VOL.32「チャングムとX−MEN」

(ネタばれがあります)

ついに「チャングムの誓い」を見終えました。

長かったー! 

「チャングム」に何かを吸い取られていたような三週間でした。面白い、止まらない、早く続きを見たい、でも長い。出勤前と帰宅後の自由時間をほぼ「チャングム」にとられてしまう毎日。いつまでもそんな生活をしているわけにはいきません。そのうち倒れてしまいそうです。ハングルで見ていた私は、昼間仕事をしているときに、「イェー、クレー、アラッタ、アンコーラ、フェーイ?」と耳で覚えた単語を、呪文のようにブツブツ繰り返すような人になっていました。意味は、「はい、そうか、わかった、お座りなさい、どうして?」です。なんの脈絡もありませんが、それだけで私はいつどこにいても宮中の女官でした。

休みの日に寝ないで、残っていた18話を一気に見てその生活に終わりを告げました。ようやく憑き物がおちたような気分です。

それにしても、その耐久レースでもっとも体力を要したのは、この物語の骨とも言うべきチャングムとチェ一族との闘いに終止符が打たれたのに、まだ6話(6時間)もあると知ったときでした。見ていない人にはなんのことかわからなくて申し訳ありませんが、押し通ります。

最後の6話は、フェミドラマとしての結末、になっていたように思います。復讐するべき敵がいなくなったチャングムに待ち構えていたのは、朝鮮王朝で初めて、女性が王の主治医になる、という問題でした。そして漢医学ではタブーだった外科手術までしてしまう・・。

あんな野蛮な時代(すぐ人殺す)でも、そこまでしたいことをして生きた女性がいた、という希望を残して物語は終わりました。

主人公のチャングムは、とても賢い女性です。何でも片っ端から覚えてしまいます。しかも、いつでも自分の命と引き換えに、それを実践する勇気と度胸があります。始めのうちは周囲の人に誤解されますが、真面目で嘘のない言動を理解されると、みんなから愛されます。好きな男とかけおちもします。その後、結婚して出産して、幸せな家庭を築きます。身分の高い人から低い人たちまで必要とされる人物になり、多くの人の命を救います。

だんだん書いているうちに、姓名判断のような文章になってしまいました。

ドラマを見ている最中は、その波乱万丈に流されて、そんなチャングムを当たり前のように思っていましたが、今は、現実にはなかなかありえない人物像だわ、なんて思います。

この感じは、以前、映画「X−MEN」を見たときにもありました。

この映画は、特殊能力を持って生まれてきた人間たち(X−MEN)が、普通の人間たちに恐れられ差別され排除される状況のなか、普通の人間たちに戦争を仕掛けるか、共存を図るかで、X−MEN同士が分裂して殺し合いをしてしまう、という物語です。

あとで、この映画は、ゲイをテーマに描いていると聞きました。三部作の「ファイナルエディション」は、じっさいにゲイの監督がつくったそうです。映画の中のX−MENが、現実のヘテロ社会の中のゲイ、だったのです(女性のX−MENもいますが、セクシュアルマイノリティーというより、ゲイを象徴しているように思えました)。

なるほど、と納得しました。そういえば、X−MENとして生まれた子どもが親へカミングアウトする場面や、周囲の人間から迫害されるシーンは、そんな感じでした。

でも、X−MENの長老は目を閉じて念を送るだけで、人を殺してしまえるのです。X−MENのスーパーガールは最後には、車も建物も人も、念力で粉砕してしまいました。

暗喩を無視してあえて言います。

ゲイって、すごい能力を持っているのかもしれません!

チャングムはスーパーウーマン、ゲイは特殊能力者。

たしかに、その極端なキャラ設定がなければ、差別を訴える力を持たないかもしれない。ドラマも世界中の人たちを魅了するものにならないかもしれない。そういう物語がないよりはあってくれたほうが嬉しいし元気も出る・・。

極端なキャラ設定と、敵味方の勧善懲悪と、波乱万丈なドラマ展開を、充分に楽しんだ後に、メッセージはそんな表面にはないものだ、と割り切れない自分が残ります。


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