No. 36 The Easiest Sex (一番楽だったセックス)

 同じ料金システムでも、当然のことながら、お金をもらうためにたくさん働かなくてはならない場合と、いとも簡単に稼げる場合がある。これまで話したように、相手が自由に動けない場合と、相手がイカない場合、重労働になる。が、今回の話では、「えっ、これでいいの?」って感じでお金をいただいた。

 Billという客から電話があった。高速道路で隣町のベルモンテへ。インターを出ると、約束をしたホテルが目に入る。あっという間に、目的地着。部屋のドアをあけると、青白く痩せ身の青年が出てきた。言葉数が少ない。声を出しても、どこか遠くを向いているようである。こちらが見られている感じが全くしない。幽霊と会話をするのは、こういう感じなのかなと思った。

 社交辞令もまったくないまま、すぐにベッドに向かうことになった。Billが服を脱ぐと、女性の下着が出てきた。「あ、また女装趣味の客か」と思っていると、Billがちょっと心配そうに「(この格好)気にしないよね」と聞く。「え、もちろん」と答えるが、Billは、あまり表情を変えない。心配そうに見えたが、もしかしたら、それがBillの地なのかもしれない。すると、また表情を変えないままに、Aiもガーダーとタイハイをつけたままでいるように、と言う。

 Aiに仰向けの寝るように指示するのでそうしていると、Billが上からかぶさってきた。そして、自分のペニスをAiの横隔膜の上あたりに擦りつけてきた。そして、前後に体をふりながら、自分のペニスに圧迫を加える。Aiもからだを少し動かそうとすると、Billに静止された。「そのまま。動かないで。」Billはゆっくり、ゆっくり自分のからだを動かしながら、ペニスをAiのからだにこすりつける。Aiは何をしていいかわからず、呆然としながら、Billをみると、恍惚感にひたったような顔をしている。なんだか、とっても感じているようである。

 恍惚感に震える中性的な白い顔は、如来像を彷彿させた。その一方で、Aiは手持ち無沙汰で呆然としていた。退屈でもあった。もし誰かが脇で見ていたら、さぞ奇妙な光景に映っただろう。一人は自分の世界に没頭し、もう一人は、つまらなそうに宙を見上げている。

 ほんの数分すると、Billが射精した。まさか、そんなに早くくるとは思ってもいなかった。まったく不意をつかれた感じだった。Billの精液が、Aiの胸の部分につく。客の精液が体につくのは、とても困る。幸い、胸に傷はないのでよかったが、もし外傷があれば、HIV感染の危険もある。だから、いつもコンドームの中で射精してもらうようにしているのだが、こんなに早く射精するとは予想もしなかったし、それに、Billはそういう素振りすら見せなかった。

 射精し終わると、Billは体を起こし、「もういいよ」と言う。とりあえず、胸についた精液を拭き取り、体を起こした。次は、どうすればいいのかと、Billを見やると、Billはとっと服を着始めている。本当に、「もういい」らしい。再び、唖然としながら、Aiはバスルームへ行き、胸の部分を洗い流す。

 Billはもうセックスにはまったく興味のない様子である。Aiとしては、まったく達成感がない。ただ部屋に入って、ベッドに横たわり、数分したら、それで終わり。部屋に入ってから、まだ15分ぐらいしか経っていない。

 が、お客はもういいというし、お金はもらってるんだから、こちらも帰路につくことにした。こんなんでお金もらっていいのか?と思ったが、お客は満足しているのだったら、それでいいだろう。世の中には、いろいろなことで性的快感を得る人がいると、あらためて思った。


INDEX
[2006/02/28]
No. 47 What is Sex Work? (セックスワークって何?)
[2006/02/20]
No. 46 The Last Client(最後の客)
[2006/02/13]
No. 45 Is Sex Just Sex?(セックスって、単なるセックス?)
[2006/02/06]
No. 44 Is Sex Work a Crime? (セックスワークは罪?)
[2006/01/30]
No. 43 The Web Ad(出会い系サイト)
[2006/01/24]
No. 42 How to Go Along with the Clients (客との打ち解け方)
[2006/01/16]
No. 41 Experiencing Sex Workshops (セックス・ワークショップの経験)
[2005/12/27]
No. 40 Tyson, Again (Tyson再び)
[2005/12/20]
No. 39 Two Japanese Guys, Part 2(二人の日本人 その2)
[2005/12/12]
No. 38 Two Japanese Guys, Part 1(二人の日本人 その1)
これより前のコラムを見る
▼コラム一覧へ戻る  ▲topへ