セックスワークをすることで、人とつながることはできた。が、つながったらつながったで、それが失われた時の落胆が大きかった。だからこそ余計に、誰か自分のパートナーになるような人を強く追い求めるようになっていた。
客とそういう関係になるのが難しいことは、頭ではわかっていた。が、何度となく、客に対して実るはずのない恋心を抱いた。自分から積極的に動いたことはなかったが、いつもそうした誘いを待ち構えていた。そして、そういう誘いがあった時は、それに飛びつくというわけではなかったが、結果的にズルズルと引き寄せられていくのだった。そして、結局、「利用された」格好になって、関係が終えられるのだった。
そういうふうだったから、出会い系サイトへはよくアクセスした。自分の広告を出したことも何度かあった。実際、何人かの人とコンタクトをとり、しばらくネットでやりとりをした後、デートしたこともあったが、うまくいった試しはなかった。
最初に広告を出したとき、返事はなんと46通もきた。その中には、ふざけたもの、セックスだけしたいと言っているものなど、さまざまだった。そこから数人の人とは、メールで何度かやりとりをしたが、結果的に、二人にしぼられた。この二人とは電話でも話したが、一人とは、あまりフィーリングが合わなかった。あまりうまく会話ができなかったと思ったら、向こうもそう思ったのか、二度と連絡はなかった。
が、もう一人、中国系アメリカ人のエリート建築士とは、話ももりあがり、デートをすることになった。デートはとても楽しかった。食事をした後、ドライブにいき、お茶もした。ドライブの途中では、彼が手がけたという橋やビルなども見せてくれた。とてもいい感じだった。ところが、相手からは数度メールがきただけだった。とても忙しい生活を送っているようだったので、本当に忙しいのだと思っていたが、今思うと、そうでなかったのかもしれない。
男性とはどうもうまくいかないと思った時、女性に対しても広告を出してみた。返されたメールは、10通に満たなかったが、それでも、あるフェミニストとメールの交換が続き、デートすることになった。かなりラディカルなフェミニストだったので、ちょっと気後れするところはあったが、Aiはそれなりに気に入って、少しつき合ってみたいと思った。しかし、相手からは「Aiちゃんは、女の子っぽすぎる」と言われ、交際を断られてしまった。そんなこと生まれながらの女性に、しかもレズビアンに言われる筋合いはないと思ったが(レズビアンは、女好きなのではないか!)、そう言ってみてもどうしようもなかった。当時、Aiはとても「女の子っぽかった」のだろう。
トランスの女性ともデートしたことがあった。この時は、意気投合して、セックスまでしたのだが、続かなかった。当時は、とにかく自分のパートナーが欲しい一心、しかも相手に寄りかかろうとばかり思っていた。自分の救世主が現れるのを待っていたといっても過言ではなかった。そんなふうでは、うまくいくはずはない。しかし、当時のAiには、そういう当たり前のことが理解できていなかった。
この後も、ネットで知り合ったある女性としばらくつき合うことになった。しかし、この女性は、ちょっと精神的に病んだところがあり、大変だった。メールがいっぱいきて、今度会おうということになったかと思うと、パッタリ音沙汰がなくなる。一ヶ月ほどすると、わびのメールがきて、交際が再会する。デートすると、とても盛り上がる。仲良くなって打ち解けることができたかと思うと、「昨日は打ち解け過ぎだった」という拒絶のメールがくる。それでも、しばらくつきあっていたが、やはり無理なものは無理であった。
絵をかくのが趣味だった彼女とは、情緒的な部分でつながりあうところがあり、うまく行くかもと思ったのだが、相手の精神的な傷が大きすぎた。過去に二度結婚していたが、ひどいDVを受けていた。今度ばかりは、なんとかいい関係を築く体験をさせてあげたいと思ったのだが、そういう「させてあげたい」というこちらの気持ちがおこがましかったようだった。実際、Aiの方にも我慢が足りなかったかもしれない。
出会い系サイトを通じての「出会い」によって、しばらくは寂しさを紛らわすことはできたが、パートナーを見つけだすには至らなかった。当時は相手を探し出すことばかりに必死だったが、今思うと、自分自身に誰かとパートナーシップを結ぶような準備ができていなかったような気がする。問題は「相手」ではなく、「自分」だったのだ。