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「一人暮らしは不便」
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14.06.09 by 田房永子

 


 山手線に乗っていたら、隣にいたマダム2人組の話が聞こえた。
マダムA「うちの息子、今、京都で働いてるのよね。自分で出て行ったくせに、『一人暮らしは不便だ』って言うのよ。こないだも見に行ったけど、洗濯物がたまっちゃってた」
マダムB「家政婦雇うしかないんじゃない」
マダムA「そうなの、それも考えたんだけどね。でもそれはそれでやっぱり大変だからねえ」


 読んでいた本の内容が全く頭に入ってこなくなり、「一人暮らしは不便」というキーワードがグルグルと私の頭の中を回った。一人暮らしの生活はすべてを一人でやらなきゃいけないから、分担できないという点で確かに大変ではある。だけど、そこで「不便」という言葉が出てくるって、凄いな。


自宅にやってきたお母さんに、「いつも家事してくれていたっていうのが一人暮らしして分かったよ。ありがとう」とか「母さんがいないとからきしダメなんだ、俺」みたいなお母さんへの気遣い的な意味と照れ隠しを含めた「不便だ」という言葉だとしても、もしかしたら実際はそう言ってなくてマダムが話す時にその言葉になっただけだとしても、「一人暮らしは不便」という言葉は、強烈な『受け身感』を放っていて、「お母さんに100%家事をしてもらって育ち、自分がやるという発想を全く持ち合わせないまま社会人になり、それでも母親や社会からその思考を肯定されているため、将来も当然のようにその視点で“嫁”を選び、子どもができても勿論自分が家事をするなんて思いつきもせず、だけど会社で上司に『君もちょっとくらい奥さんを手伝ってあげないといかんぞ』的なご指導を受け、上司に『今日もゴミ出ししてきましたよ(笑)』という話のネタ的感覚でゴミ出しをし、俺って仕事もデキるのに家事までやっちゃっててスゲエ、俺スゲエ、こんなスゲエ俺の子育てられてるなんて嫁も幸せだろう、みんなを幸せにしてる俺スゲエ、そんな風に産後もゴミ出しをするようになった以外のことは産前とまったく変わらない生活を送っていると、ある日狂ったように泣き叫んで家事の手伝いを要求してくる嫁、ドン引きしながら渋々皿洗いをし、プライドを傷つけられたような気分になって、仕事と言っては個室ビデオ(男が一人でオナニーができる店のこと)に寄って帰りが遅くなる男」を連想させた。


 さらに続くマダムBの「家政婦雇うしかないんじゃない」発言。このマダムたちにはブレがない。「早く結婚して奥さん見つければ済むんだけどねえ」という言葉は出てこなかったが、おそらくそれは息子が未だ社会人になりたての20代前半だからじゃないかと邪推した。息子が30になって「一人暮らしは不便だ」と言っていたら「早く結婚しなさいよって言ってるんだけどねえ」って言うに違いない、そんで息子が連れてきた彼女に「この子、なんにもできないから、栄養管理とかほんとお願いしますね」とか絶対言う、このマダムたち絶対言うよ!! って頭の中で私が叫び出し、うるさかった。


 そういえば、私も夫の母親から、結婚する時に「食事とか、息子の健康管理お願いします」って沈痛な面持ちで言われて、はあ? って思った。その時ですでに夫は一人暮らし歴20年近く経ってて、私と結婚しなかったらずっと夫は一人で暮らしていくわけだし、夫は私より家事が得意なのに、なんで結婚したからってそこから夫の健康管理が私の仕事になるわけ。勝手にやれよって思った。それに、じゃあ私の健康管理は誰がしてくれるんだって思った。ムッとすると共に、悲しくなった。どうして女ってそんなに他人の健康管理まで担わなきゃいけないって思っちゃってるんだろう。女だって、やりたい仕事があるし、仕事が忙しければ家事なんて手が回らないし、帰りたくない日だってある。どうして男のためにこっちがくるくる回らなきゃいけないんだ。だけどくるくる回るのが当然だってことに未だになってる。


 もし、マダムAの子どもが女だったら、マダムBは「家政婦雇えば」と言うだろうか。絶対言わないと思う。マダムAも「うちの子、『一人暮らしは不便』とか言うのよ。24歳なのに自分で何にもできないの。洗濯物も溜めちゃって」とか言うと思う。「実家にいるとき、教えてあげなかったの」とマダムBは言うはずだ。「そうなの、ちゃんと教えればよかったんだけどねえ、ダメねえ」そう言って娘を家事できる女に仕上げなかったことを自戒するマダムA。そんな会話が副音声で聞こえてきた。


 どんな人たちなんだろう、とマダムたちを見ると、Aは少なくてバサバサしたクリーム色みたいな金髪で真っ赤な口紅をしており、Bは欽ちゃん系のお顔立ちのパーマをかけたマダムだった。Aが手に持ったフェンディのバッグに並ぶ「FFFFFFFFFF」が「不便不便家事する女がいないと不便不便」と言ってる息子の脳内に見えてきて、ゾッとした。


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プロフィール
田房永子
田房永子(たぶさ・えいこ)
漫画家・ライター
1978年 東京都生まれ。漫画家。武蔵野美術大学短期大学部美術科卒。2000年漫画家デビュー。翌年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。2005年からエロスポットに潜入するレポート漫画家として男性向けエロ本に多数連載を持つ。男性の望むエロへの違和感が爆発し、2010年より女性向け媒体で漫画や文章を描き始める。2012年に発行した、実母との戦いを描いた「母がしんどい」(KADOKAWA 中経出版)が反響を呼ぶ。著書に、誰も教えてくれなかった妊娠・出産・育児・産後の夫婦についてを描いた「ママだって、人間」(河出書房新社)がある。他にも、しんどい母を持つ人にインタビューする「うちの母ってヘンですか?」、呪いを抜いて自分を好きになる「呪詛抜きダイエット」、90年代の東京の女子校生活を描いた「青春☆ナインティーズ」等のコミックエッセイを連載中。