●愛知県での強盗殺人事件。

愛知県の強盗殺人事件。三人の男がインターネットで「強盗」目的で出会い、夜道で女性を襲い、ハンマーで殴り殺し、7万円を盗んだ。

男の年齢を知り、驚いた。40歳。36歳、32歳。
10代の男たちの犯行だったら、もしかしたら既視感のあるような犯行のように思ったかもしれない。若い男たちが集団で女を襲う事件を、私たちは何度も目にしているから。
それでも、この男たちは・・・。いったい、なんなんだ。私はアホウのように、呆然としてる。いったい、なんなんだ、という思いが私の全身を包むような妙な浮遊感で、いったい、この男たちは、なんなんだ。

男たちには金がなかった。一人は新聞勧誘員で他の二人は失業中だった。40歳、36歳、32歳。
ここでも私は、いったい、なんなんだ、この社会は、とアホウのように突っ立つ。ニートとか、失業とか、正社員になれない問題とか、私はどこかで20代が直面している社会問題だと思いこんでいたのだと、気が付く。

男たちはキャッシュカードの暗証番号を聞き出すこともせずに、すぐに殺した。サイフの七万円は三人で分けた。サイフに5000円しかなかったとしても、結果は変わらなかっただろうが、いったい、この、あまりにも無意味な殺人は、なんなんだ。殺人という大変な「リスク」と、そこから彼らが得たもの、そんなものを秤にかけるおぞましさを重々承知で言うけれど、あまりにも、考えのなさすぎる犯罪じゃないの。意味がないじゃないの。

無意味、と書いて、じゃぁ、意味がある殺人なんてあるのかよ、と自分で思うが。意味がある、のではなく、加害者には加害者の一方的なストーリーとういものがある。殺人事件が起こるたび、しゃべることのできない被害者の代わりに、加害者の殺人ストーリーを私たちは聞かされてきた。例えば、妹を殺し、強姦し、バラバラにした男の物語を。例えば、夫からの言葉や肉体的な暴力を受け続けたあげくに、ワインボトルを頭にひとふりした妻の思いを。そういうストーリーを事件が起こるたびに、私たちは無意識に受信しているのだ。事件が悲惨であればあるほど、受信しようとする。少しでも理解しようという思いで。

それでもこの男たちの、不気味なくらいの薄さは、いったい、なんなんだ。
新聞記事をすみからすみまで読んでも、男たちの一人がケータイに詳しかったとか、女性と暮らしていたがいつも通りだったとか、親とは疎遠だったとか、そんな話しか出てこない。そして、ただ、金がなく、インターネットで出会った、「ゆきずりの犯行」なのだ、と。

そしてこのニュースは、「インターネットで闇サイトで出会った男たちの事件」として、歩き始めている。大事なポイントは、「インターネットで出会った」ことであるかのように、報道されている。「出会い系」で殺された女がいれば、「出会い系」の危険性が騒がれるのと同じようなテンションで、インターネットの「恐ろしさ」が無意味に喧伝されている。

ねぇ、犯罪目的で出会うサイトの存在が問題なの?
ねぇ、犯罪目的でケータイをピコピコいじる行為が問題なの?
ちがーうよー、という身をふりしぼりたいような気持悪さで、だから、いったい、なんなんだー、と私は叫ぶよ。「力が弱い」からと「女」を狙った、いい年をした男たち。

人間には想像力の限界というものが、あることは知っていた。
それでも、正直に言えば。私は「殺人」に関して、想像力の限界を感じたことは今までなかった。殺す人の気持ちが分かる、というのではないよ。どんなに悲惨な殺人事件であっても、「騒いだから殺した」「憎かったから殺した」「女だから殺した」「カッときたから殺した」「言うことを聞かなかったから殺した」「積年の恨みで殺した」の背景を、私は想像した。子供たちをたくさん殺したタクマの事件の時ですら、私は想像した。タクマの父親のインタビューを聞き、タクマ自身の声を聞き、あの男の世を憎む思いを想像した。それが正しいかどうかは別だ。私は私の視線で想像する。だから、怒るし、苦しくなるし、特に女が殺される事件には、想像が膨らめば膨らむほどに息は荒れる。

「力のない女」側にいる者として、「社会的に底辺にいる男たちによる、弱者への剥き出しの暴力」とこの事件を物語ることはたやすい。それでも、意味づけたいとか、背景を知りたいとか、そういうことではなく、どこかお腹の底あたりから不気味な思いとしてわき上がっているこんな言葉を止められないような、そんな感じで私は「いったい、なんなんだー」と動揺しているんだと思う。
「ひどく、なってない? ひどく、なってるんじゃない? 女への暴力、ひどく、なっていたり、しない?」
いつと比べて、どこと比べて、とかそういうことじゃなくて、そういう「感覚」に支配される無力感なんて味わいたくないのに、というような思いで。動揺だ。昨日からずっと動揺だ。


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[2008/09/24]
男女平等というルール
[2008/09/17]
ワガママなわたし
[2008/09/09]
女の候補者
[2008/09/02]
セックス・アンド・ザ・シティな夜。
[2008/08/26]
ハウスキーパー
[2008/08/20]
オトコジャパン
[2008/08/10]
お久しぶりのご挨拶。
[2008/05/30]
女の罪、男の罪
[2008/05/19]
母としてのわたし
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