ビジネスを始めるにあたって、まずは広告づくり。アメリカの大都市には、自営でセックスワークする人向けのインターネットのサイトがいくつかあるので、そこに広告を出すことにした。広告料は、掲載する写真の数や、テキストの長さ、動画を使うか、自分のサイトにリンクをつけるかなどで料金が違う。まずは、写真2枚(大小一つずつ)とテキストというスタンダードで契約することにした。
写真は、友人の写真家に頼んだ。撮影には、黒のセクシー下着上下、黒のカーディガン、黒のヒールに、アクセサリーをいくつか纏いエレガントに迫ることにした。この友人は、レトロ調の家に住んでいたので、暖炉の前や、シックな壁紙の前とか、真っ白なベッドの上とか、アンティーク調のソファーの上で写真をとった。でも、モデルになるのは初めてだったから、どうやってポーズをとったらいいのかもわからず、全く要を得なかった。
彼は、よく「背筋を伸ばして、お腹をひっこめて、それで、笑って!」と言ったけど、背筋を伸ばしてお腹をひっこめること自体が難しく、それに必死になっていたら、とても笑顔どころではなかった。いろいろポーズをとったけど、使えないものがほとんど。小道具も使ったりしたけど、うまく機能しなかった。化粧の仕方も、撮影向けではなかったのに後で気づいた。
それでも、いい写真はいくつかできた。一番気に入ったのは、アンティーク調の茶色のグランドピアノの前に立って縦長に写したもの。鍵盤のふたをとじ、両手を広げてピアノの上にのせる。右側の髪が前に少したれて、片目を半分ほどかくす。上の方からとられたので、上目使いでちょっとかわいい。首には、真珠のネックレス(偽物だけど)、ボタンを一つしかしめていないカーディガンからは、黒のレースのブラとみぞおちあたりの肌が顔を出す。
でも、一番自分で気に入っているのは、まっすぐきれいに写った足。なんて言ったらいいのかな? う〜んと、そうだな。ちょうど、三角に切ったこんにゃくを串刺しにしたおでんがいいかな?底辺から頂点に向けてこんにゃくにくしをさす。そうすると、実際にこんにゃくから出ているくしの長さよりも、そのくしの部分は長く見える。どうわかる? グランドピアノがこんにゃくで、私の足がくし。私の足が長く見えてる感じ、わかるでしょう。肌と下着類とピアノの色と感じもうまくいった。これ以降、写真撮影何度もやったけど、これは、ベスト3のうちの一つ。最初に撮った分、思い入れが強いから、一番のお気に入りと言っても過言じゃないかな。これを大きな写真として、広告の左側にはることにした。
右側の小さな写真。これには、ベッドの上に半身になって写っている写真を選んだ。足はベッドから少し出ていて、左手が倒れそうな体を支えている。ポーズはなかなか優美なんだけど、横目使いの目がちょっと媚びた感じで、品がよろしくない。でも、小さい写真で、そんなとこまで見えないし、まあいいかって、これにした。
それから、テキスト、つまり、宣伝文句。これには、苦労したよね。でも、結局は、「女よりも、男の好きなことを知っている女」みたいな感じにしたと思う。どういうサービスをするかとか、どんな キャラなのかといったことは、あまりわからない曖昧なものだったと思う。アジア人とはいったけど、日本人とは言わなかった。顔は出したけど、名前やそれ以外の個人情報は、もちろん秘密。何人かの友達に見てもらったりして、一生懸命考えた。今なら絶対に書かないような、焦点をしぼれてないテキストだったけどね。
で、これらをもって、広告屋さんに行き、契約。数日後に、本人チェックがあって、それでよければ、アップされるという。実際、3日後ぐらいに、本人確認をしてくれという連絡があった。バックの色がうすく気に入らなかったので、黒かなにか濃いめにするように頼んだ。
そうしたら、その翌日、私が学校にいた時、午後3時頃だったかな、いきなり、知らぬ人から電話がかかる。「今晩会える?」「えっ?」まだ自分の広告がアップされているとは思わなかったので、びっくり。何と応答していいのかわからなかった。おまけに、中国語訛りのひどい英語で、いまいち言っていることがわからない上、電波の状況もよくない。そうこうしているうちに、向こうがまた電話すると言って切った。
本当にもう一度電話をしてくるのかと不安に思っていると、広告会社から、「今、アップしました。」という連絡が入る。「おいおい、それならそうと早く電話してくれ〜。こっちにも、心の準備ってものがあるんじゃ〜」と思ったが、そんなこと言っていても仕方ない。
しばらくすると、果たしてさっきの男から電話がかかってきた。今度は電波の具合が少しよく、Leeという名の寿司職人だと言うことが聞き取れた。今晩、仕事が終わった頃に来てほしいと言う。いきなり、午後11時半という深夜の仕事だった。しかも、相手の住まいは、サンフランシスコの郊外。湾の反対側の山の中にあるコンコルドという街。「いきなり、遅い時間。しかも、そんな遠くに。どうするAiちゃん?」でも、これは最初の客。とにかく、ものにしたい一心だったので、迷いはなかった。とにかく、交渉して約束をとりつけろ!(つづく)