●ハウスキーパー

一人暮らしをしているときは「家事」のことで悩んだことはなかった。一人分の食事をつくるのは難しいなぁ、という程度で掃除や洗濯にストレスを感じたことはほとんどなかった。

なのに、なぜだろう。もっこちゃんと二人で暮らし始めて3年になるが、年々年々、家事が負担になってきているのだ。一人の時より広い部屋に住んでいること。1.5倍物が増えていること。洗濯物がほぼ二倍になっていること。お風呂は二倍早く汚くなり、洗面所も自分の使い方ではない汚れが発生していること。トイレなどは顕著で、一人の時は一週間に一度くらいの掃除で充分だったけれど、今は毎日しないと気持ちがよくない、という状態などなど。

家事が増えている。さらに家事をやればやるほど実感するのだけれど、家事は二人で分担すればいい、という単純なものでもないのである。家事にはむちゃくちゃ”クリエイティブ”な才能と、”合理的”な志向性と、”前向きな”姿勢と、”ありあまる体力”が必要なものなので、平等に負担することはとても難しい分野なのだ。
で、私たちはいつも、どちらかがより多く負担をしているような気分になっている。たいていのことで気があうもっこちゃんと私がケンカする理由は、ほぼ100%家事問題だ。「洗濯もの、たたんでよ。私、干したんだからさ」と私が言うと、ふとんとふとんカバーにもみくちゃにされているもっこちゃんが「私、今、ふとんカバー取り替えてるんだから!」と怒りだす。
余談だが、ふとんにふとんカバーつける家事って、家事の中でも相当に体力と知力を使う高度な技じゃないだろうか。私は四隅をしっかりヒモで結びたい方だが、これが正確な位置に取り付けられていないと最初からやりなおしという悲惨な状態になる。一回で全て正確に取り付けられる回数は次第に増えているが、それでも最低20分はかかる。一人暮らしの時、シングルのふとんではこういうことはなかった。今、キングサイズのふとんでほぼ正方形というのも、難易度を高めている原因だろう。ちなみにもっこちゃんが四隅をヒモで結んだことはなく、さらにふとんカバーに対してふとんが菱形に収まっているということはしょっちゅうである。そしてそういう結果に対してですら30分はふとんとふとんカバーと格闘したりしているのである。

家事が好きとか嫌いとか、そんなことを言いたくはない。好きとか嫌い以前に、やらなくちゃいけないことであり、そしてやらなくちゃいけないことを、「どの程度まで真剣にやるか」というのが、家事のクォリティの問題なのである。いい加減にやると、気持ちが悪いのは自分の生活だし、一生懸命にやると疲れすぎるという。難しい家事加減。モッコチャンも私も仕事で平日は洗濯機のボタンを入れることすらおっくうになっている。髪の毛のはりついた白い洗面所はイヤだなー、と思いながら、あまりそこに神経を集中したくないような気分で、家事が増えている、困った、という気分にまた戻るのである。

そんな私が最近、真剣に考えているのは、「ハウスキーピング」のサービスである。増えているのだそうね。家政婦とは言わないハウスキーパー。週に一度か二度、アイロンかけたり、水回り掃除してくれたり、床拭きしてくれたり、食材を買っておいてくれたりする仕事。「週末に家事だけでおわるというのがイヤだという人に向いているよ。平日は仕事で疲れて家事できないでしょ? やった方がいいよ」と、すでにハウスキーパーを雇っている知人が熱烈に薦めてくれたのだ。ふーん、そういうのもあるのか、と今いろいろと検討をはじめたところである。だいたい週に二回来てもらって月に5万円程度というのが平均価格のようである。モッコチャンと二人だったら出せない額じゃない。さて、どうしようか。ハウスキーパーをお願いすることを、「家事をアウトソーシングする」と言うらしいが、家事をアウトソーシングしたら、モッコチャンと私は家事問題から解放されるだろうか。その前に、どの程度、私は解放されたがっているのか。

オリンピックで金メダルを取った男の選手(柔道だったか?)が、試合直後に妻と娘の名前を叫んだという。支えてくれてありがとう、という感謝の叫びだったとか。その記事を読んで思ったのは、この男は、柔道だけに専念できたのだろうな、家事などに患わされない生活を送ったのだろうな、というようなことだった。だからこその感謝であろう、と思った。一方、「ママでも金」を目指したやわらちゃんはどうだったのだろう。ずいぶん前、ご飯をつくり、掃除をし、子育てをしているやわらちゃんの様子が雑誌で書かれていた。母乳にもこだわり、どんなに練習がきつくても時間がくれば乳をあげていたそうだ。やわらちゃんの銅メダルを祝して、どこかのテレビ局のアナウンサーが
「女性として、母親として、励みになる」
と言っていたが、どうなんだろう。本当にそうなんだろうか。私が「完璧な妻と母と仕事人」を目指す女の一人だったら、
「女性として、母親として、くじけそうになる」
と思うと思うけれど。だって、金メダル目指してたのに、その実力は本来あるのに、叶えられなかったのだから。男のように仕事に専念できなかったやわらちゃんは、いったい何に囚われていたのか、ということの方が気になるじゃないか。やわらちゃんは、ロンドンを目指すと公表している。やわらちゃんにはハウスキーパーとベビーシッター5人くらいつけて、本気で金メダルをめざじて欲しいと思うけれども。


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[2008/08/26]
ハウスキーパー
[2008/08/20]
オトコジャパン
[2008/08/10]
お久しぶりのご挨拶。
[2008/05/30]
女の罪、男の罪
[2008/05/19]
母としてのわたし
[2008/04/30]
運動と嘘
[2008/04/22]
掃除機ロボット
[2008/04/09]
深夜の病院で
[2008/03/22]
ドラマ「斉藤さん」
[2008/03/21]
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