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捨てていく私
恵子の計らい
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18.02.27 by 茶屋ひろし



数年前に大阪に帰ってきてから、たまに20代の頃に知り合った人たちと再会することがあります。
あるとき仕事で京都に行ったとき、7時くらいに解放されたので、昔働いていた木屋町で一杯飲んで帰ることにしました。といっても、昔働いていた店はすでになく、当時知り合った人の店もほとんどなく、変わり果てた裏町をさまよいながら、ようやく、変わらずやっている店をみつけました。

エスカレーターで雑居ビルの4階にあがり、防音仕様の分厚い扉を開けると、照明が限りなく落とされた店内にはソウルミュージックが流れていて、カウンターだけライトアップされています。
スキンヘッドのマスターが「いらっしゃい」と言うなり私の顔をじっと見て、「茶屋か!」と驚いてくれました。
自分が人の名前を忘れるほうなので、久しぶりに行く店ではすぐに名乗るようにしていますが、それより早かったのでうれしくなります。

彼は、昔私が働いていた店のマスターたち(三軒くらいで働いていた)と旧知の中で、この店には休憩中によくお邪魔していました。
カウンターに座ってジントニックを頼みマスターとしばらく話していると、「ちょっと待って。恵子に電話するわ」と携帯を取り出しました。
今な、茶屋が来てるねん、と電話口で話しながら、ちょっと代わるわ、と携帯を渡されました。
恵子は一緒に働いていた年下の女の子です。ずいぶん会っていません。
「会いたい。今日は無理やけど、絶対連絡するから」と言ってくれました。

数日後、恵子からメールが来て、大阪駅付近で働いているらしく、仕事終わりに梅田一番街でご飯をしました。
彼女は京都から通っていて、今も週末は木屋町で飲んでいるそうで、あのころ周りにいた人の近況をあれこれ教えてくれました。その中で、一人だけ話題にのぼらなかった男がいました。この会話の中では不自然なほどに。

何回かこのコラムで書いていますが、当時好きだった同い年の料理人で、私が明け方の河原町を自転車で追いかけて(相手も自転車だった)、怖がられた人です。名前は岡田にします。
出会った頃は、私がオカマキャラということもあってか、仕事中によく乳首を触ってきたり(服の上からですが)、茶屋に思いっきり叱ってほしい、と発言したり、本人にしてみれば、ただの仲良くしたいアピールだったのでしょうが、私に勘違いさせるにはじゅうぶんで、そのうち恵子が彼の家に遊びに行くと言うので、嫉妬して、私も行く! とついていったこともありました。

ワンルームマンションの一人暮らしで、彼女は数年いないという状況でした。
その晩、恵子を先に帰して、酔いつぶれた私は岡田のベッドで丸くなりました。
翌日の午後、仕込みがあるので先に仕事に行ったらしい岡田の部屋で一人起きて、シャワーを浴びようとタオルを探したら、白いタオルが一枚一枚丁寧に丸めて収納されていました。
岡田と恵子がどうにかなるのを防いだ、という任務を終えただけでしたが、その晩、店で岡田が客に「茶屋と添い寝したで」と話しているのを聞いて、勘違いに拍車がかかりました。

そんなこんなで告白してフラれて、私は東京へ旅立ったわけです。
2年後、岡田から「上京したいから誰か紹介してくれないか」とメールが来て、それは料理人として東京で勝負してみたい、というような意味でした。紹介するも何もそんな人脈を持っていなかった私はお役に立てませんでした。それよりも、メールの書き方にイラっときて喧嘩してしまう始末でした。
そのあと恵子が、仕事で東京に行くから、とやってきたので新宿でランチをしました。
そのとき岡田とメールで喧嘩した話なんかしました。

梅田一番街で、岡田の話題を伏せながら、あとは自分の恋愛事情を話した恵子は、今度は木屋町で飲もう、と言いました。一緒に働いていた小栗旬に似た子も一緒に、と言われましたが、小栗旬の顔しか出てきません。
ええよ、と気楽に受けたら、翌月には恵子と小栗旬とラインでつながり、私の休日に木屋町で飲むことになりました。
「場所は岡やんの店でもいい?」とふいに恵子から提案されました。
岡やんの店ってなんや。初耳のくせして私はそれにも「ええよ」と答えました。

河原町のOPAの裏にあると聞かされて、誰よりも早く着いた私は、岡田の店を探しましたが見当たりません。恵子は仕事で遅れるとのこと。小栗旬と待ち合わせたほうが早いか、と辺りを見回していたら見つけました。

築60年は立っていそうな雑居ビルで、細い鉄の階段をあがったところにありました。扉は開きません。ちょうど開店の時刻を少し回ったところでした。
室外機が置いてある共同のベランダスペースみたいなところで煙草を吸って待っていると、誰かが階段を上がってきました。

小栗旬か岡田か。その、ぼさぼさの白髪頭は岡田で、私は「岡田」と声をかけました。見上げた顔に、「茶屋」と名乗ると目を大きくしました。
私が来ることを知らされていなかったようで驚いています。
あとで、びっくりさせすぎたわ、と過去を思い出して反省しました。

店は一人でやっているようで、カウンター席しかないバーの風情ですが、カウンター内にはコンロとオーブンもあります。
すぐに小栗旬も到着し、近況を言い合っているうちに恵子もやってきて、岡田はエビのクリームパスタをつくってくれて、私はワインを開けて、プチ同窓会とあいなりました。

店は5年前にオーナーからもらい受けて独立し、2年前に結婚して今は2歳の娘がいるそうです。
それに対しておめでとうとも、あの時はごめんとも、どちらも口に出せないまま、話はあの頃の傍若無人だった私の酔っぱらい方に流れました。

プロフィール
茶屋ひろし
茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)
書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!