●都知事選 オヤジとの会話

前回、韓国で日記をつづってゆきます・・・なんて書いたばかりなのに。もう、日本に帰ってきてしまった。あんまりにも韓国での日常が忙しすぎた。午前中は韓国語の語学学校。午後は毎日のように誰かと会ったり、取材をしたり、取材の下見をしたり、芝居を見たり、映画を観に行ったり。さらに学校で出る大量の宿題をマジメにやっていた。「一日」というものに、ついて行くだけで必死だった。ギリギリまで起きていて、あっという間に寝た。そんな三週間だった。日記を記す余裕・・・ゼロでした。

で。東京に戻ってきた。空港までモッコちゃんが車で迎えに来てくれて、帰りに二人で新橋に焼き鳥を食べに行った。新橋と言えば、オヤジ、オヤジと言えば焼き鳥、焼き鳥と言えばネギマにレバー。食べよう食べようと、久々の東京での食事を楽しんだ。そして、酔っぱらったついで、久々に会ったニッポンチンコオヤジと、お話などしてしまったりもしたのだ。「外国」から帰ったばかりは元気だからねー。
新橋の焼き鳥屋で飲み食いしているオヤジたちに、聞いてきたよ。都知事選のこと。

そう。東京に戻ってきたら、都知事選だったのである。
私は、石原慎太郎が風呂で息子たちにチンコをバーンと見せ、「これが男だ」みたいな教育をした・・・というエピソードを読んで、テレビで石原家の人々が出るたびにチンコを想像する病気になって困ってしまっている。なもので、もう、石原都政が4年続くとなると、気が狂うのではないかと思う。そうでなくてもチンコに溢れている社会だというのに、これ以上チンコ臭い社会はごめんなのよ。という思いで、でぇ、オヤジよぉ、ビール飲んで、ササミ食ってるオヤジよぉ、どうなの? 都知事選、おっさんは誰入れるの? と聞いてみた。

面白かったんだなぁ。これが。
オヤジたちは言った。
「フィリピンパブがつぶれている! 石原のせいだ」
「フィリピン人を返せ! フィリピン人の仕事を奪うな!」
「俺のマリアちゃんを返せ!」

石原がつぶしたものはたくさんある。つぶそうとしているものもたくさんある。
新宿歌舞伎町の魑魅魍魎。新宿二丁目の心地よさ。女性センターの未来。障がい者の人格。フィリピン人のお店。外国人の働き口・・・・。
石原が都知事になってまずしたことは、銀座に戦車を走らせることだった。私はこれ以上ない力で、それをガマンした。そして石原は女性財団をつぶした。福祉を切り捨てた。自分の意見を言っただけの学校の先生を処分した。ガマンできなくても、ガマンするしかなかった。しかーし、もう、ガマンできないじゃないか、オヤジ! そうだ! フィリピンパブのためにも、石原に一票を入れるのはやめようよ。私はオヤジの肩を叩いた。

「でも・・・」
とオヤジは言う。
「他に入れる人、いない・・・。誰がフィリピンパブを復活させてくれるのだろう?」
ふと店に静かな空気が流れた時、それまで黙っていたカウンターのはじで飲んでいたオヤジが言った。
「あんたらには悪いけど、オレは石原派だな」
おっ! いいねぇ、反対勢力! みんな反石原で盛り上がっていたのに、敢えて出た! 石原支持! 私は聞く。
「ふーん、なんで?」
オヤジは答える。
「石原しかいないからだ」
答えじゃねーよ、それは。私は聞く。
「だから、なーんで?」
オヤジは答える。
「石原しかいないんだ」
「だから、なーんでだって、聞いてんだよっ」(酔っぱらいはこういう時に便利ね)
「石原しかいないんだぁ!」(酔っぱらいはこういう時に迷惑ね)

よくよく聞くと、そのオヤジ、東京中心で生まれた江戸っ子アイデンティティ100%の40代後半。オレの東京は格好良くあってほしい、のだそうだ。外国人や女や思想的な教師に肩を持つのではなく、オレはよぉ! な気持ちを満足させてくれるさらに強いチンコがほしいのだそうだ。そうは言ってないけど、そうとしか聞こえない言いよう。石原が一番東京を分かってる。かっこよくて、行動力があるとかなんとかさ。確かに石原の傲慢なチンコぶりは、「東京 イズ ナンバーワーン」な傲慢な市民たちの自尊心を満足させるのかもなぁ・・・。ふーん、思わずうなづきそうになりつつも。しつこく聞いた。

「石原のいばりくさったしゃべり方とか、気にならないのん?」
どうだオヤジ、これには返事を窮すのではないか? 私は得意気になったがオヤジは言い放った。
「そんな風に(石原を)みたことない!」

焼き鳥屋でのレバ刺しは、プルプルと新鮮で歯を立てると舌の上でプチンとはじけた。おいしくてしあわせ。そして、そのオヤジとの会話は韓国人とものすごーいつたない韓国語で会話をしている時よりも、ずっと外国に来ているようなカルチャーギャップいっぱいで、私はずいぶんと楽しく酔っぱらっていた。おいしく、楽しい会話ねー。笑っていたら、楽しんでいる場合じゃないよ、とモッコちゃんに怒られた。石原都知事、まだまだ根強いチンコファンがいるようだ。さて。どうすれば石原都政を終わらせられるのか。急に眉をしかめてみた。

ねぇオジサン、石原にあんたを投影する気持ちはよく分かるよ。だってオジサン、「オレなんてさぁ・・・」と開き直った諦めに支配されているもんね。40代だというのに”深み”というものを一切感じさせない用心深い生き方をしてきたチンコですものね。平らな表情をしたオジサン。石原こそが、オジサンが東京人である、男である、日本人である、という自尊心を満足させるてくれるんだと思うよ。石原の威張りくさったしゃべり、まねしてみたいんでしょう? 

でも、そんな自尊心、本当はオジサンに何も残さないよ。残すのだとしたら、さらに平らになるんだろう、その表情だけだよ。だったら、フィリピン人に仕事やろうよ。ちなみに私、バイブ屋なんだけどさ、もっと楽に仕事したいんで石原じゃ困るんだよ。それにねぇ二丁目をつぶそうとするの、おかしいでしょう? オジサンだって歌舞伎町行くでしょ? ねぇ、おいよー! 戦車じゃなくて、地震対策もっとしっかりやってほしいでしょ? オジサンちは、地震来たらどこに逃げるの? こんな狭い新橋の街で、酔っぱらいはみんな死ぬしかないの? ねぇ? オジサン、あんた、真っ先に死ぬよ。

と、そんなことをブツブツ言っていたら、殺されるからっ! とモッコちゃんにせき立てられて席を立った。なんだか、東京にいるようで、東京にいないみたい。都知事選に関わっているようで、全く別の世界のようで。でも、石原のチンコくささが消えるこれが「チャンス」だというのならば、まともな候補者に一票を入れなくちゃと、強く思うよ。


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[2008/09/24]
男女平等というルール
[2008/09/17]
ワガママなわたし
[2008/09/09]
女の候補者
[2008/09/02]
セックス・アンド・ザ・シティな夜。
[2008/08/26]
ハウスキーパー
[2008/08/20]
オトコジャパン
[2008/08/10]
お久しぶりのご挨拶。
[2008/05/30]
女の罪、男の罪
[2008/05/19]
母としてのわたし
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