小学6年生のある日。同じ班ごとに机を寄せ合って給食を食べていた時のこと。小田という男の子が他の男子二人にこう聞いた。
「ねぇ、戦争ってどう思う?」
はっきり憶えてる。”社会”で「戦争」のことを習った直後の給食だったから。戦争はいけない、二度としちゃいけない、そんな気分で盛り上がっていた私だったから。なのに、いったい小田、それ、どういう質問だよっ。さらに、なぜ女子に聞かないんだよっ! キッと私は小田をにらみつけた。しかしその直後、驚くべきことが起きた。なんと! 優等生の加藤君がこう答えたのだった。
「かっこいいと思う。」
その瞬間、他の二人の男子がはじけた。
「オレも!!」
大山君が叫んだ。小田は本当に心から満足したように笑った。
「やっぱりーーーーーーーーーー?! よかったーーーーーーーーーーぁ! オレだけじゃないんだぁーーーーーーーーーーぁつ! 戦争って、いけないことかもしれないけど、カッコイイヨネー!!!」
私は慌てた。正義の女子として慌てたのではない。加藤君のことが好きだったから、慌てたのだ。「戦車、かっこいいよなー」「ゼロセンとかさー」「戦艦ヤマトがさー」 戦争ゴッコと戦争の区別がつかないなんて・・・加藤君てバカだったんだ・・・と私は落胆した。でもまだ好きでいたい、とか思っている自分を気持悪いものに感じた。そして、「女子には分からないだろうけど」というような優越感たっぷりな調子で盛り上がる小田への憎しみが沸いた。バカな大山は視界から完全に消した。あの日の給食。あの時の自分の感情。忙しい自分の気持ち。とてもよく憶えてる。
そんなことを急に思い出した。
小池百合子の写真を見たからだと思う。
白い制服をキチンと着こなした男たちが一列に直立不動する前を、小池百合子防衛大臣がキリリと歩いている。小池氏、防衛省に初登庁の写真。自身を律するかのような黒いパンツスーツと、微動だにしない男たちの白い制服のコントラストに、目を奪われた。規律に100%従うことが強いられる抑圧的な世界でしか生まれないエロスの匂いとでもいうのかしら。なんだか惹きつけられるゎ・・・ああ・・・。と新聞を眺めていて、ふと、ハっと目が覚めた。罠だ、これは罠だわ! 小学六年生のあの日の給食だわ!
自分を制するようにモッコちゃんに話しかけた。
「これじゃぁ安倍政権、もりかえすよ! だって、かっこいいもんこの写真! 国防の仰々しさ、国防の華々しさ、国防の勢い、国防の尊さ、なんだか全てを表現しているようだよー! この『栄誉礼』という儀式見てご覧よ! ドラマチックだよ! たかが大臣が初登庁するってだけで、ここまで金と労力を使うのか? 大蔵省でやるか? 厚生労働省でこんな入場行進やるか!? どれだけカッコイイかってことをアピールしてんだよ! 心配だ! 罠だ! テレビや新聞も、こんなカッコイイ場面を流すなんて、どうかしてる。自民党の宣伝じゃん! きっとだまされるぅー!」
まくしたてたらモッコちゃんが怒った。
「そんなこと思うのは、制服マニアなアナタだけだよ! 国民はみんな怒ってるんだ! 自民党に怒ってるんだ! しかも、こういうのカッコイイなんて不謹慎だよ!」
その言葉に私はもっと心配になる。この国には制服マニアが多いのだ。「カッコイイ」ものに弱い人が多いのだ。「華々しい」ものに目を奪われるのが人の心というものなのだ。そして、不謹慎とかそういうレベルで物事を考えるから、サヨクは弱いのだ。
そうモッコちゃんに言ったら
「国民はそんなにバカじゃない」
と怒られた。
「戦争って、いけないことかもしれないけど、カッコイイヨネー!!!」
小田君の声がよみがえってくるような気分になる。
改憲を目指す安倍政権は、ああいった「防衛省の華々しさ」のようなものを見せつける感じで、「戦争はイヤだけど、攻められたらやり返さなくっちゃ!」「どーしても必要な戦争ってあるよね!」「自衛隊改め自衛軍が、これからのヒーローです!」な調子を目指しているんじゃなかろうか。そういえば、自衛隊は「広告」にとてもお金をかけていると聞いた。カッコよく若者受けするような調子の広告づくり。中身じゃない、イメージだけが必要なのだ。誰にでも分かる、それこそ子供に一番通じるようなカッコヨサ、というものがどんどん「目に見えて」増えていく。
「だから、誰もカッコイイなんて思わないから!」
モッコちゃんはそう言い。カッコイイと思う思わない、は、思想じゃないよっ! と私は言い返す。
なんで、安倍政権のことで、ケンカしなくちゃならんのか。