ここのところ、わたしは興奮しっぱなしだ。きっかけは産経新聞2月17日付けの記事。産経が1面トップに選んだのは、なんと中絶! 堕胎罪! 男女共同参画条例!
スバラシイなあ。他紙が、っていうより世界中がイラク関連の記事に紙面を割くなか、リプロ問題にこんなに関心の高い「クオリティペーパー」がこの国にあったとは、わたしはちょっと感激してしまって、定期購読を真剣に検討しているくらいだ。
「中絶容認」広がる懸念 自己決定権18県が規定 国内法抵触も
男女共同参画社会の推進条例を定めた40都道府県のうち、女性や夫婦本人に出産・中絶の自由などを認めることにつながる「性の自己決定権」規定を何らかの形で盛り込んでいるところが18県に上ることが産経新聞社の調べで分かった。(中略)わが国では母体保護法で@身体的、経済的理由で母体に有害となる恐れがあるA暴行、脅迫による妊娠ムムなどであれば指定医による中絶を一定の範囲で認めている。こうした条件を満たさない場合、胎児の生命権を保護する観点から、堕胎罪に問われる恐れがある。
堕胎罪。忘れてた。日本では今なお中絶は犯罪、処罰の対象なんでした。1948年の優生保護法成立以来ずっと休眠状態だけれど、「少子化」と「右傾化」という2人の王子様の熱いキスを受けて、ぱっちり覚醒しちゃうのも時間の問題かもよ・・・
200X年。母体保護法があっさり改正され、人工妊娠中絶はほぼ全面的に禁止となった。
改正法が施行された20日後には、自宅で堕胎を試みて死亡した30代の主婦の事件が巷間を賑わせた。風呂場で体内にワイヤーハンガーを挿入、子宮を損傷して失血死という、まるで半世紀前を思わせる惨劇だったが、それをきっかけにネット上には「安全な堕胎方法」を解説するサイトが無数に誕生した。今や、堕胎の上手な恋人は、女性たちの誇りであるという。
「堕胎は、最高のコミュニケーション。彼のたくましい腕に身体をあずけてごらんなさい。ふたりの絆は、堕胎によって、より確かなものとなるのです。こんな素晴らしい営みを、これまで他人に任せてきたことが愚かしいとさえ感じられるかもしれません。多少の痛みも、彼の優しい言葉と抱擁によって、甘い思い出に変わるはずです」
より安全な処置を求める女性たちは、海を渡る。ソウルや釜山、上海、グアムあたりが一般的だが、各旅行会社による「欲張り中絶プラン」も、高級志向の女性たちに好評だという。せっかくの休暇と海外渡航ならば、中絶だけではもったいないというわけだ。リゾートでリフレッシュしたい女性には、高級リゾートホテル+エステ+中絶を組み合わせたバリ島プラン、ワンランク上の経験をしたいという女性には、ゆきとどいたケアが評判のスカンジナビア諸国「中絶とオーロラの旅5泊7日プラン」が人気だという。
一方、笑いが止まらないのは製薬会社だ。低用量ピルは生産が追いつかないほどだし、緊急避妊ピルはEU諸国の約5倍もの価格であるにもかかわらず注文が殺到、それらのピルに、産婦人科のクリニックはさらにゼロをふたつ加えて処方している。
ピルの薬局販売はいまだに実現されていない。それどころか、与党に強い影響力をもつ日本医師会は、今回の改正容認の見返りとして、ピルの処方に伴う諸検査の義務化を要求した。開業医にとっては、これまで経営を支えてきた中絶手術が行えないとなると、残る道はヤミ堕胎か、ピルを求めて来診する女性たちの診療費を上乗せすることくらいしかないからだ。
暴行・脅迫による妊娠であれば、合法的に中絶できる。この条項をめぐり、一部の確信犯的なフェミニストたちによって、レイプ概念の再定義が提唱された。すなわち、「すべてのセックスはレイプである」という宣言である。苦境を逆手に取ったこの戦術は、期待された成果には届かなかったものの、狂い咲きのラディカル・フェミニズムがメディアを席巻し、ついにはドウォーキンが『AERA』の表紙を飾るという異例の事態に至り、日本のフェミニズム史に刻まれる皮肉な<事件>となった。
さて、「リベラル派」を自称する多くの文化人らが、中絶の合法化を求めて論陣を張ったが、なかでも過激な発言で耳目を集めたのが、石原慎太郎・東京都知事である。石原都知事は法案の段階から一貫して、中絶容認の立場を表明してきた。
「中絶の禁止? バカな政治家や小役人が考えそうなことだよ。女が妊娠するたびに、責任を取れとでもいうのかね。もちろん、男もそれを望んでいるならけっこうなことだ。しかしね、男の側にだって事情があるだろう? 中絶は、男にとっても重要な権利じゃないかと思うがね」
この発言に、フェミニズムの立場も2分した。「中絶の自由」は、女性と男性、果たしてどちらを利するものなのだろうか。
中絶が困難になってからというもの、男性たちは避妊に対して積極的な姿勢を見せていた。復元可能なパイプカット手術が開発され、普及し始めたことは、男女共同参画の視点からも、さらには女性ばかりが割を食う避妊のあり方に異議を唱えていたフェミニストにも、歓迎すべき副効用と映った。当初は代替手段とされていたアナルセックスも、おおかたの予想に反し、急速に常態化していた。なにより、「男性の中絶権」という不気味な論調は、女性たちを萎縮させるにじゅうぶんだった。
石原都知事は、都立病院において従来通りの中絶手術を可能にする構想を発表し、女性たちをさらに混乱させた。
・・・とまあ、そんな時代も、もう間もなく。中絶の違法性をめぐる議論が再燃するのを、首を長くして待っているわ。 |
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