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フラリーマンを「GANTZ」で解説する 第2回(全3回)
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18.08.06 by 田房永子



 2015年に発行した私のノンフィクション本「男しか行けない場所に女が行ってきました」の中の「竜宮城風ガールズバー」の章に登場する、「3歳と0歳の子どもがいて妻がワンオペ育児してるのに仕事が終わってもかたくなに帰らない40歳男性」を「GANTZ」で説明してみたい。

 その「帰らない男性」は、夜の6時か遅くても8時には仕事が終わるのにほぼ毎日、終電までのあいだに男友達と飲みに行ったり風俗に行ったりする。周りの人に根回ししてまで、終電まで残業していることを妻に信じ込ませているという。さらにその風俗では風俗嬢から一方的に「気に入られた」ため、お店のサービスとは別に個人的にセックスをしているとも語った。あくまで求められたから仕方なく、意図せずモテてしまい自分でも困っている、という口調。本当に風俗嬢から求められているとしても、それに応えてチンポコ入れてるのは自分なくせに、あくまで受け身な感じ。

 そして帰らない男性は、「毎日終電」と得意げなムードすら醸し出していた。私が「そのあいだ、奥さんはたった一人で子どもの世話をしてるってことですよね?」と聞くと、「俺は本当に苦労して毎日『根回し』を頑張ってるんだよ?!」と半ギレのご様子だった。 本人にとっては、根回しをして終電で帰ることが「男の仕事」とでも言わんばかりの雰囲気だった。妻をあざむき、結果的に育児を放棄するというひどいことをしているのに、本人は妻を愛している、というトーンなのがさらに不可解だった。むしろ愛してるからそうしてる、くらいの感じ。

 「GANTZ」に当てはめるとなんとなくわかる。
 とにかく、「男として妻子を守ること」はこの帰らない男性にとって「家の外で敵と戦うこと」なのである。その敵が大きければ大きいほど、強ければ強いほど良い。ていうか、大きくて強くないとダメ。そうじゃないと自分が大したことない男になっちゃうから。

 だけど今の日本で普通に働いてたら、そんな強靭な敵と戦うことなんてない。新入社員とかだったら会社も「戦い」って感じだけど、40歳にもなれば慣れてるしポジション的にも緩やかだし、基本的に何も起こらないのが普通だ。
 こういう男性は、そこに罪悪感みたいなものを感じるのではないだろうか。
 戦う相手がいないこと、戦いで苦しんでないこと、なんの危険もなく簡単に家に帰れてしまうこと。
 男である自分は、妻よりも社会的に高い位に立ち、妻と人柄を比べても皆から好かれ尊敬され憧れられる人であり、妻より社会人として重要な責務を果たしたい、そうあらねばならない、そうでなければ妻を守れない、と思っている。

 しかし現実は、自分と同じ地位で働きながら家でも家事をこなす妻や、子どもを生むという大業を成し遂げて産休で会社を休み自分の睡眠時間を削って小さな命を守る妻や、専業主婦で自宅を守り家事育児近所づきあいPTAの全てをこなすことでリアルに人間を育てるという責務を全うしている妻のほうが、自分よりもヒーロー度が高いと感じちゃっているのではないだろうか。

 タエちゃんは、GANTZの戦闘メンバーになることはない。着るとものすごい身体能力に変身できるGANTZスーツは着ないのである。もしタエちゃんがGANTZメンバーに入っちゃってスーツを着ちゃったら、もともとかなり強いし、玄野くんの上をいく可能性がある。そんなことになっちゃったら、物語は終わってしまう。あくまでGANTZのトップヒーローは玄野くんであり、「タエちゃんを守る」が主人公玄野のすべての指針だから。タエちゃんに降りかかる苦労は、あくまで玄野がタエちゃんを守るため故に派生する出来事であり、その上でタエちゃんにもやむを得ず被害が出ることもある、だけなのである。

 だから、帰らない男性は、「息抜きしたい」とか「自分の時間を持ちたい」とか理屈を語ってはいるが、自分よりまぶしく輝くヒーロー的な仕事をこなす妻と同じ空間にいるのが耐えられない、という面もあるのではないだろうか。
 そこで理由をつけて帰らない。帰ってこないから人手不足で妻が大変な苦労にさらされているだけなのに、あくまで俺は妻子を守るために外で戦っていて帰るまでに一人の時間が必要なくらい定時までの仕事がものすごく大変で、それによって妻に負担がしわ寄せされているだけ、という風に無意識にすり替えている可能性を「GANTZ」によって感じ始めた。

 玄野がタエちゃんのピンチを助けるときは多々ある。だがそれは毎回本当に絶体絶命のピンチの事態になっている。一番強い玄野にしか不可能なこと、他の誰にもマネできないことをしないと、タエちゃんは助からない、という状況。
 タエちゃんがそこそこ敵と互角に戦っているときに玄野くんが後ろから援護射撃するなんてことはないのである。そんなのヒーローがやることじゃないから。あくまで、誰よりも強いのは玄野だから。

 子どもたちが起きていて、妻がかいがいしく動き回って世話を焼く時間というのはそういう意味では妻が最も強く輝くゴールデンヒーロータイムである。そんな時に帰ってしまったら、自分のヒーローとしての影は薄い。そんなに疲れてもいない仕事をして帰ってきて家事もうまくできない自分は一体、何を守っているんだということになる。おむつ替えとか妻が食べさせた離乳食を赤ちゃんがばらまいた後の床の掃除とか、そんな"援護射撃"だったらやりたくないのである。

 妻のゴールデンヒーロータイムに自宅に滞在するだけで、自分が妻より大変じゃないことがバレてしまう。物語が終わってしまう。だから子どもが寝静まったあとに家に到着する必要があるのではないだろうか。そうすれば、そんなに遅くまで働いていた自分、つまり社会的に求められていて戦ってきたという雰囲気を家の中で保持できる。それでやっと妻の偉大さと相殺できる。

 風俗嬢とセックス、という妻にバレたらやばい「危機」は、奥さんを守っていることにはならないし、むしろ最大級の裏切り行為である。しかし「ヒロイズム的帰らない男性」の中では、その「危機」は戦いの中で起こってしまったことなのである。だから「向こうに気に入られて仕方なく」という自分の意志ではないというところを強調する。
 「危機」は「戦ってる感」を煽る。危機があるほど、彼らの中では「妻を守っている」感を達成できて、より妻への愛が深まるシステムだ。妻側から見たら完全にねじれているのだが、ヒロイズムにのっとれば矛盾はない。

 この帰らない男性は、「妊娠中から妻とはセックスしてない」と言った。妻はしたいと言ってくるが拒否しているという。理由は「子どもが出てきたアソコは怖いから」。どういう意味なのか分からなかったが、男性の口調からして、「そんな神聖な場所に恐れ多い」的な敬意と、「もう性的な対象ではない」という侮蔑を同時に感じた。

 どっちにしても私は女として、同じ経産婦として、その理由に怒りを抑えることができず、苦言を呈した。
「私もアソコがボロボロになってすごく傷ついたよ。アソコが怖くなってるのは生んだ本人なんだよ。夫に、もう女として見られないんじゃないかっていうのもあるし、だから、夫が『なんでもないよ』って顔していつも通り欲情してくれてやっと安心できるんだよ」
 うまく伝えられたように思ったが、男性は「いやあ、無理無理、こわくて触ったりできない」の一点張りだった。

 これも「GANTZ」に沿って考えてみると、「子どもが出てきたアソコは怖い」というセリフに隠された気持ちが読めるような気がする。体を張って子どもを生むという偉業を成し遂げた妻のヒーロー性を象徴する、傷ついたアソコ。輝かしすぎて、そこに立ち向かうのが怖い、ということではないだろうか。自分のたいしたことなさ、に向き合わなければならない時間だから。

 さらにこの帰らない男性は、「男友達と入ったキャバクラでぼったくられて一人8万円取られた」というエピソードを武勇伝っぽく語っていた。ぼったくりに遭って妻にバレないように金銭をやりくりするのも「戦い」「危機」とカウントされるので、結果的には「妻子を守ってる俺」につながり、だからこそ堂々と人に話せるのではないだろうか。

 この帰らない男性に話を聞いた日。帰らない男性がいつも飲んでいる男友達のメンバーの飲みの席に、私が混じったという形だった。こういう話を普段からしているという。つまりそのメンバーの男性たちに向けてだと「俺はこんなに戦っている(=妻子を守っている)話」として成立しているのだと思う。意識的にではなくても。

 「家にまっすぐ帰らないで家事育児しないことが自慢の男性」を嫌悪し避ける男性はたくさんいて、何人も会ったことがある。彼らは家事育児を特別なことではなく当たり前に行う男性たちである。もともとそういう性質の人もいれば、ヒロイズム的帰らない男性だったが産後の妻の異変に気づき心機一転「当たり前男性」になった人もいる。彼らは、帰らない系男性の飲み会に行きたくないし、行かなくなると口を揃える

<第3回へ続く>

プロフィール
田房永子
田房永子(たぶさ・えいこ)
漫画家・ライター
1978年 東京都生まれ。漫画家。武蔵野美術大学短期大学部美術科卒。2000年漫画家デビュー。翌年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。2005年からエロスポットに潜入するレポート漫画家として男性向けエロ本に多数連載を持つ。男性の望むエロへの違和感が爆発し、2010年より女性向け媒体で漫画や文章を描き始める。2012年に発行した、実母との戦いを描いた「母がしんどい」(KADOKAWA 中経出版)が反響を呼ぶ。著書に、誰も教えてくれなかった妊娠・出産・育児・産後の夫婦についてを描いた「ママだって、人間」(河出書房新社)がある。他にも、しんどい母を持つ人にインタビューする「うちの母ってヘンですか?」、呪いを抜いて自分を好きになる「呪詛抜きダイエット」、90年代の東京の女子校生活を描いた「青春☆ナインティーズ」等のコミックエッセイを連載中。