Tomは、おそらく最も親しくなった客だろう。友達に近い関係だったと言えなくもない。時々、今頃どうしてるかなあと思う。メールでも書こうと思うこともあるが、何を書いていいかわからず億劫になって、書かずに終わっている。
Tomは、サンフランシスコの郊外、ウッドサイドという豪邸の立ち並ぶ小さな街に居を構えている。家につくと、大きな門。自動で開くこの門を抜けると、まわりに林。少し坂を上ると玄関前のロータリーにでる。そこに車をとめて、玄関に入る。玄関も二重になっている。すると、うわーっと広がるリビング。素敵な絵や家族の写真がいっぱい。左側にはグランドピアノ。右側には、なんとバーがある。小さなカウンター・バーがあって、多種のアルコールが並んでいる。パーティーの時には、この内側にバーテンダーが立ち、サーブするのだろう。正面のガラス越しには、庭が見える。が、それがどこまで続くのか限りが見えない。
寝室も、書斎も、そしてトイレも、ものすごくでかい。トイレの中にも洒落た調度品があって、いい感じである。一度、そのトイレの中で、 Tomとセックスをしたことがあったが、とても盛り上がった。
Aiのお気に入りは、屋外のジェグージー(ジェット付きお風呂)。特に、夜にいくと、満点の星空をみながら、ゆったりとお湯につかることができる。まさに至福の時である。こんなところに住めたら、どんなにいいのだろう? と思った。
Tomはコンピュータのソフトウェアを作る会社を経営している。Aiといる時は、あまり自分のことを話したがらないが、家族とはずっと離れているようだ。方々を渡り歩いているので、この邸宅で時間を過ごすことも、それほど多くはない。家をまもるのは、お手伝いさんたち。なんだかもったいない。が、帰ってきても、この大きな家に一人では、寂しさも倍増するのだろう。もっとも、Tomはいつも忙しいので、そんな感傷にひたる時間があるのかどうかはわからないが。
Tomとのセックスは、とても理想的だった。無理なことはしない。ゆっくりやる。挿入にこだわらない。Aiの体調が悪く、Tomのペニスが痛く感じることがあったが、そういう時に、Tomは無理に押し込んだりはしなかった。「いいよ、無理にやらなくても」とやさしかった。
Tomの体も好きだった。小柄だが、鍛えているらしく、筋肉がしまっている。少し日焼け気味の肌は、健康的に見える。それに、体毛が少なく、すべすべしていて気持ちいい。おなかは少し出ているが、50歳前後にしては、とても若々しい。好青年が、そのまま歳をとったという感じだ。育ちのよさが、よく表れている。
いっしょにいる時は、とてもいい感じである。まるで恋人どうしのよう。実際、一度、そうなってほしいと思ったこともあった。通常、お客のペニスには必ずコンドームをつけてしゃぶっていた。オーラルの場合のリスクは、挿入に比べれば低いが、客にコンドームをつけずにやるのは嫌だった。しかし、Tomの場合は、なくてもいいかと思った。というか、生のペニスにかぶりつきたかった。サンフランシスコ市内の高級ホテルでTomと会ったときに、コンドームをつけずに、思いっきりしゃぶりまくったことがある。
Aiとしては、お金なんかどうでもいいから、Tomと朝までいたかった。が、ちょっとした言葉の行き違いもあって、Aiは引き返すことになり、それで、かなりショックを受けた。Tomもこのことを気にしたらしく、数週間連絡がなかった。
Aiは惚れやすいので、すぐに人を好きになる。が、仕事でやっている以上、それを前面にだすわけにはいかない。それに、お客とつきあったって、うまくいくはずがない。そんなことはわかっていたが、何度となく惚れ、その度に、少しつらい思いをした。
Tomとは、その後も、数ヶ月に一度会い続けた。もっと頻繁に会いたかったが、本当に忙しいらしい。Tomは会うたびに、Aiのように メtruly interestingモな人はいない、と言ってくれた。学業や仕事のこと、プライベートな恋愛についても、いつも気にかけてくれた。が、こっちが会いたい時に会うとか、話したいときに話すということはできなかった。事あるごとに、そういう関係を持てる相手が欲しいと思った。