立たないのも困るが、イカないのも困る。何が困るって、終わりがないからである。つまり、勃起したペニスを挿入するにしても、フェラするにしても、射精されれば、その作業はいったん終了となる。たいていの客は、射精がすむと、そこで「欲望は満たされた」と思う。時間に余裕のない客は、とっとと着替えて出て行くし、ゆったりしたい客もアフター・プレイとなるものの、こちらが激しい動きを続ける必要はない。ところが、イカないとなると、こっちは重労働を延々と続けなければならない。
常連の一人に、Bobという初老のおやじがいたが、彼には毎回苦労させられた。いつも予約を2時間するのだが、いったんベッドへ行くと、ずっと動きのあるプレイを続けなければならない。会話をしたりして、休憩をとろうとするが、それも長くは続かない。すぐにそのおやじは動き出す。すると、こちらも作業に入らなくてはならない。しかも、Bob はかなりAiを気に入っていたので、時間ギリギリまで離そうとはしない。時間前にあがるということはあり得なかった。幸い、BobはAiが嫌だということを無理強いすることはなかったので、精神的につらい思いをしたことはなかったが、ずっと動き続けるのは体力的に苦痛だった。
この手の客はたくさんいて、いずれにも手を焼かされたが、一度だけ、忘れられない嫌な思いをしたことがある。電話を受けてたずねたのは、Joseのアパート。入るなり、その散らかり具合に圧倒される。ソファーにすわると、いきなり値切られる。Aiはそういうことは基本的に受けつけない。すでに電話で交渉済みだからである。しかし、Joseはしつこかった。が、ようやく折り合いがつき、となりのベッドのある部屋へ。すぐに裸になると、いきなりバックからペニスをつっこんできた。「おいおい、順番ってものがあるだろう!」と心の中で叫んだが、相手のペニスにローションをつけるのが精一杯だった。Joseは力づくで押し込んでくる。「痛い! もっとゆっくり」と言うが、言うことをきいてくれない。膣セックスだろうとアナルセックスだろうと、リラックスして、気持ちが高揚してこないと、うまく筋肉が弛緩しない。確かに事前準備はしてきたが、こういきなりやられると、どうにも対処のしようがない。
痛みはあったが、なんとか衝撃は最小限に食い止めることができた。と思ったのも束の間、相手は、思いっきり腰をふってくる。ああ、やめて! と思うが、向こうは荒々しいのがカッコいいとでも思っているのか、とにかくつきまくる。Aiは、とにかく早くいってくれ! と願った。しかし、こういう時に限って、なかなかいってくれない。もしかしたら、相手はいつもうまくいかないので、力でつきまくっているのかもしれない。「ダメだよ。もっとリラックスしないとイケない」と言ってみるが、全く耳を貸さない。だんだんつらくなってきた。痛い、もうやめて! と心で叫びながら、時計を見る。まだ、40分はある。ああ、なんとかして! とりあえず、体位をいろいろ変えて、相手がいきやすいよう工夫をするが、それも実らず。
あと30分というところで、Aiは、相手は絶対にイケないと確信した。別に根拠があったわけではなかったが、これまでの経験からいって、これ以上やって状況が好転するとは思えなかった。が、時間前に帰るわけにもいかない。無理だと思うと、どんどんつらくなっていった。それに相手は、Aiの言うことを全くきかない。これではレイプだ。そう思うとますますつらくなっていった。痛い、痛くて仕方ない。もう我慢の限界かも、と思いながら、時計をながめる。あと20分。あと15分。こういう時に限って、時の経つのは遅い。どうやって、残り10分を切り抜けたのか覚えていない。時間になっても、相手はすぐにひきさがらなかったが、そんなことに構ってはいられない。不機嫌な相手の視線を浴びながらも、急いで服を着ると、逃げるようにしてJoseのアパートを出た。
合意の上でセックスをしていてもレイプはあると聞いてはいたが、あれはまさにそのケースだと思った。幸い、しばらく痛みを覚えた以外、からだに支障はなかったが、精神的なダメージは大きかった。セックス以外で、つらい目にあうことは多かったが、セックスでこんなにつらい目をしたのは初めてだった。どうして、痛いからやめてと言えなかったのか? そう思うと、余計に落ち込んでいった。「もう我慢するのはやめよう」とつくづく思った。