2002/1/18〜2002/6/20
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第11回 「ディズニープリンセスの条件」


あたしが子どもの時、大好きで何度も何度も読み返した童話の一つに「メリーポピン ズ」があった。ベビーシッターとして雇われた彼女は、不思議な魔法を使って子ども 達をとりこにするのだが、あたしは、メリーポピンズの不愛想さが何より好きだった。 子ども達を甘やかさず、滅多に笑顔も見せない。しかし子ども達のことをちゃんと考 えているし、彼らを子ども扱いしたりしない。その距離の置き方が、クールでかっこ よかったのだ。ある日、父親がレンタルビデオ屋からディズニー映画の「メリーポピ ンズ」を借りてきた。あたしは大喜びでテレビの前に陣取った。映画が始まる。・・ ものの数分であたしは失望した。「こんなのメリーポピンズじゃない・・・」映画の 中の彼女は、とおっても、いい人だったのだ。いつでもニコニコ、笑顔を絶やさず、 ハキハキと明るいおしゃべり、いつでも子ども達の味方。決して怒ったりしないの。 ダンスもお歌もおじょうずなの。

同じようなことは他にもあった。「不思議の国のアリス」である。こっちのほうが有 名だからわかりやすいかな? 原作のアリスは割とつんけんした、不愛想なお嬢さん であったのが、ディズニーアニメでは、新橋の酔っぱらいオヤジが「娘にするならこ んなタイプ」とか言いそうな、明るく素直な娘さんになってしまっていた。でもあた し、ディズニーアニメで唯一好きなのが「不思議の国のアリス」だったりもするんだ が。

ところで、みなさんは最近、ディズニーが、キャラクターグッズやオリジナルビデオ などで、ヒロインだけにテーマを絞った「ディズニープリンセス」なるシリーズを展 開しているのをご存じだろうか。そのメンバーは、シンデレラ、白雪姫、オーロラ姫、 「美女と野獣」のベル、「リトルマーメイド」のアリエル、「アラジン」のジャスミ ンの6人。

コンセプトは、『「私もお姫様になりたい」そんな女の子の夢と憧れを6人のプリン セスを通してかなえるのが、ディズニープリンセスです。』だ、そうだ(ディズニー 公式HPより)。各キャラクター紹介も、すごいぞ〜。

白雪姫「無邪気で人なつっこく、誰からも愛される優しい心の持ち主。いつかステキ な王子様があらわれることを夢見てる」

オーロラ姫「輝く髪とバラのような唇。森で出会った王子様と結ばれることを夢見て るプリンセス」

どのキャラクターも、文章の横で、美しい髪をなびかせ、きれいな色のひらひらのド レスを着て、あたしをとびきりの笑顔で見つめて下さる。やめてよ〜。あたしは王子 様じゃないんだから、そんなふうに笑いかけなくてもいいのよ〜。

しかし、この「プリンセス」の仲間に入れてもらえなかったヒロインがいる。「ポカ ホンタス」と「ムーラン」の二人だ。・・有色人種差別?と、言いきるのも何なので、 この2本を観てみました。「ヘラクレス」や「ターザン」にもヒロインはいるのだろ うが、ヒロインがメインの映画というと、この2本になるので今回はとりあえずこれ だけでご勘弁を。そんなに何本もディズニーアニメ見てらんないもん・・・辛くて・・

まず「ポカホンタス」(1995)。あたし、これ、公開当時もまったく興味を持て なかったので今まで見たことがなかったんですが、割とよい出来で、びっくりしまし た。(まあなにしろ「リトルマーメイド」を観た後だしな)

ストーリーは新大陸(英国人から見て)にやってきた英国人とアメリカ先住民の戦い の中で、先住民の首長の娘、ポカホンタスと、英国人の青年ジョンが恋に落ちるとい うもの。男達がそれぞれ「話してもムダだ!」と戦いを始めようとするのに、ポカホ ンタスとジョンはそれに抗い、2人の命がけの説得により、両者は戦いをやめるので した。しかし、けがを負ったジョンは、英国に帰らねばならず、ポカホンタスも自分 の土地に残ることにするのだった・・

実話を元にしているとはいえ、この後現実でアメリカ先住民にどのようなことが起こっ たかを考えれば、無邪気に「ええ話や」とも言えないんだけど、それでも、これまで 「正義」と「悪」の二元論的な物語しか描けなかったディズニーが、「戦わない」と いう選択肢を思いついたと言うだけでも拍手したくなっちゃったのさ。

二人が恋に落ちる過程や、最初は敵に銃を向けるのは当然と思っていたジョンが、ポ カホンタスとふれあうことで変わっていく様も、丁寧に描かれている。「戦い」とい うわかりやすい展開を放棄した分、他のエピソードで盛り上げなきゃいけなかったの だろうが、それが、結果的に作品の完成度を高めることにつながったようだ。まあ、 言葉が通じないはずの二人が二人とも英語しゃべってたり、また、すぐにお互いの言 葉を理解し合ったりするのは無理があるけど、その辺はまあ、大目に見よう(えらそ う?)。二人は永遠の愛を誓ってはいるが、ディズニーにはめずらしく、別れ別れに なるし。(ポカホンタスにも続編があるが、これは劇場公開された作品ではないので 除外する)

さて、次に「ムーラン」(1998)。こちらはさらに「時代に合わせたヒロイン像」 という触れ込みだったので期待して観てみた。・・・のだが・・・う〜ん・・

時代はよくわからんが中国のある地方で、戦争のため、「一家から一人ずつ男子を差 し出せ」と、皇帝から命令が下される。しかし、主人公、ムーランは一人娘で、唯一 の男である父親は病がちだった。ムーランは、男装をして、父親の代わりに戦争に向 かう。最初は足手まといだったムーランだが、努力して、ほかの男達よりも頼もしい 兵士として、成長する。そしてクライマックスでは、ムーランの機転により、勝利を 収める。ラスト、上官だったハンサムくんがムーランを迎えに行って、二人は結婚す る。

あ・あれ?「ポカホンタス」で、せっかく「戦わない」という選択肢を見つけたのに、 また、アメリカお得意の勧善懲悪ものに逆戻り。しかも、ムーラン達の敵であるフン 族は、怪物のようにいかつい顔で描かれ、やたら凶暴で言葉もほとんど話さない。ど ういう事情で両者が戦っているのかは、観客にはまったくわからない。「悪いもんは 悪い」という二元論復活である。

「ポカホンタス」の?戦わない」という結末も、結局アメリカ先住民に配慮しただけ のことだったのかなあ・・・?

ところで「女が男と一緒に戦えば、フェミニストが満足する」って、一体誰が言い出 したことなんでしょう。「GIジェーン」とかさ。まあ、そういうフェミもいるんだ ろうけど。

だが、「ムーラン」にしても、女が男と一緒に戦って欲しいなんて、制作者側が本気 で思ってないってことが、要所要所に見え隠れする。ムーランの仲間の兵士達は、こ んな歌を歌いながら戦場へ向かう。

戦争に行くのも彼女のため
月の光より透き通った肌
星に似た瞳
勇敢なオレにベタ惚れ
大きな傷跡にうっとり
器量や服装なんかどうでもいい
大切なのは料理の腕
ビーフポークチキン
よろいの男は女の憧れ
欠点がないと褒められ
理想の男性と崇められる

ムーラン「頭のいい女はダメ?思ったことを言う女は?」

お断り!
男らしい話しぶりに女はメロメロ

なんだよこれ・・「リトルマーメイド」の、魔女の歌と、何も変わらないじゃん・・

まあ、この後、ムーランは他の男達より強くなって行き、そしてハンサムとまんまと 結婚するので、「リトルマーメイド」とはまたちょっと違うんだけど・・。でもこの 上官、ムーランが女だって知ったとき、「お前は殺されても文句は言えないが借りが あるから殺さない」みたいな事言ってたのに、皇帝に「あんな娘は滅多にいないぞ」 と言われてムーランを迎えに行くんだよ。別にムーランのこと好きでもないんじゃな いの? この絶対的な上下関係とか、軍隊のパロディとしてみると、おもしろいけど ね。

こうして見てみると、「ポカホンタス」も「ムーラン」も、充分ディズニーヒロイン としての要素を持っている。二人とも、一応身分の高いお姫様だし、最後はステキ(? )な男と結ばれるし。

そうすると、この二人がディズニープリンセスの仲間に入れなかったのは、単に、 「見た目の華やかさがない」ってことなんでしょうかねえ? ひらひらのドレスも着 てないし。ってことは、やっぱりキャラクターデザインをやたらと地味にすることか ら始まる、有色人種差別って事? あら。最初の指摘通りの結論になっちゃったよ。 しかし、あたし、こんな事言って大丈夫なのか? 訴えられたりしない? まあ、あ たしは現在のディズニーアニメの白人キャラは、ちっともかわいくないと思うけど。 あれだったらポカホンタスの顔の方が(まだ)クールで整って見える。

実際この2本は子ども達の人気もないらしいが(日本調べ)、ストーリー展開は正反 対であることを考えると、子ども達は決してわかりやすい物語(正と悪の戦い、幸せ な結婚)だけが好きなのではなく、絵の華やかさ、きれいさの方を評価対象にしてい るような気がする。この2本は、他の作品に比べて、全体的に色数が少なく、地味な 印象を受ける。「ムーラン」なんか、本当の中国はもっと派手だと思うんだけど。 (日本と混同している可能性アリ。ムーランの軍隊のテントに日の丸が描いてあった)

ディズニーアニメ共通のヒロイン像として、「明るく、素直で、頭が良くて、ややお てんばで、外の世界に憧れていて、群れるのが嫌いで、小動物を従えていて・・・」 というのがある(但し最近の。ね。昔の原作付き長編は知らない)。彼女たちは、川 の畔などでやたらと自分の夢を歌ったりしているが、はっきりと「王子様が迎えに来 てくれないかしら」と言っている娘はいないように思える。それなのに、みな、最後 は王子様と結ばれてしまうのだが、彼女たちの夢は本当に王子様と結婚することだっ たのかしら?

そして、もう一つ重要な共通点に気づいた。どの作品も彼女たちの「父親」の存在が 異常に強調されているのである。「リトルマーメイド」と「ポカホンタス」には母親 がいないし、「ムーラン」では、母親は一応いるが、侍女といっしょにいるだけで、 大した発言もしない。そして、娘達は、どいつもこいつも、父親にさからわないばか りか、父親を(ややうっとおしく思ってはいても)愛しているのだ! 命令形でしか 娘と話せないような暴君なのに!

「ムーラン」に、今までにない新しい部分があるとすれば、それは、当初、戦いに出 かける動機として、「お父様のため」と言っていたムーランが、ラストでは「本当に 父のため? 自分の力を試したかったのかも。鏡の中の自分を誇れるように」と、 「自分の意志」を表明しているところであろう。

・・・・でも、結婚しちゃったら自分の母親のように、自己主張もしない「存在感の ない母親」になるってことなんじゃないのか。少なくとも「ディズニーワールド(遊 園地じゃないよ)」の中では。

一進一退を繰り返しているようでもあり、何も変わっていないようでもあるディズニー アニメ。でも、これだけは言える。ヒロイン像は(多少)変わっても、ヒーロー像は、 いつまでも変わらず、「勇気があって、強くて、迷いがなく、女を守って、頂点に立 つ、小動物を従えた、」男であり続けるんじゃないのかな。

ちなみに、上の条件の中に「ハンサム」ってのを入れてないのは、もちろん「ノート ルダムの鐘」のせい。主人公のカジモドはブサイク故にディズニーのヒーローとは思 えないくらいオドオドしているし。でもクライマックスの展開はひどいよ。いつもの 「悪者こてんぱん」パターン。なにも煮えたぎった鉄(かなんか)を浴びせかけるこ とはないじゃないか。何人殺してんだ。

それにあの作品、ヒーローとヒロインが結ばれない唯一のディズニーアニメじゃない のかしら。(ちなみに「ポカホンタス」は、二人で永遠の愛を誓ってるので結ばれた と見なす。セックスはしないけど、心は通じ合ってるなんて、まるで「真珠夫人」み たいね。みんな、見てる? 「真珠夫人」! 森下涼子に中島脚本! 純潔ですわっ !)

ブサイクな男は好きな女と結ばれないなんて、ディズニーとは思えない、妙に現実的 なラストだよね。でも、「ノートルダムの鐘2」(ビデオのみ)のCMでは、主人公 のカジモドはかわいい女の子と一緒にいたので、そのへんは続編でフォローされてい るのかも。暇な方はあたしの代わりに確かめてみてね。

ところで、「美女と野獣」を見た人に聞きたいんだけど、ラスト、野獣の呪いがとけ て、王子様の姿に戻ったとき、思わず「野獣の方がかっこよかった・・・」と言った のって、あたしだけ?

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