No. 11 Is He Good or Bad? (彼はいい者?それとも、悪者?)

 今度の客、Tyson も訛りがひどい。携帯電話では、何を言っているのか聞き取りにくい。いったい何人なのだろうと思いながら、出かけることにする。待ち合わせ場所は、CalTrain のサンホゼ駅。バスでサンフランシスコ駅まで30分、それから電車で1時間40分、ずいぶん遠くである。(とはいえ、自動車があれば、高速道路を飛ばして40分の距離である。ああ〜ん、車が欲しい!)

 Tyson はとても小柄で、しらがまじりの40代後半。足を悪くしたのか、少しびっこをひいている。車は、年代ものの大きなキャデラック。何十年も乗り回した感じのボロ車だ。大丈夫かな? と不安になるも、聞けば、中古車販売会社の社長だとか。ああ、だからこんな車乗ってるんだと、妙に納得する。自分はサンホゼからさらに南のギルロイに住んでいるのだけど、Aiに会いたいために、車を40分飛ばしてサンホゼまで来たんだと、何ともありがたいことを言ってくれる。

 聞けば、もともとJordan(ヨルダン)の出身だという。が、英語だと、Jordan が「ジョーダン」発音されるので、どこのことなのかさっぱりわからなかった。「えっ、ジョーダン? ええと、それは、ええと・・・、どこだっけ?」「知らないのか? アラブの国だよ・・・」とか言われるが、何度「ジョーダン」と聞いても思い浮かぶのはボクシングばかりだった(笑)。結局、会っている間じゅう、「ジョーダン」がヨルダンとはわからなかった。

 しばらく行くと、Tyson は「シャンペンでも買おう」と、道ばたの酒屋に車を寄せる。酒屋といっても、田舎の街道筋にありがちな何でも屋である。タバコから、お菓子から、牛乳まで何でも一通り置いている。Tyson は、シャンペンとビール、つまみなどを見繕っていた。レジでかごの中を見ると、コンドームまで入っている。わざわざ自分で用意するとはなかなかの心がけと、少し安心した。

 シャンペンまではゴージャスだったが、連れていかれたのは、安いモーテルの一室。ちょっと肩すかしを食った感じである。が、乗ってる車を思えば、お似合いのところかもしれない。部屋へ入ると、すぐにテレビをつける。そして、カーテンを閉めると、早くくつろげと言う。要するに、早く脱げ、ということである。全く色気がない。自分は服を脱ぐと、とっとシャワーを浴びにいった。

 はだかでシャンペンを交わし、くつろいだ話を始めると思いきや、Tyson はボーっとテレビを見ている。う〜ん、ロマンティックじゃない!仕方ないから、こっちも昼下がりのつまらないのテレビ番組を見る。しばらくすると、「こっちへ来い」と私をひきよせる。ゆっくり肌をなでながら、「なんてきれいなんだ。俺と毎日会ってくれ」などと言い出す。こっちも、うれしくなって「ああ、どうもありがとうございます」と素直に答えていると、「俺は2つ家持ってるんだ。1つは誰も住んでないから、そこに住んだらどうだ」などと随分勝手なことを言い出す始末。ああ、こういうことすぐに言うのも、もしかしたら文化の違いかなぁと、後になって思った。アラブ圏では、こうやって男は欲望を満たすのか?

 Tyson は、私のペニスをしゃぶるのが好きだった。ちなみに、Aiの客の半分は、ペニスをしゃぶるのを楽しんでいたようだ。自分ではペニスを大きなクリトリスだと思っていたこともあって、しゃぶられるのが大好きだった。客によって、当然、上手い下手がある。後から思うに、Tyson は決してうまくなかったが、最初にしゃぶってくれた客だったので、とにかくうれしかった。

 2時間という約束だったが、Aiが気にいったのか「もっといよう!」と言い出す。追加料金が必要だと説明するが、それも払うからと調子がいい。たくさんもらえるなら、こちらとしても都合がよい。それなら、もっとサービスをと、マッサージをしたり、2回めのアナルをさせてあげたりした。すればするほど、Tyson はご満悦のようである。客が喜ぶのは、こちらとしてもうれしい。

 結局、3時間半近く時間をともにすることになる。350ドルを受けとって気分よく帰ろうとすると、Tyson が差し出すのは、たったの240ドル。それでは足りないと言うと、さっきホテル代払って、シャンペン買ったりしたから、現金はこれだけしかないと言う。確かにホテルと買い物代に、100ドルぐらいはかかっただろう。でも、それとこれとは違う。これでは困ると、私も食い下がるが、アメリカで中古車販売員といえば、詐欺まがいの口八丁で有名な人たちだ。そこの社長にAiがかなうはずはない。「今度会う時にまとめて払うから」などと、結局、上手く言いくるめられる。

 最初から最後まで、Tyson はいい人なのか、悪い人なのか、よくわからないままだった。もしかしたら、文化によるコミュニケーションの違いが原因なのかもしれない。Tyson がAiを気に入ったのは事実だったらしく、その後も何度か会うことになるが、この「Tyson はいい者か悪者か問題」は会う度についてまわった。そして、約一年後、それがどっちかはっきり判明することになる。


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[2006/02/28]
No. 47 What is Sex Work? (セックスワークって何?)
[2006/02/20]
No. 46 The Last Client(最後の客)
[2006/02/13]
No. 45 Is Sex Just Sex?(セックスって、単なるセックス?)
[2006/02/06]
No. 44 Is Sex Work a Crime? (セックスワークは罪?)
[2006/01/30]
No. 43 The Web Ad(出会い系サイト)
[2006/01/24]
No. 42 How to Go Along with the Clients (客との打ち解け方)
[2006/01/16]
No. 41 Experiencing Sex Workshops (セックス・ワークショップの経験)
[2005/12/27]
No. 40 Tyson, Again (Tyson再び)
[2005/12/20]
No. 39 Two Japanese Guys, Part 2(二人の日本人 その2)
[2005/12/12]
No. 38 Two Japanese Guys, Part 1(二人の日本人 その1)
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