待ち合わせは、サンマテオのマリオット・ホテル。郊外のホテルとしては、一流の場所である。今回の客、Earlは、かつてワーカーにすっぽかされた経験もあるらしく、部屋で待ち合わせるのが嫌だと言う。こっちとしては、部屋で会わないと、逆に、すっぽかされることがあるので困る。が、ホテルはAiの家からすぐだったので、ホテルのフロントで落ち合うことで妥協した。
フロントに着くと、待っていたのは長身の紳士。50代後半か。髪は短く刈っている。ブラックと言うには、肌の色が薄い。が、白人でもない。おそらく、ハーフか、クオーターなのだろう。「Aiちゃんか?」と確認すると、すぐに部屋をとり、移動。Earlは、会話は交わすが、余分なことは言わなかった。
部屋へつくと、実は、Earlは、以前にもAiに電話をしたと言う。Aiは覚えていなかったが、Earlが言うには、予定が合わず、結局、会えずじまいだったとか。Earlは、随分、楽しみにしていたらしい。うれしいことだ。会話の節々で、何度も「気持ちのいいことして、楽しい時を過ごすから」と、独特の訛りで言うのが、何とも奇妙に思えた。が、後にして思うと、それは自信のあらわれでもあった。
服を脱ぐと、すぐに四つん這いになるように言われた。前戯はなしで、いきなりアナルか。また痛みを堪えなくてはならないのか、と覚悟をしていると、「イージー、イージー、リラックス、リラックス・・・」と言うEarlの声が聞こえた。「これから気持ちのいいことして、楽しい時を過ごすから」と、例のフレーズ。ううん、大丈夫かなあと不安に思っていると、今度は、もう少し腰をあげろとか、膝の角度を広げろとか、とても細かな指示を出してくる。なんか変だなと思いながらも、言う通りにしていると、「うん、それでいい。そのままで」とEarl。
ペニスを挿入するタイミングだ。しかし、Aiのアナルに触れるEarlのペニスは随分やわらかい。Aiが思わず「もう少し硬くないと・・・」と言うと、「いいや、そんなことない。これぐらいが一番いいんだ」との返答。不思議なことを言うおやじだと思いながら、いつ痛みが襲ってくるかとびくびくしていたが、一向にその痛みがやってこない。そればかりか、しばらくすると「よし、入った」というEarlの声。「えっ?」こっちにはまったくの痛みはなかったし、そもそも何かが入ってくるという感触すら感じなかった。嘘だろう、と思いながらも、見れば確かに挿入されている。なんだこれは!マジックか?こっちは何も感じないうちに、挿入だなんて。なんてテクニシャンなんだ、このオヤジは!唖然呆然である。
しばらく挿入ごっこをするのだが、その間も、どうやって挿入させたのか気になって仕方がなかった。実際、Aiは、挿入された後、何をしたのか全く覚えていない。とにかく、どうやってあのマジックの仕掛けを聞き出したらいいかと、そればかりを考えていた。
企業秘密を聞き出すようで恐縮な気もしたが、やはり尋ねずにはいられない。服を着ながら、さりげなく、どうやって挿入したのか聞いてみた。Earlは誇らしげな顔をしつつも、やはり多くは語らなかった。「まあ、ポイントといえば、ペニスを硬くしすぎないことだな」とだけ言うと、「気持ちよかっただろう。楽しい時を過ごしただろう」と、例の循環主題を過去形で何度も繰り返す。
それにしても不思議なおやじである。どうやら、アナルにペニスをそっと、相手に衝撃を与えずに挿入することを楽しみに、セックス・ワーカーを雇っているらしい。安宿ではなく、ホテルの落ち着いた部屋で、自分が身につけた挿入のテクニックが衰えていないかを確認する、それがEarlの快楽のようだった。そのために、Earlはお金を使うことを惜しまない。世の中には、いろいろなことで性的欲求を満たす人たちがいるものである。
それにしても、あのテクニック。他の客もぜひ見習ってほしいと、つくづく思った。まあ、こんなこともあって、Aiも少し勉強をして自分のホームページ “Club Ai”に例の「アナル・セックスのやり方」を掲載したのだった(→「トランスはお好き 第10話」)。