サニーベイルのホテルに着くと、待っていたのはDenisだ。これまでにも何度か会っている。森本レオのそっくりさんで、会う度にそれを伝えたくなるのだが、相手は森本レオを知る由もなくどうしようもない。今回も、見るなり、一人でムフッと笑った。
Denisはシャワーを浴びた後らしく、白いバスローブを着ていた。50代の見るからに「おやじ」だが、それとはちょっと不釣り合いな清潔感が漂っていた。Denisは「ふれ合い」をとても大切にする客で、Aiの好みだ。今日も、なかなかいい感じで進んでいる。
しばらくすると、Denisはムッと立上がり、「今日は、全身なめまわしてあげる」と言い出す。えっ?と思っていると、ベロベロをからだをなめまわし始めた。最初はちょっと気持ち悪いと思ったが、なれてくると、とても心地よい。Denisは舌に少し圧力をかけながらなめるので、マッサージをしてもらっているようでもあった。「ああ、気持ちいい〜!」って言うと、「そうだろう!ちょっと研究してきたんだ・・・」とうれしそうに答える。ふ〜む、さすが研究してくれただけのことはある。
ひとしきり、プレイが終わると、Denisが「今日はいっしょにディナーを食べよう!」と言い出した。ラッキー!といっても、ディナーはホテルの部屋でだった。人目につくところへ出て行けないのが、セックスワーカーのつらいところ。Denisも、本当は雰囲気のいいレストランにでも行きたいんだけど、と申し訳なさそう。が、ないよりはまし。部屋の中の雰囲気はイマイチだったけど、ゆっくり楽しく食事ができたのでよかった。
お酒が少し入ると、Denisはとても機嫌よさそうに、自分の仕事や家族のことを話してくれた。生活はいたって質素だが、実は、このDenis、百万長者なのである。会社の社長で、ロサンジェンルスとサンフランシスコを中心に工場をいくつか持っている。
Aiが「どうやって、そんなにお金持ちになったの?」と聞いた。すると、「一夜にして金持ちになったわけではないよ」と答えた。Denisは、小さな工場で学生アルバイトをしていた頃のことから順を追って話してくれた。実際、彼は有名大学出のエリートではない。小さい工場から、コツコツと仕事をしていった人だ。「少しずつ先につながる仕事をしてきたんだ」そして、「勝負に出るときは、勝負に思い切って出た」と言う。「必ずしも、いつも順風満帆だったわけではない・・・。今だって、決して安閑とはしていられない・・・。でも、これまで何とかやってきたし、子供たちとも楽しく過ごせていて幸せだ」と。
Aiは食い入るようにしてその話を聞いていた。Aiも、いつかお金持ちになれる日がくるのだろうか?と、ふと思った。セックスワーク続けててもお金持ちにはなれないのは確実である。Denisのようにキャリアを積んでいかなくては。そう思うと、セックスワークなんかしている場合ではない、という気がしてきた。
そもそもこの頃、セックスワークに飽きがきていた。別にセックスをするのが嫌になったのではない。しかし、Aiを騙そうとする客や、いい加減な対応をする客に嫌気がさしていた。客に馬鹿にされないためには、それなりに高圧的な態度に出なくてはならない。それにもっともっとビジネスライクに接しないと、収益もあがらない。もっと割り切って客に接しないと・・・。そういうプレッシャーに押しつぶされそうになっていた。自分にはセックスワークは合わないという思いが、ますます強くなっていった。そう思いあぐねていた時に聞いたDenisの話は、ショッキングだった。自分も先につながる仕事を始めないと大変なことになる。
Denisと別れた後、一大決心をしてセックスワークをやめた、というわけではなかった。が、だんだんセックスワークに対する興味がなくなっていったのか、客をとらなくなった。今から思いかえすと、客として会ったのは、このDenisが最後だった。(次回が最終回です。)