●韓国で観た「フラガール」

韓国にいる。雨女の名に恥じず、韓国に着いた日は雨、そして雪、さらに木枯らし。痛いくらいに寒いけど、キムチとスープとオンドルですごく元気だ。これから3週間、午前中は語学学校、午後は取材やアダルトグッズ関係者との打ち合わせ・・・という日々を送る予定。

さて。韓国生活三日目。明洞にある映画館で「フラガール」、観てきた。やっているんだよ。韓国でも。

それにしても韓国人はせっかちだ。電車の扉も人が乗り込んでいる最中に容赦なく閉まる。一人が挟まれるんじゃないよ、5人くらいがいっぺんに挟まれるんだから。人を挟んだドアは弾かれるようにまた開き、その隙にまた10人くらいが電車に押し入る。道もすごい。横断歩道がない道路を横断しようと試みたが、すぐに無理だと分かった。赤信号だからこそ、というような調子で猛スピードで大型バスが走ってきたりするから。極めつけは空港のケータイレンタルの会社。契約書をじっくり読んでいたら「ダイジョウブデスカラ」と無理矢理取り上げられ、サインを迫られた。とてつもなく危ない契約をしてしまったような気になるが、相手はただ待ちくたびれてイライラしただけらしい。

そんな韓国のリズムにひー、と腰が引けながらも楽しんでいるのだけれど、映画館でのせっかちムードは、ちょっとどうなっているのん、と言いたくもなっている。一カ所でしか見ていないので、決めつけるのもなんだけれど、予告編がないのはいいとして、クレジットが流れた瞬間に会場の明かりがつくのは・・・いったいどういうこ!? 余韻っちゅーもんはないのか。

さらに。ここからは「フラガール」を見た人にしか通じない話になってしまうが。せっかちムードのおかげなのか、「フラガール」自体も、かなりカットされていた。カットされたところをあげると。

・松雪泰子がゲロを吐くシーン。
・松雪泰子とバスに乗る炭鉱夫たちが出会うシーン。
・松雪泰子に岸部一徳が切れるシーン
・松雪泰子に借金取りが訪れるシーン
・松雪泰子が東京に帰ろうとする日、岸部一徳がお別れを言いに来るシーン
・松雪泰子の借金取りを豊川悦治が追い払うシーン。

そう。韓国の「フラガール」、松雪泰子さんのシーンがほとんどカットされていた。ということはつまり。主人公が松雪泰子さんではなく蒼井優さんになっているのだった。なぜ? 「若くない女はいらない」「若い娘が主人公の方がいい」ということか?  分かりかねる・・・と歩いていたら、駅の売店で蒼井優さんが表紙の映画雑誌を見つけた。パラパラとめくってみたが、松雪さんの姿はどこにもない。

韓国に来る前、韓国人の友だちに
「韓国の女の人、むちゃくちゃ元気だよねー。その元気の源を知りたいです!」
なんて言った時、一蹴されたことを思い出した。
「それよりも、きっといかに韓国が男社会かってことの方が目につくでしょう」
それは呪い? というような調子で。

若い女子がひたむきにフラダンスを踊る物語になってしまった韓国の「フラガール」。
映画館から出て下宿先に戻る道。だんだんと大きな疑問と悔しさのようなものがわきあがってきた。

松雪さん演じるフラダンスの先生が、「暗い」過去を持ちながらも炭鉱の町に自分の居場所を見つけてゆく。物語の核はここにあった。それは、「女が一人で生きて行く。やりがいのある仕事と、暖かい女との交流を持ち、一人で生きていく」という強いメッセージになっていたのだ。だからこそ、この映画、多くの女の共感を得たんじゃないかと私は思っている。「働く女が一人で生きる」ことを、これほど応援している映画は実は、今までの日本の映画でなかなか見つけることはできない。それほどの、革命的な映画なのに。その物語がスッポリ抜けてしまった韓国版は、ただの感動物語になっていた。

ひー、改めて怒りが沸いてきた。繰り返し言おう! 「フラガール」が素晴らしかったのは、若い女子だけが活躍するのではなく、様々な世代の女たちが、様々な世代に縛られながらも自分の足で、自分の心を中心に置き、自分の頭で、自分の手で生きている物語があったからだ。30代以上の女優が活躍するのが難しい日本で、この映画は、新しい可能性を見せたからだ。どーなってんだー、監督よー! なんであんなにカットしたんだぁ! 韓国文化に合わせたってことかぁ? 誰の許可でそんなことしてんだぁ! と・・・だんだん気分が荒れてくる。

映画館を出る時、涙に溢れて動けない女子をみた。そばに行き、これはこれだけの映画じゃないのよ! ぜひDVDをかってね、とまるで映画関係者のようなことを言う自分を夢想して(それだけの語学力があったら、絶対に言ってた)、歯ぎしりしながら電車に乗り、扉に挟まれそうになり、そしてグツグツと熱いサンゲタンを食べた。カッカカッカとお腹が熱くなり、歩き方もなんだかカッカカッカとせっかちになっているように思った。悔しいなぁ、なんだよなぁ、なんでかなぁ。


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男女平等というルール
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