第41回 「笑顔の法則」



油断すべきではなかった。フジの月9が今やその意味を失ったかわりに、TBSの日9はやりたい放題だ。「サラリーマン金太郎」、「オヤジぃ」、「GOOD LUCK!」等、「明日からの一週間を、家族のために乗り切ろう!とがんばるオヤジたちへのエールであるとともに活力源」をコンセプトに作られているドラマ枠である(たぶん)。

あたしが「笑顔の法則」を見ようと思った動機は、「竹内結子主演は絶対ネタになる!」とふんだからではない。単に、マンガ業界が舞台だったから。医療モノは医療関係者にとって、刑事モノは警察関係者にとって、突っ込みどころ満載であることは言うまでもない。スポーツものだって、経験者から見たら穴だらけなのだろうと思う。もちろん、ドラマのメインテーマはそれらの内幕を暴露する所にはないし、多少の間違いはあって当然だ。しかし、それでも、「んなわけねーよ」と、突っ込みたくなるのが、人情というものであろう。で、マンガ業界(出版業界)というのは結構ドラマのネタにされることが多い。おそらく、だいたいの所は想像が付くので、スタッフが取材しなくても書けると思っているのだろう。医療モノならば、アドバイザーをつけなければ書けないだろうしね。ところが、そんな風にナメてかかったドラマを、マンガ家たちは見逃さない。

今回の原稿はそこがテーマではないので軽く触れるだけにとどめておくが、売れっ子マンガ家、桜井礼次郎(阿部寛)、絵、下手すぎ(マンガは絵だけじゃないですが)。あと、地方旅館に作家をカン詰めにしてマンガ描かせるなんて、聞いたことない(昔の文芸作家と混同してる?)。しかも、担当編集がマンガのことを何も知らないバイト(竹内結子)って…ありえない。他にもいろいろあるけど、それはマンガ家仲間と個人的に笑い合うことにする。

これは、自分探し中で失業中、だけど運良く売れっ子マンガ家のお供で旅館住まいをすることになった竹内結子が、マンガ家の阿部ちゃん、そして彼らを取り巻く旅館の人たちとのふれあいを通して、人間的に成長してゆくという物語である。物語の肝は、この老舗旅館の女将である野際陽子。彼女が、「サラ金」でいう高橋克典、「GOOD LUCK!」でいうキムタクの役割を担っている。ひとことで言うと、「ぶっちゃけ役」である。彼女が言うことは、どんなトンデモ発言でも、物語の中では、すべて、正しい。

第一話では、もうマンガを描きたくないと、道具を自ら燃やしてしまった阿部ちゃんに対し、「自分の描きたいものが描けないなんて、あなたは、自分自身から、逃げてるだけです!」と、喝。そして、彼が燃やしてしまったものの中にあった旅館の手ぬぐいの燃えかすを見せる。これは、亡くなった女将の夫がデザインしたものだったそうだ。それを軽々しく燃やした阿部ちゃんを女将は責める。…って、手ぬぐいなんかいくらでもあるだろうによ〜。元のデザイン画を燃やしたわけじゃあるめえし。マンガと手ぬぐい、どっちが偉いとか、言っちゃいけないのかもしれないけど、でもさあ…。だいたい、「夫がデザインした」ってのが気に食わん。

そして、第二話。きました。テーマは、「女らしさ」。
編集部へと急ぐ竹内を、女将は呼び止める。
「女なのに廊下をバタバタ走るんじゃありません! あなた…お化粧してないでしょ…。まさか、電車でするつもりじゃないでしょうね? あなたねえ、どなたかにお目にかかる時は、身だしなみをきちんとすることが女性のたしなみでしょう」
まだ、冒頭なので、これには竹内も反論。
「女将さん、お言葉ですけど、女らしさなんて、もう古いんです。それに、仕事する女には、女らしさなんて逆にジャマになる時だってあるじゃないですか。私は女らしくじゃなく、自分らしく生きたいと思ってますから」

これに、マンガ家、阿部ちゃんもたたみかける。なぜ時代物ばかり描くのかと問う竹内に、
「今の人間描いてもつまらないからだよ。昔の人間は男も女も魅力的だった…。人として一本筋が通っていた。あの坂本竜馬は「おんしなんじゃい!」と問われてなんと答えたと思う? 武士でも男でもなく「坂本竜馬じゃ〜!」だぞ。今、そういうこと言える男がいるか? あの時代は、女も礼節をわきまえて凛としてたんだよ。でも今の世の中、そんな人間は生きられないんだよな。古くさいって言われるんだよ。お前もさ、女将さんのこと、魅力的だと思うこと、あるだろ? ああいう人たちが生きにくい世の中ってのも、オレはどうかと思うけどねえ…」

女将は、以前、板場を借りて見合い相手のために料理をした女の話をする。
「しかし、破談になってしまいました。彼女は女らしさをはき違えていたのです。彼女の行動は、板場への配慮を欠いた、いささか品のない振る舞いでございました。」

そしてラスト、再び竹内に説教。
「お化粧ってのは、自分のためにするんじゃないんです。人に不快感を与えないためにするんです。そりゃあなたはまだ若いからお化粧しなくても人に不快感を与えないかもしれません。でも、昨日のように寝ぼけ顔で髪の毛ボサボサだったらどんなに若くても美しくありませんよ。化粧水をつけて自分の肌を確かめる余裕、それは仕事でも家事でも同じです。そういう余裕を持ってすることが、本当の女らしさなんです。」

あっさり納得する竹内。
「今まで、女らしく人の役に立つなんて考えたことなかったんだけど、なんかちょっとわかった気がした。」  

旅館の廊下で従業員が走らない。というのは、女らしさは関係ないだろう。男の従業員だろうが、女だろうが、そんなうるさい旅館じゃ客はくつろげないよ。客室係の担当が、なぜ女ばかりなのか、そこは問わないわけだね? そして、金銭と引替えの料理は、男が担当し、そこは土俵と同じく男の聖域だから、女は入るなというわけか。セリフの中の、「人」という言葉は、すべて、「男」に変えた方が分かりやすいですね。男女共同参画がうさんくさいわけだよ〜。あたしだって、身だしなみをきちんとしない、ガサツでうるさい男たちに、不快感を感じてるっていうのになあ。

ちなみに、このドラマの脚本家は女性。しかし、「脚本協力」という、謎の肩書きの男がテロップに出ていた。どの辺を協力したのだろう。気になる。


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