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捨てていく私
「本屋に求められるもの」
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17.03.13 by 茶屋ひろし



通勤途中の交差点で、自転車を止めたときに、いつも見ていたタワーマンションの工事がいつのまにか終わっていて、夜帰るときに見上げると、窓のいくつかに明かりが灯るようになっています。まだ全体の三分の一くらいです。
梅田からは目と鼻の先という立地もあって、結構お値段するんだろうな、と思います。限られた土地の中に百戸くらいの家をつくってしまうんだから、一戸あたりが安くなるということはないのかしら。土地の値段って不思議です。


家の近所では駐車場が増えています。建物の解体が終わって地面がならされると、そこにあったものがどんな形をしていたか、すぐに忘れてしまいます。
シャッター通りじゃないけど、駐車場が多くなると街並みが殺風景に見えます。


実家に帰るまでの沿線には、今にも崩れ落ちそうな空き家が窓からいくつも見えます。屋根や壁に穴が開いていたり草が生えていたり。
人が出入りしなくなった建物は、急速に劣化するような気もします。
近くに住む人たちにとっても、古い家やビルが放置されているよりも、駐車場になったほうが安心かもしれません。見晴らしがよくなるともいえます。
今まで陽の当たらなかった隣や奥の建物の壁が見えるのは好きです。


そんな駐車場の横に目いっぱい土地を活用して建てられた平屋があって、庭がないせいか、そこのおばちゃんは家の前の歩道で野菜を栽培しています。
家の前と道路側に、底の深い大きめのプランターや鉢をいくつも並べて、夏はトマトになすにオクラと豊作です。季節ごとに中身の土をすべて歩道に出して天日干しします。もちろん、街路樹の根元にもすきまなく何かを植えています。プランターでは今は水菜などの菜っ葉類を育てています。とても本格的なので(そして美味しそう)、誰もとやかく言えないような存在感です


たとえば目の前の駐車場がぜんぶおばちゃんのモノになったら、おばちゃんはそこを畑にするだろうか、と思いましたが、それはそれで駐車場にしておくかもしれません。


前回のコラムでは作家の百田尚樹について少し触れて終わりましたが、先日知人から、「百田尚樹は売れているの?」と聞かれて、「売れています」と事実をお答えしました。『永遠のゼロ』という文庫本はこの4年間くらいで、上巻だけで680冊売っています。他の過去のタイトルも含めて、今でも週に4、5冊は売れるので、驚異的な人気と言えます。ウチのような小さな本屋でこれですから、全国規模では何冊になりますか。これを「売れている」といいます。
「もっと他の人のが売れてくれるといいのにねぇ」と彼はその現状を憂いました。


先日はお客さんに、「僕はこの店が好きでずっと通い続けています。百田尚樹の小説はかまいませんが、歴史修正主義の内容の本を平積みにする必要はありますか。僕はその状況がとても不快です」と言われました。


「南京大虐殺はなかった」「従軍慰安婦のほとんどが日本人女性」「強制はなかった」「朝日は反日新聞」「沖縄二紙は潰れろ」「共同通信社は反日左翼メディア」「中国が攻めてくる」「北朝鮮が攻めてくる」・・


小説以外に出している対談本やエッセイ集では、それを裏付けする資料が記載されていない、このような発言がよく出て来ます。新書や単行本で次々出版されるものを平積みしていることへの指摘でした。


「売れるから」「本屋だから」とだけは言えない空気だわ・・と、言い淀んでいたら、「こういうことをほかのお客さんから言われませんか」と言われて、「あんまり・・」と答えると、「そうですか」と彼は、ぷいっと出て行きました。


去年は、百田尚樹じゃないですが、「こんな本を高校生が読んで騙されたらどうするの」とおじさんに言われました。日本国憲法について書かれた本でした。


もし一人でやっている店なら、私だって置きませんよ。けれど、これが今の社会の縮図なんだよな・・と「一般書店」としてはそう思います。


だまされる、とか、悪影響を受けるから・・という批判は少しナイーブな反応のようにも思えます。上から目線ともいえるかも。
今はネット社会との相乗効果で、それが嘘でも現実になってしまう世の中です。第一、現政権自体が私にとっては悪夢のようです。


百田尚樹の気になる発言に対して、ひとつひとつ検証してくれるようなポップで売れる本をどこかつくってほしいと、他力本願で思います。
レジでは、スタッフの子に向かって、「中国なんてつぶれてしまえばいい」と力強く言い放つおじさんもいます。彼女は笑って流します。
『中国と北朝鮮は攻めてこない』というテーマはどうでしょう。


「反日」や「自虐史観」といった言葉を繰り返す百田尚樹の言説では、彼自身が「左翼メディア」の被害者であるといった立場を取り続けています。
被害者かどうかは疑問ですが、それは民主主義が反映されている結果だともいえます。


差別本はなるべく置かないように気を付けていますが、いずれ差別や排除に向かうような言説を、ないようにすることがどうもできません。インターネットで政治に関心を持ったのなら、もっと本屋に足を運んで、現実を見てほしい。丹念な取材と繊細な資料の読み込みで、過去を検証する本もたくさん出ています。


おばちゃんの野菜づくりじゃないけれど、本屋も一筋縄ではいかないのです。

プロフィール
茶屋ひろし
茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)
書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!