No. 4 I'm ready for you! (こっちは準備万端なのに・・・)

 当時、私は、事故った後で、車を持っていなかった。使えるのは、公共交通手段とタクシーという、とても情けない状態。今思うと、こんなんでよくも出張セックスサービスなどやり始めたと、我ながらあきれてしまう。が、始めてしまったのだから仕方ない。車を持っていないということは、夜遅くコンコルドまで行ったら、朝まで帰れない。つまり、泊まりでいくしかない。「いきなり、泊まりか?でも、泊まりだと料金を上げないと・・・」英語が堪能ではない中国語訛りのLeeという客相手に、向こうが何を話しているのかもよくわからないまま交渉を続ける。最初の客だから逃したくないという一心だった。

 ちゃんと通じているのだろうか? なんだか訳のわからない会話が続く。何を言っているんだろう? 何か持ってきてほしいと言っているようだ。でも何だかわからない。しばらく話すと、Leeが、私にバイブレーターを持ってくるように言っているのがわかった。それならそうと早く言ってくれよって思ったけど、口にうまく出せずにいたようだった。どうやらセックスワーカーを雇うのは初めてのようだ。それなら、ちょうどいい、初めてどうしだ。私がバイブを持っていくというと、Leeは泊まりの料金で納得した。

 夕方に家に帰宅。夕飯を食べてから、ふと携帯をみると、何十件もの電話が入っている。すっ、すごい! いきなり、こんなに大勢の客が。これは、幸先いいぞ〜! 片っ端から電話をかけまくる。が、話してみると、実際に予約ができる客は、それほどいない。私が出張サービスのみで、場所を提供していないことがわかると、すぐに電話を切る客。$100以下で私とセックスをしようという、ずうずうしい輩。住んでるところが遠すぎたり、時間が合わなかったり・・・。でも、数名の予約はとりつけた。ラッキー!この時ばかりは、セックスワークなんて意外と楽だと思った。 

 そうこうしているうちに、出かける時間だ。とにかく、きれいにして出かけなくては。高価な服は持っていない。でも、品のよさで勝負! とばかり、下着からすべてばっちり決めた。化粧も怠りなし。コンドームも持った。これでカンペキ?ううん、ヘア・スタイルが少し気になる。やっぱ、化粧もイマイチ・・・。あれやこれやと直しているうちに、ああ大変! 10時を過ぎてしまった。早くでかけなくては!走ってバス停に向かうも、バスはなかなか来そうにない。仕方なく、タクシーを拾うことにした。タクシーで地下鉄の駅まで約15分。急いでホームへ駆け降りる。10時半。電車の本数はめっきり減っている。なかなかこない。「次にくる電車がコンコルド経由でありますように・・・」やった、コンコルド経由だ。現在、10時40分。ここから、コンコルドまで約45分だ。なんとか間に合う。

 地下鉄に乗り込み、席につくとホッとした。が、ホッとしてなんていられない。初仕事である。会ったら最初に何を話そう?ちゃんとセーファーセックス守ってくれるかなあ?守ってくれなかったらどうしよう? どんどん不安になってくる。でも、ここは腹をくくらなくては。よしっ。地下鉄はサンフランシスコ湾の下の長いトンネルを抜け、イーストベイ(東湾)に出た。イーストベイでは、電車は主に地上を走る。湾に広がる夜景が見える。ああ、初仕事だなあ。仕事始めるまで、いろいろ迷ったよなあ。いろんな人に相談して、ようやく決心して・・・。

 と感慨にふけっていると、携帯電話がなる。Leeからだ。"Hi! What's going on?"(もしもし、どうしたの)とたずねると、なんと「お得意様が来ているから、店を早く閉めれない。今日は無理だ。また電話する。じゃあ。」「ええっ?何、それ!そんなのあり?!」あっけにとられた。時刻は午後11時をまわったところ。腹が立つというよりも、気が抜けた。が、このまま電車に乗っていても仕方がない。家に帰るしかない。早くしないと、サンフランシスコに戻る電車がなくなってしまう。なんとか、帰りの電車には乗れた。が、バスはもうない。タクシーしかない。だんだん腹が立ってきた。こっちは、さんざんおめかしして、タクシーまで使って、イーストベイまで出かけていったのに、「今日は無理。じゃあ。」何、それ。信じられない。いきなり、赤字だ。

 このように約束をしても相手が現れないことを、英語で stood-up と言う。「待ちぼうけ」という意味だ。Lee の場合は、連絡してきたから、厳密にはstood-upとは違うのかもしれないが、そういう細かいことは気にしないことにする。初仕事で、初stood-up。これは、象徴的な出来事だった。というのは、この商売、最初の数カ月は、stood-upとの戦いとなったからである。

 失意のうちに帰宅するも、望みはあさっての予約があることだった。最初はダメでも、次回は大丈夫だろう。次回の相手Jason は、とてもソフトな語り口の紳士だった。低めのセクシーな声で「君を喜ばせてあげるから・・・」なんて言う。ああ、しびれる〜。少し人格障害気味のLeeとは大違い。早く、会いたい。早く、会って喜ばせてほしい! お金をもらって、快楽を得るなんて、なんてすばらしい仕事なんだろう、そう真剣に思った。果たしてJason に会うことはできた。が、大変な失態を演じることになる。


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[2006/02/28]
No. 47 What is Sex Work? (セックスワークって何?)
[2006/02/20]
No. 46 The Last Client(最後の客)
[2006/02/13]
No. 45 Is Sex Just Sex?(セックスって、単なるセックス?)
[2006/02/06]
No. 44 Is Sex Work a Crime? (セックスワークは罪?)
[2006/01/30]
No. 43 The Web Ad(出会い系サイト)
[2006/01/24]
No. 42 How to Go Along with the Clients (客との打ち解け方)
[2006/01/16]
No. 41 Experiencing Sex Workshops (セックス・ワークショップの経験)
[2005/12/27]
No. 40 Tyson, Again (Tyson再び)
[2005/12/20]
No. 39 Two Japanese Guys, Part 2(二人の日本人 その2)
[2005/12/12]
No. 38 Two Japanese Guys, Part 1(二人の日本人 その1)
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