『Oops...! I Did It Again』にはならないよう、心から祈っているわ

 1月の終わりに、「恋にタフになりましょう」的なテーマで、ある女性誌のコメント取材をお受けしたアタシ。その席で、アタシは、「相手を知るのも大事だけれど、自分を知ることはそれ以上に大事よ」「ひとつの恋がダメになったからといって、必要以上に自虐的・自罰的にならないで」といったコメントをさせていただいたの。で、生意気にも「原稿チェックをさせてください」とお願いし、2月の上旬にその原稿を見せていただいたら、そこには「ブリトニー・スピアーズも恋にタフ。ダメでもめげずに進みましょ!」という感じの一文が入っていたのね。アタシ、最近のブリトニーに「うーん……」と思いこそすれ、肯定的な目を持った覚えはないのだけれど……。

「ブリトニーに関してのコメントは出していません。高山が言ったことには絶対にしないでね」とお願いをし、ご了解をいただいたから安心はしているのだけれど、そんな中、降って湧いたように、「ブリが自分の頭をバリカンで丸刈りにした」というニュースが。ブリに感じていた「うーん……」がここまで(アタシにとって)ハッキリした形で現れるとは、さすがに予想していなかったから驚いたわ。今回は、そんなブリに対する、高山の思いを少々……。アタシの「予想」というか「想像」が多分に含まれているエッセイだけれど、それはご容赦くださいね。

若いオカマたちの中に、“ブリ好き”、特に「ブリのプロモーションビデオが好き」という子はけっこう多いの。『Baby, One More Time』の、胸の下でシャツを結んで超お腹見せ&ミニスカの制服コスプレに色めきたち、『I’m a Slave 4 U』(すごいタイトルね。奥村チヨのよう……)の“着衣乱交”状態に「アガるわ!」とキャーキャー言い、『Toxic』の、ミニスカのスチュワーデス(「キャビンアテンダント」ではなく、明らかに「スチュワーデス」というニュアンス)のコスプレ&ラインストーンを散りばめたヌードカラーのボディスーツに狂喜し……。いえね、確かに恐ろしいほどスタイリッシュな映像なのよ。「日本の歌手(約2名)がこぞってパクりたがるのも無理はない」とまで思えるほどに。でもね、いくらスタイリッシュであっても、これは「セックスアピール」を売り物にしているわけ(ブリトニーがセクシー路線に変更したのは2003年から、という説もあるけど、デビュー曲の“制服コスプレも完全に“ロリータエロ”狙いだと思うわ)。

ショウビズにおいてセックスアピールを売りにするのは男女関係ないから(特にアメリカではね)、別にブリトニー&ブリトニーのスタッフだけに責任があるわけではない。まあ、ブリトニーの場合は、狙いがうまくいきすぎちゃったのよね。アメリカでは性的魅力そのものを指して「it」と言う場合もあるけれど、ブリはデビューから10年近く、ずっと「アメリカのit」「世界のit」の役をふられ続けていたわけよね。

でもね、マリリン・モンローを例に挙げるのもアタシの年齢ゆえだけど、「才能」を評価されたくて研鑽を積んでいるオンナが、ずっと「it」としか見られないジレンマを抱えながら仕事をするのって、ものすごくつらいことなんじゃないかしら。自己疎外感とか、悲しみとか、そんな役をふり続けられることに対する拒否感とか……。アタシに向かって「ゲイって、もっと美しい人でないと“リアル”じゃない」と言い放ったり、初対面なのに「意外とハジけてないんですね、口調はオネエなのに」と言ったオンナの子ちゃんもいるからね、“自己疎外感”に関してはアタシも多少は知っているつもりだから……。

そんなブリが「世界のit」の役を降りたいと思ったとき、次に選んだのが「特定の人物のit」になることだったと思う。開店休業状態の無名のDJと結婚し、子どもをもうけたけれど、それも破局し、DJからは60億円の財産分与の裁判を起こされたブリ。「私を迎えてくれたショウビスの黄金の椅子は、私をスポイルした。それから逃れたくて選んだ椅子も、私から何もかもを奪っていく」と思ったとしても、無理はないとアタシは思っているの。

ブリと同じく「セックスシンボル&マテリアルガール」で最初の黄金の椅子を勝ち取ったマドンナは、いち早くフェミニズムの空気をまとうことで、自分をスポイルしにかかる世の中に対抗した。数年前、マドンナが「Britney Spears」とプリントされたTシャツを公の場で着たり、「私も若いころ、さんざんバッシングされたから、現在、まったく同じ“セクシーすぎる”という理由で叩かれているブリトニーを応援したい」と盛んに擁護していたマドンナ。それは、目がくらむほど華やかで、しかも底なしに恐ろしい世界をフェミニズムを武器にくぐり抜いた“生きた先達”からのメッセージに他ならないとアタシはいまでも思っているわ。

「世界の所有物」から「たったひとりの所有物」へのシフトが失敗し、精神のバランスを失い、ついには「誰にも触らせたくない。もう触られるのにウンザリ」という言葉とともに、セックスアピールの象徴のひとつとして捉えられている髪の毛を自分の手ですべて刈り取ったブリトニー。そんなブリが、アタシは哀れで仕方がない。同時に、自分自身のパーソナリティやセクシュアリティを(面倒や逆風があったとしても)自分自身で操縦することがいかに重要か、アタシは再確認することになったわ。願わくば、ブリトニーだけでなく、「セクシーであること」が自分自身のプライオリティのかなり上位に位置しているオンナの子ちゃんたちが、「自分の価値は自分でコントロールする」という強い意志を持ってくれますよう。そして、その意志に裏打ちを施してくれる、強い言葉を持ってくれますことを。こういう願いが、「上から目線の哀れみ」によって発されている、非常に傲慢なものであることは承知しているのだけれどね。


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[2008/12/06]
『ALONE』を充実させるために必要なもの
[2008/11/05]
『One Year After』で得たものは痛みだけではないの
[2008/10/05]
『アグリっ娘』で「uglyっ子」。うっかり共感しちゃいそう…
[2008/09/01]
『少女ファイト』も素敵だけれど「ババアファイト」も素晴らしいわ
[2008/08/04]
『自由の代償』って、人によっては残酷なものなのかもしれないけれど
[2008/07/01]
『酒とバラの日々』の裏側にあるもの
[2008/06/06]
『冷たくしないで』が今のアタシのテーマかしら
[2008/05/01]
『はじめての出来事』を何度も繰り返すアタシも、けっこう好きよ
[2008/04/07]
『平坦な戦場でぼくらが生き延びること』って至難の業なんだけどね
[2008/03/03]
『ロ・ロ・ロ・ロシアンルーレット』をセックスで試すなんて……
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