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2001/12/27〜2002/12/25
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| 第10回 『必要のない人』って、自分で思っちゃお仕舞よ!
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この間、北原さんから、アタシの好きなオンナのひとり、あの内館牧子先生の短編集を借りたの。超多忙にもかかわらず、アタシったら一気読み&号泣につぐ号泣。いや、別に作品のクオリティとかに感動したわけじゃないの。って、「こんなことしゃあしゃあと言っといて、どのツラさげて“好きな人”?」というツッコミは、この際ナシでお願いするわ。すごいの。内館先生、とにかく正直すぎるの。だってタイトルからして『必要のない人』よ! これはもう、「内館先生をネタに書け」っていう天からの啓示としか思えないわ!
この短編集、登場人物のオンナたちがたまらない味わいでね、キャラ立ちまくりなんてもんじゃないの。38歳で処女であることを惨めだと思っているオンナ。そのオンナの欲求不満のはけ口として、とことん蔑ろにされている状況を甘んじて受け入れながらも、自分の指でつねって作った内出血を「キスマーク」だと言い張り、38歳処女の血の気を引かせることを喜びとしているオンナ。アメフトやってたマッチョなダンナを愛人にとられて、まんじりともせず数日を過ごすオンナ。仕事に生きることを必死で自己肯定するオンナ・・・。
しかもそのオンナたちのセリフのすごいこと! 「この世で一番悲しい女は抱いてくれる男がいない女」(1)だの「すっごくつらい時、男が『おいで』って胸の中に入れてくれるとそれだけで楽になりません?」(2)だの「何でも手に入れたがる人間は下品よ」(3)だの。心理描写もリアルすぎてね。運動でできた傷だらけの筋肉の塊に窒息するほど抱きしめられる快楽が、他の女に与えられることが許せない、なんて書いているくだりは圧巻の一言。ああ、こんなぬるい誉め言葉を書き散らしてお茶を濁そうとする自分が許せない! もうハッキリ言わせていただくわ。「内館先生、取材してないでしょ。全部、自分のことでしょ」
大学卒業後、花婿探しのつもりで大企業の一般職になり、そこで13年間、勤め続け“ざるをえなかった”先生の歴史を思うたび、他人事ながら胸がふさがれるアタシ。たぶん、いや、間違いなく内館先生って、さっさと“寿退社”していった後輩の一般職に、1と2のセリフを言われ続けてきたんだと思うの。時代が時代だから、「行き遅れなんか職場に必要ないよ」なんて言葉を、この100倍はきついニュアンスでオヤジたちから言われてもいたはず。地獄よね。で、3のセリフを自分に言い聞かせ、一生できる仕事を見つけようと頑張ってきたんだわ。
雑誌で読んだんだけど、内館先生って学生時代、ラグビー部のマネージャーもやってたそうよ。その時にも、たぶん洗濯だのヤカンの水くみだのスコアボードつけといった、部の仕事を必死でやっていたにもかかわらず、仕事なんかビタ一文しない幽霊部員みたいなカワイコちゃんマネージャーが、試合のときだけは抜け目なくやって来て、チームが勝っても負けても、必ず男子部員の前(だけ)で泣いてみせ、美味しいところの全てをかっさらっていくのを何度も見送ってきたんじゃないかと思うの。そうでもされなければ、あれだけの量の仕事をこなし、成功した今でも、オンナに対するルサンチマンが汲めども尽きぬ泉のように湧き上がってくることへの理由づけが、アタシどうしてもできないのよ。
オトコたちに所有物のように扱われたり、性的で無遠慮な視線を送られることを、フェミニストなら当然イヤがるでしょう。でも、それはあくまでも、その種の経験が1回以上あるからこその感情よね。でも、その1回の経験すらない人は、それがどんな感情を呼び起こすのか、知ることさえ叶わないの。そのことがどれほどの焦燥感を生むか。人間って、それがどんなにくだらないものであっても、他の多くの人が当たり前のように手に入れているのに自分の手には入ってこないものにほど執着したがるものだから。18歳まで田舎で過ごし、カミングアウトなんかしたら村八分や制裁に近い扱いが待っていると思い、好きな同性の同級生を目で追うことすら怖がって、級友たちが得意げに語る異性との交際の話に、想像力だけを頼りに相づちを打っていたアタシは、あの当時、昔の内館牧子と同じく(勝手に断定)、生きながらに地獄にいるようだった。アタシは後に自分を解放するリブの言葉を持てたけど、持てなかったらどうなっていたか、想像するだけで身が切られるわ。
被差別者自身が誰よりも差別意識を身にまとい、自分の首を締めるやっかいさから、もっと多くの人が自由になってほしいとホントに思う。ま、その差別を社会的成功でねじ伏せた内館先生は、今はダントツに笑えるオンナになっていて、喜ばしい限りだけどね。今度、NHKの相撲中継を見たら、客席に注目して! 横綱審議委員会の面々が座る席で、横のナベツネですら少々猫背気味なのに、満面の笑みで着物着てシャンと座ってる内館先生が見られるかもしれないわよ。放ってるオーラは、売れっ子脚本家というより、ほとんど女帝のそれ。アタシなんてデブ大っ嫌いなのに、内館先生見たさにテレビをつけちゃう始末よ。先生ってホント、ネタの宝庫だわ。“好き”って言葉も使いようね。うふふ。
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