Aiのホームページ、Club-Aiには、ポリシーとして「素直、安全、愛情」の3つが掲げられていた。
●素直 ― 私は、いつも何が欲しいか、何ができるか、何をしたくないかを、はっきり言います。かなり真っ正直で、駆け引きが嫌いです。本当です。生まれつき、そういう性格なんです。
●安全 ― 私はいろんなことにチャレンジするのが好きだけど、遊ぶ時は、安全でないとね。これは、私が、私自身のことだけでなく、真剣にお客であるあなたのことを考えているからです。いつも必ず、コンドームを使用します。これに関しては、例外なしです。
●愛情 ― 私は、愛情のある関係は、官能的な世界を堪能するためにはもっとも重要なことだと信じています。言葉によるコミュニケーションや、プレイの前後や最中での肌のふれあいを、とても大切にします。
このように、Aiはセックスを単に「性欲の解消」としてではなく、それ以上のものとして楽しみましょうと訴えていた。もちろん、すべての客がこうしたポリシーを読んでいたわけでもないし、理解してくれたわけでもないだろう。しかし、実際にAiに会ったお客の何人かは、このポリシーをとても気に入ってくれていた。それに何よりも、Ai自身、このようなポリシーを掲げてセックスワークをしたことを誇りに思っている。(これで、もっと儲かれば言うことはなかったのだけど・・・。)
こういったポリシーを掲げるようになったのは、サンフランシスコでのセックス・ワークショプに参加したことと深い関係がある。ワークショップでは、セックス・ポジティブの観点から、セックスの奥深さや多様性について学んだ。言葉や言葉以外のコミュニケーションの重要さについて考えたり、安全なセックスについて学習したり、セックスにおける神秘的な側面について話しあったりした。現役のセックス・ワーカー数人もゲストとして招かれ、さまざまな体験を話してくれた。
時々、本コラムの読者から「Aiちゃんは、よくもそんなに、いろんな人の相手やっていられるねえ。もう、なんでも来いって感じじゃない」と言われる。「何でも来い」というのはちょっと大げさな気もするが、わりと相手の嗜好に対して寛容だったのは事実だ。
これも、ワークショップで性の多様性について学んでいたことが、とても大きかった。アナル・フィスティングや、体中のピアス、脇の下フェチなど、実際の場に遭遇した時に驚かずに対応できたのは、すでにそういう人たちがいるということを知り、かつ、そういうことに偏見をもたないようにトレーニングされていたからだと思う。そうでなかったら、とても慌てていたと思う。また、障害者と性についても、このワークショップで学んでいたことは大きかった。車いすで動きが自由にならない客が二人いたが、いずれの場合も何とか対応できた。
こうしたワークショップで得られるものは大きい。それは、セックスワーカーにだけでなく、ふつうの人たちに対してもだと思う。Aiがサンフランシスコで受けたようなセックスに関するワークショプが日本でもあるといいのに、といつも思う。
でもワークショップに参加すれば、誰もが多様な性のあり方に対応できるようになる、というわけではないのは確かである。そのあたりは、もしかしたら、セックスワーカーの持つ「神秘性」についてのAiの思い込みがあったからかもしれない。セックスワーカーは、セックスという方法を通じて、どんな人とでもつながれる不思議な魔力をもった人で、自分もセックスワーカーになった時、その力を行使する事ができるという妄信があったおかげかと。こうした得体の知れない自信のせいか、人見知りするAiが、不思議と初めての人たちとも堂々と渡り合うことができたのだった。
では、実際どうやって、客と打ち解けていったのか? 次回は、これについて書いてみたい。