No. 8 Got on Track. (ようやく軌道に)

 最初の3回で、たったの40ドル。先行きが思いやられるというのはこのことであった。が、運のいい日というのもある。車の中で苦渋を味わってから三日後、大学でアルバイトをしていると電話が鳴った。「今日会える? どっかいい場所があるといいんだけどなあ。」

 こういうこともあるだろうと、ダウンタウンの一流ホテル数カ所を下見してあった。自分で作ったリストを見ながら順番に紹介し始めると、「ああ、でも仕事の合間だから・・・。もっとリーズナブルなところはないの?」と言う。「ええと、確かマリーナの方には、安めのモーテルがたくさんあったと思いますが・・・」「そっちの方がいいな。君をピックアップするから場所を言ってくれ。」「は、はい。」

 ということで、アルバイトを早めに切り上げ、トイレで急いで化粧、着替えをする。肛門を清潔にするため、いつものようにぬるま湯で浣腸。シャワーがないので、赤ちゃん用のウエット・ティッシュで、穴のまわりをふく。ワーカーの先輩から伝授されたありがたい教えだ。そして、ジョーのアドバイスに従い「筋肉の弛緩」をバイブで行う。よしっ、準備万端!

 約束の場所へと向かう。学校の前で会えると一番よいのだが、それでは、Aiの身元がばれてしまう。少し離れた大きなストリートで待ち合わせることにした。車の往来は激しい。こんなんで、ちゃんと私を見つけることができるのだろうかと思っていると、予感は的中。約束の時間を過ぎた頃に、携帯がなる。「どうも通り越したらしい。一方通行だから、もう一度やり直す。」そんなやりとりを数回繰り返すと、ようやくのことで、黒いBMWが目の前に止まる。

 ドアがあく。「Aiちゃん?」車に乗り込む。相手は、Johnという名の寡黙な男。どことなく、イタリア・マフィア風の顔立ちである。妙に清潔そうなのも気になる。怒らすと何されるかわからないと、勝手に思いこんで不安になる。マリーナ付近までくると「どこがいいの?」と、またぶっきらぼうに言う。しかし、口調のわりには、どうも優柔不断だ。もしかしたら、ただ単にシャイなだけかも。こういうの初めてで緊張しているのかもしれない。なんだ、マフィアなんじゃないんだ。そう思うと急に気が楽になった。(もちろん、本当のところは謎のままである。)

 たまたま入ったイン(宿屋)だったが、明るく感じのいい所だった。部屋の内装も、海岸のペンション風でおしゃれだった。が、Johnは時間がないのか、緊張しているのか、すぐに部屋のカーテンを閉めるも、なんだか落ち着かない様子。何から手をつけていいかわからないといった感じだった。会話もあまりなく、スキンシップもあまりないまま、挿入ということになった。幸い、直前の筋肉弛緩がきいたのか、挿入は比較的スムーズに行われた。

 しかし、である。なかなか射精しない。Johnの顔は、ひきつる一方である。そりゃあ、あんなに緊張していたら、出るものもすぐに出ないと、今ならわかるが、当時の私にそんな余裕はなかった。とにかく必死に ”Come on! Come on!” と相手をあおるのが精一杯だった。再び、苦しい時の神頼みである。「神様、早く行かせてあげてー!」

 祈りが通じたのか、しばらくすると無事射精。Johnの顔をみると、別人のように緊張がとれてニコニコしている。少年のようでかわいい、と思った。「シャワー浴びるから」相変わらずそっけないが、相手の満足げな顔を見るのは悪くない。

 インを出ると、雨が降り始めている。急いで車に乗り込む。John は少し口数も増えた。「君の家、すぐ近く?なら、送ってくよ」「はい、お願いします」いい感じである。雨も降っているから、アパートの前まで送ってもらいたかった。が、私もプロのはしくれ。アパートから離れたところで、「このすぐ近くだから」といって降ろしてもらう。「また、電話してください。」「ああ」と言い交わして別れる。

 とはいえ、何も急な坂道の下で降ろしてもらうことはなかった。坂を上りきったところでも十分アパートから離れていた。が、それは後の祭り。雨の中、急勾配の坂道を15分かけあがる。家に着く頃には、雨だか、汗だかでべしょべしょだった。

 でも、うれしかった。やったー! ついにやったー!! 予定通り仕事をこなし、45分で150ドル!なんと気持ちのいいことだろう。シャワーから出た後も、余韻にひたっていると、再び携帯がなる。「今からどう?」聞けば、相手の家はすぐ近く。よし、運を逃がさないうちに、もう一件稼いでくるか、と気分よく支度をはじめた。



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[2006/02/28]
No. 47 What is Sex Work? (セックスワークって何?)
[2006/02/20]
No. 46 The Last Client(最後の客)
[2006/02/13]
No. 45 Is Sex Just Sex?(セックスって、単なるセックス?)
[2006/02/06]
No. 44 Is Sex Work a Crime? (セックスワークは罪?)
[2006/01/30]
No. 43 The Web Ad(出会い系サイト)
[2006/01/24]
No. 42 How to Go Along with the Clients (客との打ち解け方)
[2006/01/16]
No. 41 Experiencing Sex Workshops (セックス・ワークショップの経験)
[2005/12/27]
No. 40 Tyson, Again (Tyson再び)
[2005/12/20]
No. 39 Two Japanese Guys, Part 2(二人の日本人 その2)
[2005/12/12]
No. 38 Two Japanese Guys, Part 1(二人の日本人 その1)
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