタシの原稿なんて、オナニーとかアナルとかチンコとかマンコとか、下品で低俗で鬼畜な話題ばかりだけれど、だからって、この数字、そんなに乱暴かしら。
「まったくフェミの被害妄想には困ったもんだ」と思われちゃったようですが、数字の「根拠」は、<東京都における成人女性の性被害調査 東京女性財団助成事業 1998年>で、成人女性を対象とした無作為抽出調査の結果でした。
でもね、数字なんてどうでもいいの。この調査が明らかにしているのは、多くの女性が口を閉ざしているか、封じられているか、もしくは、自分の体験をレイプだと認めたがらないということだから。
もし、あなたや、あなたの大切な友だちが被害に遭ったとしたら。
「そりゃあ、まずは警察でしょう」と警察署に直行するのならそれでいいけれど、躊躇すると思うなあ、わたしだって。加害者の多くが血縁関係も含め顔見知りの人間だから、とてつもない覚悟を要する場合もあるだろう。「キズモノ」に浴びせられる視線は耐えがたいという人もいるだろう。わたしなんか、警察に行ったらどうせ不愉快な思いをするだけだろうなーと想像しただけでウンザリしてしまう。迷うのがアタリマエ、迷わない人なんているんだろうか。
しかし、迷うのは当然なのだけれど、もしも妊娠の可能性があるなら悩んでばかりもいられない。緊急避妊の効果が見込めるのは、現在のところ、120時間以内といわれているからだ。
だからわたしはこう提案したい。迷っているなら、病院に行こう。警察に届けるかどうかは、それからゆっくり考えればいい。
わたしが1年ほど前に取材に行ったのは、性暴力被害者への医療対応と支援で知られる東京・江戸川区の「まつしま産婦人科小児科医院」。医院長を始めスタッフはすべて女性、性暴力被害者への対応も24時間体制で行っている。
医療対応の内容は、緊急避妊、性感染症の検査と予防的治療、ケガの処置、さらに告訴する場合などに有効な証拠の採取が行われる。本人の同意なしに警察に通報されることはない。カウンセリングを受けることもできる。
被害後すみやかに受診することの利点は、緊急避妊だけではない。いざ被害届を提出しよう、刑事告訴しようと腹をくくったとき、受診の記録は強い味方になる。ただでさえ和姦だのなんだのとケチをつけられるチンケな国だからね。せめて、被害直後の記録を残しておきたい。
もうひとつの利点は、医療機関でのウンザリするような出来事、セカンドレイプを避けられるかもしれないということ。被害後に警察に行くと、提携の病院・診療所で診察を受けることになるが、運が悪いとロクでもないことになるらしい(容易に想像がつくよね)。
ならば、先に信頼できる医療機関に行ってしまえばいい。そこで診断書を作成してもらい、診断書持参で警察署に行く。
ただし、警察→医療機関ならタダだが、医療機関→警察だと診察費が自己負担になる。参考までに、まつしま医院では約2万円だという。被害者なのになんで自腹を切らなきゃいけないのさ、という憤りもごもっとも。
ともあれ、重篤な怪我を負っているとか、身の危険を感じているのでなければ、「まずは医療対応」という選択肢もあることを覚えておこう。緊急避妊の処置を急いでいるならなおさらね。
冒頭のメールは、「ウチの編集部にもいることになる」からその数字はおかしいという指摘だったけれど、自分の周囲には被害者なんているはずないと思い込んでいる人は、案外多いのかもしれない。まつしま医院でさえ、性暴力被害を主訴に来院する女性はごくわずかだという。
緊急避妊、妊娠や性感染症の検査、中絶、こうした受診理由のなかにこそ被害者が潜在しているのだという婦長さんのお話を、わたしも心に留めておきたいと思う。
まつしま産婦人科小児科病院
東京都江戸川区松島1-41-29
tel.03-3653-5541
fax.03-3674-8839
http://www.e-doctor.ne.jp/matsushima-hp/index.htm
※東京以外の地域にお住まいの方へ。地元の女性センターの電話相談や、道府県警の被害者支援ホットラインに電話して、理解のある医療機関を尋ねてみてください。 |
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