2002/1/18〜2002/6/20
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第03回 『冷静と情熱のあいだ』(映画版)


あたしがバレンタインという行事にまともに参加しなくなって何年も経つ。が、この 時期自体は嫌いではない。あたしは基本的に辛党なので、甘い物にはあまり思い入れ がなく、ケーキがこの世から消えてもそれほど困らない。と、思う。だが、甘い物の 中でひとつだけ、チョコレートだけは、時々無性に食べたくなってしまうのだ。そし てバレンタインのこの時期、街にはチョコレートがあふれ、普段手に入らないような チョコまでもが出回る。今年は大好きなロイズのチョコを東京で買うことが出来た。 ソニープラザではシンプソンズの輸入チョコも買った。「お包みいたしますか?」と 言う店員に「結構です」と、断りを入れたにもかかわらず、黄色とピンクとブルーの ハート柄の真ん中に、「Valentine’s Day2002」と書かれた紙袋 にチョコを入れられてしまった。そんな紙袋を持って埼京線に乗る、すっぴんの30 オンナ。罰ゲームか?

さて、なぜこんなどうでもいい話をえんえんと書くのかというと。
「名作を疑え!」第二回目にして、「それ名作かよ!」と、突っ込まれそうな作品を 選んでしまったからなのだ。・・最初にタイトル書いてあるから、もうみんな心の中 で突っ込んだはず。

と、いうわけで、「バレンタインスペシャル」!
(「ゴールデン洋画劇場」も、邦画をやるときは「ゴールデン洋画劇場特別編」って、 言ってたじゃないですか)
「冷静と情熱のあいだ」映画版!
(なぜ映画版だけなのかというと、単に原作を読んでないから。本を買って辻仁成に 印税入るのもヤだし、図書館はまだまだ貸し出し中だし。ちなみに映画はタダ券をも らったので見に行きました。でも、時間を無駄にしたので、原稿にして少しでも取り 返そうという魂胆です)

まずストーリーを紹介。
10年前に別れた恋人同士が、10年後にゲージュツの都フィレンツェで再会して再 会して、永遠の愛を誓い合う。
以上!

って、短いですか?
でも、本当にこれだけの話なんですよ。
じゃあ、もう少し細かく見ていきましょうか。

竹野内豊演じる仁成・・・じゃなかった順正(じゅんせい)と、ケリー・チャン演じ るあおいが、なぜ10年前別れたのかというと、あおいが、順正に黙って中絶したか ら。順正はそんなあおいを責めます。詰ります。そして二人は別れたのだった・・・。 しかし、それから10年も経ってから、実は、純正の父親があおいに金を渡し、中絶 するよう頼んでいたことがわかる。「息子には将来がある。うんたらかんたら・・」  順正は高名な画家のお孫さんだったのです。てっきりあおいが自分勝手に中絶して いたと思いこんでた順正。「なんだ!やっぱりあおいはそんな女じゃなかったんだー! (もちろんあおいは金を受け取ってはいない)」と、大喜び、だったら話は早い、今 付き合ってる口デカ乳なし篠原涼子より、ケリー・チャンじゃなかったあおいの方が いいやー。と、順正は篠原を捨て、あおいと永遠の愛を誓うのでした・・・・

・・・・・・ち・ん・ぷ〜!!!でしょ?
どうやら原作と映画はストーリー自体に結構違いがあるらしい。が、原作を読んだ人 に聞くと、辻仁成の本で、順正は「あおいの中絶」を、すんげ〜しつこく責めるらし い。原作は江國香織が描くあおいの視点と、辻仁成が描く順正の視点で、ひとつのス トーリーが進むのだが、映画版の主人公は順正なので、辻仁成本の視点で描かれてい ると言えよう。(プロデューサーが男だから、辻仁成本にしか共感できなかったのか な? 原作読んだ女友達は辻仁成本はすごくむかつくって言ってたが)

このさあ、「いい女」「正しい女」は、絶対好きこのんで中絶なんかしない。っての、 もう、いいかげんにしてくれないかなあ。そんでもって、相手の男には、そんな女を 責める当然の権利があるんだよね〜。ああ・・・こんな物語でいいんなら、あたしだっ ていくらでも書けるさ。でもそれを書かないのがあたしのプライド。決して負け惜し みなんかじゃないぞー(でも何言っても負け犬の遠吠え)。

話を戻すと、当時20才そこそこだったあおいと順正。順正は金持ちの坊ちゃんだか ら、子どもの一人や二人養えたのかもしれない。でも、あおいは、香港からの留学生。 きっとなにか目標があって日本に来ていたのだろう。それが、コンドームが破れたの か膣外射精を避妊だと思ってたのか順正は生で中出しして「大丈夫!俺いままで誰も 妊娠させたことないから!」とか言う男だったのかは知らないが、運悪く妊娠。あた しだって、この状況なら中絶するよ。オヤジに頼まれなくたって、順正に相談もせず に中絶するよ。

でも、それって、許されないのだ。女のキャラが世の人々に憎まれないためには、 「本当は産みたかったんだけど、産んであげられなかった・・」という態度でいない と、まず主人公にはなれない。なれたとしても、最後にはそんな自分を反省しなくて はならない。

とはいえ、今さらこんなストーリーが、そのままでOLさん達を惹き付けるとも思え ない。テレビドラマであれば、それなりに安心してみていられるラブストーリーとし て評価もされようが、これは映画。である。わざわざ友人誘って待ち合わせて、新宿 とかまで電車乗って出かけて、1800円も払わなければ見られないのだ。それなの にこの映画はリピーターも多かったと聞く(テレビの言うことだからあまり信用して ないが)。

なぜ、この「今さら」映画がそんなに受けたのか。ハリウッドでラブストーリーが名 作になるためには、恋愛+αが必要だと聞く。「風と共に去りぬ」は、恋愛+歴史 (南北戦争)だし、「タイタニック」は、恋愛+スペクタクル(歴史?)だからこそ 受けたのだ。恋愛話だけじゃ、どうやってもスケールがちっちゃいので、何かを組み 合わせることで無理矢理名作に仕立て上げるわけだ。

そして「冷静と情熱のあいだ」。この映画は日本映画ではあるが、舞台のほとんどが イタリアである。飛び交うイタリア語、英語。美しいフィレンツェの街並み。見せ場 では必ず流れるエンヤの歌声・・・なんとなく、洋画を見たような気分になれるのだ。 日本映画にありがちなテンポの悪さも、高尚なイタリア映画を見ているのだと思えば ガマンできる(高尚=テンポが悪い。に反論したい方はLPCまでメール下さい)。

その上、順正の職業は絵画修復士。ゲイジュツに弱い日本人はイチコロである。ちな みにこの場合の「弱い」は、ずばり「疎い(鶴太郎の絵が売れる国だ)」と、「ゲイ ジュツ=偉い。と思いこんでしまう」という二つの意味を持たせている。

陳腐ついでに指摘させてもらえば、順正の働く工房の女ボス。やり手のイタリア美人。 だが、順正の才能に嫉妬するあまり、順正が手がけていた修復中の絵画を、びりびり に切り裂いてしまうのである。・・・何年もかけて築きあげた自分の工房。そんな、 嫉妬くらいで台無しにするかあ〜? どこぞの金持ちから預かった貴重な絵画、その 価値を誰よりもわかっているのは彼女のはずだろう。もちろん彼女は順正に恋してい たりもする。

「不本意な中絶」「女の嫉妬」「永遠の愛」あまりにも使い古された物語を、無理矢 理な仕掛けで売ろうとしないで、そろそろ新しい物語(本当に女達が共感できる物語) を、語らせて下さいよ〜・・・って、フジテレビに望んでも仕方ないのは百も承知な んだけどね。

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