『幸福を奇数に賭けて』アタシは動くつもり

 友人知人から、「ワーカホリック」「守銭奴」と呼ばれて久しい高山です。そうねぇ……、かれこれ10年以上は言われているかしら。まったく失礼な話ね! アタシだって数々の計画のために、やむなくそうしているのよ! “ドルチェ&ガッバーナ資金”と“美食ファウンデーション”に、いったいどれだけのお金がかかることか。もうすぐ37歳になる身だから、「さすがにアタシにパリを買ってくれる人は現われないかもしれない」という現実だって、受け入れないわけにはいかないじゃないの! って、こう書くとアタシったら掛け値なしの「ろくでなし」だわね。まあ、そんなに間違った形容でもないのだけれど。

 ごく率直に言って、アタシは、同世代の平均収入より多めの額を手にしているし、そのおかげでさまざまな快楽を手にしていることは否定できない事実だわ。先ほど書いたように、“お洋服好き”も“美味しいもの好き”も、お金によって支えられている快楽だし、それがあるから仕事にも精が出た部分も確かにあるもの。

 生きるうえでの“美学”とか“プライド”とか“思想”と同じくらいの割合で、お金はアタシを自由にしてくれる大きな柱のひとつだった。そして、それは、いくら「功罪」の「罪」の部分を声高に語ったところで現実としてこの日本に存在する「学歴社会」で、曲がりなりにも大学まで出るための学費と月々の仕送りをしてくれた父親と、死ぬまでずっと倹約の精神で貯金をしてきた母親のおかげでもあると思っているわ。で、その「感謝」を「親の望むとおりの行き方」で表現(あるいは、返済)することはできなかったので、アタシはアタシなりのやり方で、父と亡き母に愛情をもって接していこうと思っているわけね。

 ただ、アタシも昔はこんな思考をするような人間ではなかった。自分の生き方が、偶然のうえに成り立った、“恵まれた”ものである自覚がいまひとつ薄かったのよ。ベタな話、病気になったのが母親ではなく父親だったら、アタシは大学に進学できたのか。進学できたとしても、実家を離れて毎月の仕送りをもらうような場所へと行けたのか。それ以前に、自分が心身のどちらかに病気を抱えていたら……。

 もちろん、昔から、「世界における、本当の貧困と、その悲惨」を学んだことはあるし、フィリピンやタイなどに行ったときに、その現実に圧倒されもした(その他の国の現実、たとえばインドのハリジャンとかアフリカの一部の国の難民事情などのほうが悲惨だ、という声もあるでしょうが、アタシは実際に訪れたことがないので、語る言葉を現時点では持ちえません)。アタシはアタシでそれなりに戦ってきた歴史はあるけれど、「“戦う”とは、なんなのか」さえ学ぶ機会も持てずに、日々の暮らしを生きていくのに精一杯な人のほうが多い。加えて、言うまでもないことだけれど、そういう状況であればあるほど、オンナはさらにつらい立場に身を置かされることになると思うの。

 加えて言うなら、外国のことだけを見て、「日本には、そういう貧困がないのでOK」と考えるほどアタシは狭量にはなれない。アタシの大好きなオトコの子ちゃんは、高校を卒業する間際に両親とも病気になり、大学進学を諦めて、10年にわたって医療費と生活費を稼ぐためだけに身を粉にして働いている。家だって、いつ追い出されるか分からないような状況の中で、それでも彼は希望を捨てないし、何度かお目にかかったお母様も、生き抜くことを諦めていない。彼の自己犠牲の姿も、「若さ」ではなく「生」だけに目を向けているせいでシミとシワが一面に覆ったお母様のお顔も、アタシは心から「美しい」と思うし、“僭越なふりをして限りなく上から目線”なのは承知のうえで、アタシにできる限りの協力はしたいと思っているわ。

 くれぐれも勘違いしないでいただきたいのは、アタシが「美しい」と思う姿は、「貧乏」とか「病気」の中にあるのではないの。それは「美」ではなく、「理不尽」というものだから。アタシが「美しい」と思うのは、理不尽に直面していてもふたりが前を向いている、その「覚悟」の中にあるの。
だから、そんな理不尽に加速をかけるような「格差社会」とか、「子どもを産む役割から降りた(あるいは、降りざるを得なくなった)女性を悪とみなす」とか、「心身に病気を抱えた人への無理解や冷遇」といった考え方には、まったく賛成できないわ。「理不尽」そのものを憎むことはできないけれど、それに手を貸すシステムは、憎みます。ゲイという少数派に生まれたことを「理不尽」と感じることはできるけれど、憎んでいるのはゲイである自分ではなく、ホモフォビアであるように。

「誰の人生であっても、理不尽は豪雨のように降ってくる」と、アタシは思っています。だけど、せめて理不尽を推進するような世の中ではあってほしくないと、強く思っています。
アタシがなんのために今回の原稿を書いたのかは、みなさんの想像におまかせいたします。


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[2008/09/01]
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[2008/08/04]
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[2008/07/01]
『酒とバラの日々』の裏側にあるもの
[2008/06/06]
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[2008/05/01]
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[2008/04/07]
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[2008/03/03]
『ロ・ロ・ロ・ロシアンルーレット』をセックスで試すなんて……
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