友だちからは爺の続きを催促されているのだけれど、爺の世界は本当にややこしくて、わけがわらんので、ついつい腰が重くなる。
最近は「ヤフオクやりたいです」というメールが来る。エロ本会社を知人の娘に紹介したことで激しく動揺した爺も、少しずつ気を持ち直してきているのか、というより、他人の紹介よりも自分の生活、ときちんと目覚めたのか。今、爺はヤフオクに夢中である。どうもその世界では、自分が所有している韓国語のカセットやCDやポスターが売れるらしい、と気がついたようなのだ。
そんな爺とのエピソードはおいおい・・・。(なんだかね、爺のこと書くと、疲れるのよね。なぜか)
というわけで、フランス大統領選挙である。
ロワイヤルさんが大統領になるんだろうな、それに決まっている、それ以外ないじゃんっ、という不思議な確信を持っていたので、逆にまるで関心がなかったフランス大統領選挙。フタをあけてみたら、ディズニーの絵本に出てくる悪い魔法使いみたいな男・サルコジが大統領になっていた。フランスのこと、知らなかったんだなぁ、私。時代のこと、分かってねぇなぁ私。確信なんてあてにならんなぁ、私。と、政治のことはよく知らないので、すべて「私は分かってない」ですませていたのだけれど、さっき、NHKBSで放送されたフランス大統領選挙のドキュメンタリーを観ていて、猛烈に腹が立ってきた。大統領選挙、今更ながらにロワイヤル氏ーーーーーーーーー!!! そんな気分にさせられた番組だった。
番組では、選挙数日前に行われたテレビ討論の様子が流れていた。
大変な視聴率だったというこのテレビ討論。この討論が、選挙の結果をある程度左右したのではないか、と思わせるような内容になっていた。というより、実際このテレビ討論で、魔法使い男側に勢いがついたのだという。
どんなテレビ討論だったか。
一言で言えば。
魔法使いが、汚い魔法を使ったのだった。男がよくやる、汚い魔法を使ったのだった。そして、その魔法はものすごーくよく、効いた、のだった。
こんな風に。
魔法使い男は冷静を装い、鼻をピクピクさせながら、薄汚い笑みを浮かべ(あー、本当に下品な顔してんだもん!)こう言った。
「私が大統領になったら、障がいを持つ子供が学校に通うための予算を出します!」と。
ロワイヤル氏はこのサルコジの発言に激しく反応した。
「恥を知りなさい!」
ロワイヤル氏が怒るのは当然なのだ。
「障がいを持つ子供が学校に通うための予算」はまさに、ロワイヤル氏が教育相であった時に計画したものだったのだから。対して、魔法使いサルコジの党は徹底して福祉を切り捨てる政策を推し進めてきた。選挙のために耳に優しい言葉を投げかけるサルコジに、ロワイヤル氏は怒ったのだ。それはパフォーマンスというよりは、誠実な真っ直ぐな怒りに思えた。
しかし、これは完璧に魔法使いの罠であった。
「恥を知りなさい」
と叫んだロワイヤル氏に、魔法使いサルコジは、ニヤリと口をひんまげたのである。そして呪術をつぶやいた。
「落ち着いてください、ロワイヤルさん」
あ。やられた。
その瞬間、全てが決まったようだった。
サルコジは笑みを浮かべていた。完全に勝利の顔だった。
ロワイヤル氏は、本気で怒っていたのだ。サルコジのウソに。サルコジの猿芝居に。
そのロワイヤル氏に「落ち着いてください、ロワイヤルさん」と言ったサルコジ。ロワイヤル氏は誠実であるがために、怒った顔のまま声をまっすぐに出した。
「私は怒っているんです。」
ヒステリーな女であるロワイヤル。
彼女が怒るのは、正当な理由があるからではなく、
感情を抑えることができないからである。
彼女が怒るのは、彼女が女だからである。
彼女が怒るのは、彼女がヒステリーだからである。
これは男の伝統芸である。女が怒る、ことに対して過剰に反応する男たちの技である。私も、何度も言われたことか。「落ち着いて下さい」 痴漢にあって怒る私に。同級生男の女差別発言に怒る私に。フェミフェミ言う私に。私から言わせれば、「あんたが、落ち着け」なのだ。「落ち着いて、私がなぜ怒っているのか、きちんと聞く耳を持て」と。それだというのに! 世の中には、まだこの魔法が流通していたのか。というか、それってやっぱり日本だけじゃなかったのかーー!
魔法使いの狙いは怖いくらいに、決まった。
番組が終わった後、「終始冷静だったサルコジ」の支持率があがったのだから。
ロワイヤル氏はどのように対応するべきだったのだろうか。
テレビを消した後、もんもんとしてる。
それにしても。行動力があることを自慢し、発言が単純で、声が大きい男が目立つ時代、いつまで続くんだろう。かさばる男が増えて、世界が狭くなるような気がしてならない。力のある立場につく男の顔が似てくると、ろくな事がなさそうだ。「落ち着いて」、と、イヤな男に言われるほど、息苦しい世の中はないからね。ええ、私は、怒ってるんです。