故郷の友人が男の子を出産して、お見舞いに行ったとき。病室にいた彼女のお義母さんが、どういうわけだか勝ち誇ったように私に言いました。「あなた、(子供は)女の子二人?・・・じゃあ、今度は男の子、産まなきゃだめねぇ」
・・・・・・・。ベッドにいる友人が困ったような顔をして私を見ているので、とりあえず話を合わせて「はぁ。でも、次に男の子が生まれるかどうか、分かりませんし」と言うと、「大丈夫よ。4,5年空ければおなかが変わる、っていうし」と根拠がなさそうなお言葉をくださり、病室から出て行かれました。「ごめんね〜」と、友人が両手を合わせて謝ってくれました。・・・田舎って、こんなもんです。男子を産んだオンナはエライ。予定外かそうでないかよりも、結婚しているかそうでないか、が重要視されます。
私の兄夫婦のところに、去年予定外の二人目が生まれました。夫婦二人して「マンションも買ったばっかりで物入りなのに、こんなに早く二人目ができるなんて・・・」とボヤいていたので、身内の気安さで「・・・そんで? 避妊してたわけ?」と尋ねると、答えは「ノー」でした。・・・理由といえば「だってこんなに早くできると思わなかった」んだそうで。お前らは中学生か。いい加減にしてくれ。・・・とまでは、いくら身内でもなかなか言えませんでした。
赤ん坊を出産した直後の開放感と達成感はそりゃー、かなりのものです。出産した著名人がこぞって体験手記を出版する気持ちも、分からないではない、と思えるほど。
それでも、『産むこと』の素晴らしさをデコラティブに飾り立て、『美談』にまつりあげるのは、かなり恥ずかしい所業なんじゃないかと。妊娠を想定せず、避妊なしのセックスに興じた挙句の中絶をただの『原因と結果』として受け止めずにこれまた『哀しい美談』にすりかえてしまうのも・・・・いわずもがな、です。両者とももっとサクサクっとやって欲しいものですね。産むにしても産まないにしても。
・・・でも。それは、僻地においては非常に困難な『理想』です。心情的にはサクサクっとやってしまいたくても、周りがほっといてくれないのが田舎ですから。(「長男誕生、イェーイ!」と、祭り上げられた上記の私の友人然り、です。)
私には『予定外』にできた『ニンゲン』を排出する勇気は、ありません。かといって、10代、20代の過剰な性欲を押さえつけて尼僧のような生活を送ることは・・・できませんでした。10代の頃、何度か勢いで“ナマで膣外射精”に応じた(←バカ)時など、次の生理が来るまで生きた心地もしませんでした。(だったらするなよ、って感じですよね。ワカゲノイタリ、って怖いわ〜)
私の育った田舎に一軒だけある産婦人科は良心的な個人病院で、私も第一子を産む時にお世話になったのですが、子宮に響くような渋いバリトンがステキな先生の声は狭い院内によく響き、待合室に筒抜けでした。ついでに、そこの看護婦さんの一人と母は知り合いでした。若いマンコ持ちのマンコプライバシーは無きに等しい存在で、『避妊に失敗する』ということは『親を落胆させ』『それを回りに知られ』『“キズモノ”の烙印を押される』ということでした。母はよく「(妊娠は)オトコにとっちゃ勲章だけど、オンナにとっては“キズものになる”ってことだからね。結婚するまで(妊娠は)ダメだよ」と私に云いました。結婚前のまだ産む気がなかったある日、セックスの最中にコンドームが破けてしまった事があり、比較的正確な私の生理カレンダーがその月は4日も遅れました。始末するなら隣町かなぁ、と思いつつトイレで出血を確認したときは、強烈な安堵感に、泣き崩れました。
「結婚前の妊娠はダメ」「中絶すると、子供を産めないカラダになるのよ」と私を脅していた母自身が中絶経験者であることを語ったのは、私が結婚を決めたときでした。母の中では「中絶する権利は、既婚女性だけにある(妊娠する権利は既婚女性にだけある?)」という、独自の価値基準があるらしく、淡々と(←これは、私にとって“予想外”でした)「(避妊に)失敗して、産めないと思ったから降ろした。苫子も、へんな薬飲んでるときにできちゃったら、(出産するのは)止めときなさいよ」と云いました。当時肩こりと偏頭痛が酷くて痛み止めを常用していた私を慮った言葉だったのでしょうが、「そうか・・・田舎でも、結婚してしまうとラクに中絶していいんだ。知らなかったなぁ・・・」と、ぼんやり思ったものです。
稲垣早穂さんのコラムで、初めてモーニングアフターピルの存在を知りました。“女子生徒が修学旅行中に生理を避けるためにもらうことのできる、あのクスリ”がそうだったなんて!
まさかの失敗に、中絶よりも身体的、金銭的にリスクの少ないこの方法は、世間体と因習にまみれた、婦人科病院を選ぶこと自体が困難な僻地に住むマンコ持ちには朗報です。マンコ持ちが世間体等の重圧をしりぞけ、『産まないこと』を選ぶことが容易になる。サクサクっと中絶するために時間とお金を使ってよその土地のよく知りもしない婦人科の門を叩かなくてもいい。お〜、素晴らしい。
STDを彼氏からもらってしまった友人に付き添って、隣町の婦人科まで車を走らせたり、妊娠判定薬を買いにいくだけなのに薬局で知り合いがいないか、びくびくしていた独身時代。田舎で生きるには到底無視できない『世間体』への恐怖が、結婚し地方都市に脱出しているにもかかわらずいまだ抜けない私は、低用量が解禁になってからピルを服用しています。妊娠しないカラダが私にもたらす安心感は、コンドームの比ではありません。安心感の正体がホルモンだろうが、血栓症のリスクを持つことになろうが、『例えレイプされたとしても、望まない妊娠だけは避けられる』なら、と服用し続けてきました。
ピルのシートは、あと二か月分ストックがあります。モーニングアフターピルを常備しておけば、コンドームに切り替えてもいいのでは。・・・と、現在思案中です。・・・どうしようかな。 |
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