No. 45 Is Sex Just Sex?(セックスって、単なるセックス?)

 セックスワーカーがよくされる質問に、「他人とセックスしながら、好きな人との関係を維持できるのか?」というのがある。Aiはあいにく、セックスワークをしている間、プライベートな関係を結べる人がいなかった。これはもしかしたら、セックスワークをしている間はそういう深い関係になれないということかもしれないけど、やめたからといって、誰か見つかったわけでもないので、そうともいえないと思う。

 実際、ワーカー仲間には、パートナーのいる人たちもいた。Aiと親しかったゲイの友人、Jallenはワーカーをしながら、パートナーといっしょに暮らしていた。Aiもどうやってパートナーとの関係を維持していけるのか不思議に思ったので、詳しく聞いてみたことがある。

 すると、Jallenはこう言った。「セックス以外でも、スキンシップとか、言葉とか、いっしょに生活するとか、いろいろ親密感を表す方法はあるじゃないか。別にセックスにこだわることないだろう?」確かにセックスだけが愛情表現ではない。セックスをしさえすれば、すぐその相手と愛を分ち合えるのではないことは、セックスワークを見れば明らかだ。

 とはいえ、セックスはパワフルだ。客とはいっても、リピーターなど同じ相手とセックスをしていれば、愛情はそれなりに深まるのではないか? と思われる読者もいるかもしれない。Aiの体験から言えば、それは、ワーカーの心持ち次第だと思う。Aiの場合は、この人と特別な関係になりたいと思わない限り、何度セックスしても、何か関係が深まるということはなかった。逆に、一回だけでも、この人となら特別な関係になれるかも? と思うことはあった。

 別の友人Patは、レイプされた体験を持っていたこともあってか、セックスをすることは、かえって落ち着かないと言っていた。お金をもらってならセックスをするけど、そうでなかったら、むしろしたくない。「愛情がある人とは、無理にセックスをしなくてもいいと思える関係にあるのがいい」と言っていた。なるほど、そういう考え方もあるのかとAiは思った。

 しかし、Aiはどうかというと、そのようにドライにセックスを捉えることはできなかった。例えば、前回話した出会い系サイトでの出会いが発展しそうになると、セックスワークはしたくないと思うようになった。JallenやPatのような接し方があるのは百も承知だったが、Aiはやはり好きな人とはセックスがしたい。それに、好きな人とのセックスする時間を大切にしたいと思った。それなのに仕事でもセックスをするのは、ちょっと無理かな。そんなにたくさんセックスできない、そう思った。もちろん、世の中には、こうした両立をこなすことがおそらくいるのだろうけど。

 Aiの友人の中には、夫婦でグループセックスを楽しんでいるという人たちがいた。グループセックスのイベントがあると出かけていき、新しい仲間を見つけては、いっしょに楽しむそうだ。が、話をよく聞くと、これは一般に人たちが考える「フリーセックス」とはかなり違う。誰彼となくやりまくる、というのではない。そこには、ルールがあって、それを守らなくてはならない。自分のやりたい相手からOKをもらうためには、それなりの交渉術を身につける必要もあると言う。断られた時は、落ち込むこともあるらしい。

 そこまでして、グループセックスをしたいと思うのは何か? と思った。Aiもそうしたイベントに参加する機会がなかったわけではないが、そうした人間関係のわずらわしさに関わるのが嫌だと思ったので、参加しなかった。夫婦でグループセックスを楽しむなんて、タフだなって思う。当然、夫婦間で嫉妬することもあるだろうに。

 こういう話を聞いていると、Aiは意外と保守的かもって思う。セックスは性欲を満たすものであり、コミュニケーションの手段なので、必ずしも愛情のある相手とだけするものだとは思わない。だけど、「セックスをする」ということは、それなりに大切にしたいという気もする。以前、友人で「セックスは誰とでもしたいのが普通なのに、特定の人以外とはしないという決意をするところに価値がある」と言っていた人がいた。うん、そういう考え方もありかもしれない。でも、Aiにはまだよくわからない。


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[2006/02/28]
No. 47 What is Sex Work? (セックスワークって何?)
[2006/02/20]
No. 46 The Last Client(最後の客)
[2006/02/13]
No. 45 Is Sex Just Sex?(セックスって、単なるセックス?)
[2006/02/06]
No. 44 Is Sex Work a Crime? (セックスワークは罪?)
[2006/01/30]
No. 43 The Web Ad(出会い系サイト)
[2006/01/24]
No. 42 How to Go Along with the Clients (客との打ち解け方)
[2006/01/16]
No. 41 Experiencing Sex Workshops (セックス・ワークショップの経験)
[2005/12/27]
No. 40 Tyson, Again (Tyson再び)
[2005/12/20]
No. 39 Two Japanese Guys, Part 2(二人の日本人 その2)
[2005/12/12]
No. 38 Two Japanese Guys, Part 1(二人の日本人 その1)
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