No. 14 Male Chauvinist Pigs, Everywhere.(勝手な男ばかり)

 しつこく言いよるタクシーの運転手からのがれ、ようやくの思いで電車に乗りこむ。ホッとすると、すぐに眠りに入った。一時間近く経った頃だろうか、不意に、携帯電話が鳴る。仕事の予約かもしれない。はっとして電話に出る。果たして、次の客である。しかし、今すぐ会いたいと言う。「今日は疲れているから、今度にして。もう家でくつろいでいるところだから」と言うが、何がなんでも今会うときかない。困ったなあと思っていると、不意に車内アナウンスが流れ、次の停車駅バーリンゲイムが告げられる。やばい。相手に、自分の所在がばれてしまった。こうなったら仕方がない。相手の言う通り、次の駅で降りて、この男を待つしかない。

 腹が減っては戦はできぬと、駅前のメキシカン・ファーストフードで、ブリート(肉、豆、野菜、ご飯などを小麦粉の皮で包みこんだもの)を腹に入れた。トイレへいって、歯磨き、化粧直しと、仕事の準備に励む。待ち合わせの時間が過ぎるが、Michaelという、その相手は一向に現れない。随分、勝手な奴だ。すぐに電車を降りろ、とか言っておきながら・・・。しばらくすると、「もう少し待ってくれ」と電話が入る。仕方なく30分ぐらい待っていると、ようやくのことでMichael は現れた。暗くてよくわからなかったが、かっこいいスポーツカー・タイプの車、それに服の着こなしからして、見るからにキザなアフリカン・アメリカンだ。車に乗れというので、乗り込むと、どこへ行くともなく走り出した。

 私は当然、近所のホテルにでも向かったのだと思った。が、様子がおかしい。相手は、私の方を何度もジロジロ見る。そして、しばらくすると、「今日はやめにしとこう」と言い出す。内心「何!」と叫んだが、慌ててはいけない。「えっ、どういうこと?あなたが、どうしても今会いたいというから、途中下車までして、駅の前で2時間も待っていたんじゃない」とやんわり言い返す。が、相手は取り合わない。なんだかんだと御託を並べる。あげくのはてに、Aiはタイプではない、かわいくないなどと言い出す始末。なんてことを!ひどい。ひどすぎる。Aiの写真は何枚もウェブに出ている。それに、会いたいといったのは向こうだ。

 Michael は、まるで、男なら女に何をしてもいいとでも思っている様子。完全な “Male Chauvinist Pig” だ。直訳すると「男性優越主義のブタ」。人気ドラマ Ally McBeal(邦題『アリーMyラブ』)で使われ、はやったフレーズだ。日本風に言うなら、亭主関白のオヤジや男尊女卑の兄ちゃんといったところか。こういう輩はどこにでもいる。Aiもだんだん腹が立ってきた。先ほどのタクシーの運転手のこともあってか、もう我慢できない。とうとう激しい言い争いになってしまった。

 しかし、これ以上、言い争うのは危険だ。相手の車の中である。信号で車が止まったのを見計らって、車を飛び降りた。「Fuck You!」と吐き捨て、その場を走り去った。相手はおっかけてこない。とりあえず、ホッとした。が、それも束の間。ここからどうやって駅まで行ったらいいのかわからない。辺りは真っ暗。交通量の少ない寂しい道路である。ようやくのことで道ゆく人をつかまえ、駅への道を聞く。その若い男性は、親切心からか、自分も駅の方へ行くからいっしょに行こうと言うが、もうそんなこと信じられない。ふりきるようにして、一人で言われた方向へ急いだ。駅までは早足でも20分はかかった。しかも、駅は無人だった。電車を待つ人影すらない。時刻表を見ると、まだ40分は電車が来ない。急に心細くなってきた。

 Richと会って今日は絶好調と思いきや、タクシーの運転手、そして、Michael とつくづくついていない。身勝手な男が多すぎる。にっくきMale Chauvinist Pigs! それにしても、はあ〜、いったい何やってるんだか。暗闇の中で、どんどん気持ちは落ち込んでいった。


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No. 46 The Last Client(最後の客)
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No. 45 Is Sex Just Sex?(セックスって、単なるセックス?)
[2006/02/06]
No. 44 Is Sex Work a Crime? (セックスワークは罪?)
[2006/01/30]
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No. 42 How to Go Along with the Clients (客との打ち解け方)
[2006/01/16]
No. 41 Experiencing Sex Workshops (セックス・ワークショップの経験)
[2005/12/27]
No. 40 Tyson, Again (Tyson再び)
[2005/12/20]
No. 39 Two Japanese Guys, Part 2(二人の日本人 その2)
[2005/12/12]
No. 38 Two Japanese Guys, Part 1(二人の日本人 その1)
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