フェミに片思い
プロフィール

第11回 ボツになった再就職

  先月、近所にある某金融機関がパートタイマー募集していたので、条件を見ると『月、金を含む週四日勤務。9〜16時まで実働5時間ほど。時間については相談に応じる。土日祝日、年末31日と年始3日まで休み』とありました。

「くっ、この求人が来年の今頃きてたらよかったのに」と思った私は『相談に応じる』という部分に着目しました。パート契約は多分、一年毎に更新されるはずだから、来年になればどうにか5時間働ける状況をふまえて、最初の一年間を3〜4時間労働で雇ってはもらえないだろうか、と思ったのです。なにもせずに悔やむのも厭なので、『銀行勤務経験者です。今年度中は月末日等の忙しい日にちのみ、5時間勤務で。基本的には3ないし4時間勤務で、という条件を検討していただけるのでしたら、雇っていただきたい。可能でしたら連絡下さい』といった内容の手紙を添付して、履歴書を郵送しました。

 約一週間後。諦めていた頃、電話が鳴りました。「面接したいので、支店まで来て欲しい」とのことで。行ってきました。日ごろからミニオヤジに慣れ親しんでいるとはいえ、人となりを知らない本物のオヤジと対峙するのは久しぶりで、そのあまりの『カイシャオヤジ達の変わりなさぶり』にあきれかえってしまいました。

面接官のオヤジ二人。パートタイマーを総括する子会社の代表取締役と、パート応募を出した支店の支店長。私の履歴書を見ながら、「イイジマさん。まず、会社の方針を説明させていただきます・・・」ときた。おいおい、私は「サワノ」なんですけど。どうやったらそう読み間違えられるの?(どうやら、私の前に面接した女性がイイジマさんだったらしい)「イイジマさん、うちは、退職金は、ありません。」「ボーナスも、ありません」うん、わかってるよ。パートはとことん安く使うんでしょ?

イイジマさん、を連呼する代表取締役に、小声で「サワノさん、です、サワノさん」と囁く支店長。「ああ?・・そうか、サワノさんか」というので、私も「はい、澤野です」と云うと「それで、お子さんは何人ですかな?男の子?女の子?」「随分お若いですな。ご結婚がはやかったのかな?はははは」と、今までの非礼も詫びずに今度はセクハラ発言。「お子さんはまだ小さいですねぇ。ご主人はなんと言っておられるのかな?」「あの、勤務時間の要望は通るのでしょうか?」「それは後でお話しするとして。時給ですが、最初の二ヶ月間は試用期間ということで、時給あたり20円減額になります。よろしいですかな?」

会話が激しくかみ合っていないのを感じながら、40分ほどの面接が終わりました。後日改めて電話連絡する、と言われ、オヤジ節に疲れ果てたものの、実際勤務につけば女性行員の方が多いのだし・・・と気を取り直して待っていたのですが。
二日後。「○×ビジネスサービスです。この度は当行のパートタイマーに応募していただき、ありがとうございました」電話の向こうは面接官の二人とは違うオヤジ。高圧的な物の言いかたで、「今回の勤務時間の要望という事で、来年度以降は5時間、それ以前は基本的に3、4時間、というご希望でしたね?」「はい」「それなんですが、契約は、やはり週4日5時間期勤務、ということで。よろしいですね?」「・・・は?」
ひどく断定的な「よろしいですね?」でした。 

 履歴書に書いた。説明不足では申し訳ないので、細かい事情は別紙に書いて添付もした。かみ合わない面接官にも「時間の要望が通らないのでしたら諦めますので」と念を押した。私の要望は「コレだから、主婦の考えは甘いんだ」と言われても仕方のないものだということは分かっていたけれど、「責任もってできる範囲は、ここまで」とはっきり表明しておくほうが、後になって「できない」と、現場の女子行員たちに迷惑をかけてしまうよりはマシだと思っていました。

一呼吸、大きく息を吸い込んで、「郵送させていただいた履歴書に、勤務時間の要望がそちらさまに添わない場合書類選考で不採用にしていただいて結構ですと書き込んでありますし、面接でもそのように言ったつもりなのですがどこをどのように曲解されて5時間勤務でいいだろうと仰るのでしょうか?」と返すと、しばらく沈黙した後、「・・・そういうことでしたら、今回は残念ですが、なかったということで。ありがとうございました」と、こちらの返事を待たず、憮然とした空気を残してがちゃ、と電話が切れました。

 もし、パートで得る数万円がなくては家計を維持できない状況であったとしたら。高圧的なオヤジの言いように「わかりました」と肯いて、自分と子供達にムリを強いる事になったに違いない。「そういった状況かもしれない」ということを想定してああいう電話をかけてきているのだとすれば、と思うと・・・やりきれない。それになにより、先方が無駄な手間をかけなくともいいようにと出した条件付の履歴書にわざわざ時間をかける某金融機関管理職のあのオヤジどもは、こんな馬鹿げた茶番をこなすことで高額な役員給与を手にしている、というのがも〜っとやりきれない。『最近の主婦は仕事に対して甘い考えを持ちすぎているから、いっちょ現実の厳しさを教えてやろうじゃないか』といった主旨のお遊びに、私はつき合わされただけだったんでしょうか。

  銀行員として働いていた頃。私は、数字のパズルゲームのような業務が結構好きでした。(妥協だらけの就職で、自分でもこれは意外だった)先輩女子行員の加算機を叩く驚異的な速さと、セクハラなオヤジ客を窓口で軽くいなす技にしびれ、自分もこうありたいとがんばったものです。・・・が、しかし。銀行内部のオヤジたちの横行ぶりは、それはもう酷いものでした。もちろんこれは、私個人の狭い世界の話であって、全ての金融機関がそうだとは言えませんが、今回の経験で、「あんましどこも変わんないのかな」と。切れた受話器を握り締め、思わず遠い目になってしまいました。
せめて公金投入されたかの大手金融機関にはこの手のバカオヤジ含有率が低くありますように、と祈るばかりです。

 12回で終了予定のこのコラムの最後に「パート、始めました。細々とがんばります」と書けるかもしれない、と思ったんだけど。再就職、したかったなぁ。
もうしばらくは、専業主婦やってくことになりそうです。

INDEX
第12回 [2003/jun/18]
『主婦』って、なに?
第11回 [2003/jun/11]
ボツになった再就職
第10回 [2003/jun/04]
”女の子ジェンダー”のジレンマ
第09回 [2003/may/28]
予定外妊娠・僻地事情
第08回 [2003/may/21]
予定外妊娠
第07回 [2003/may/14]
ミニオヤジ
第06回 [2003/may/07]
パンツ、洗ってる?
第05回 [2003/apr/30]
連休の憂鬱
第04回 [2003/apr/23]
私の「働けイデオロギー」
第03回 [2003/apr/16]
嫌いと言われても
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