No.6 Be professional! (プロの心得)

私は部屋の掃除をしてお金を稼いだことがある。アメリカでは、日本とはちがい、金持ちや上流中産階級の共働き家庭が、掃除夫やベビシッターを雇うのは、ごく日常的なことだった。とはいえ、働き先を見つけるのは、そう簡単ではない。仕事がなかなか見つからず困っていた時、「それなら家へ来て。すっごく汚いから」と、わざわざ声をかけてくれたのは、私の敬愛する大先輩、そして、LPCのフェミドルでおなじみのアニー・スプリンクルだった。

 その頃、アニーは、サンフランシスコからゴールデンゲートブリッジを渡った北岸にあるサンラファエロで、友人たちと共同生活をしていた。実は、この少し前まで、アニーは、サンフランシスコ・エリアでもっとも風光明媚なサウサリトに家を構えていたのだが、不幸にも火事に見舞われてしまい、サンラファエロの友人宅に身を寄せていたのだった。

 アニーは、決して私にお金を恵むというようなことはしなかった。が、私が少しでも多くのお金を受け取れるよう、仕事をたくさんわりふり、できるだけ長い時間働けるようにしてくれた。アニーの口ぶりはあくまで謙虚で、偉ぶったところがまったくない。私は、気持ちよく働かせてもらった上、昼食と夕食までごちそうになって帰宅した。

 私の働きぶりを気に入ってくれたのか、アニーは親友のジョー・クレーマーに私を雇うように薦めてくれた。私がジョーの家へ出かけたのは、Jasonと会った二日後だった。「最近、どうしているの?」というジョーの問いに、私は、セックスワークを始めたこと、なかなかうまくいかないこと、そして、Jason のペニスが入らなかったことを話した。ジョーは、ゲイのセックスワーカーとして働いた経験があるだけでなく、アニーと同様、ワーカーをサポートする活動もしていたので、こういう話はしやすかった。

 私の話を聞いたジョーは、「プロだったら、“入らない”では許されないよ」とやさしく諭しながら、私に客と会う前にどんな準備をしているか尋ねた。私は、ぬるめのお湯で浣腸をして清潔にしていること、それから、挿入の際には、ローションを使っていることを話した。すると、「それじゃあ、だめだよ。ちゃんと客と会う前に、肛門の筋肉を弛緩させておかなくちゃ。ほら、いったんバイブを入れるとかして。プロだったら、そういう準備をきちんとしないとね。」とジョーは言った。

 目から鱗とはこのことである。客に会う前に肛門の筋肉を弛緩させて挿入の準備をする。考えてみれば、当たり前のことだったけど、それまでは、全く思いもよらなかった。実際、これをするかしないかは大きかった。体にかかる負担度が全然違う。それに、自分は用意ができていると自信をもつことで、挿入時の緊張もやわらいだ。緊張がなくなれば、それだけでも挿入は楽になる。まさに一石二鳥だった。

 これはいいことを聞いたと少し気を取り直し、残りの部屋の掃除を終えようとしていると、携帯に電話が入る。「これから会えないか?」三度目の正直である。今度こそ、ちゃんとお金を手にして帰ってこなくては!


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[2006/02/28]
No. 47 What is Sex Work? (セックスワークって何?)
[2006/02/20]
No. 46 The Last Client(最後の客)
[2006/02/13]
No. 45 Is Sex Just Sex?(セックスって、単なるセックス?)
[2006/02/06]
No. 44 Is Sex Work a Crime? (セックスワークは罪?)
[2006/01/30]
No. 43 The Web Ad(出会い系サイト)
[2006/01/24]
No. 42 How to Go Along with the Clients (客との打ち解け方)
[2006/01/16]
No. 41 Experiencing Sex Workshops (セックス・ワークショップの経験)
[2005/12/27]
No. 40 Tyson, Again (Tyson再び)
[2005/12/20]
No. 39 Two Japanese Guys, Part 2(二人の日本人 その2)
[2005/12/12]
No. 38 Two Japanese Guys, Part 1(二人の日本人 その1)
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